色ぼけている暇なんてなかった

頭フェアリータイプ

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ほんへ

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ぼさぼさの黒髪と黒い瞳。とってつけたような礼法。つたない敬語。それでも、最大限を発揮して礼を尽くさんとする彼に恋をした。

もし一目惚れをしたときに淑女はいかに対処すべきか。
もちろん、ずかずかと歩み寄り、許可もなく相手の手を取って熱烈な愛を告げるなんてことは致しません。
もちろん、心に灯す愛はそれらの方に劣るというわけではなくて、ただ、そのように愛を示さないというだけの話でございます。

その熱い思いを胸に結婚した場合の自分と自分の家への利益があるかを考えます。
公爵家ともなると同じ年回りで釣り合うようなかたはなかなか血筋以外ではございませんのでなかなかに難しくあります。

まあ、それでも恋した相手がどこかの王子様なら簡単な話ですわ。そちらに嫁いで煮るなり焼くなりわたくしの自由にすればよろしい。それすらできない王子様には百年の恋も冷めるわ。

もし王子様でも領地持ちの貴族でも役職についているわけでも何でもない一介の騎士に恋をしてしまったらどうすればいいのか。

できる女はわずかな糸口から利益を作り出す。

まずは文通の申し込みから、もちろん彼の家族の身近な女性に。あら、ちょうど妹がいるようですね。養子みたいだけれどちょうどいいでしょう。

レイチェル・ウィリアムズ

新興のウィリアムズ男爵の姪っ子ね。行儀見習いにはちょうどいいわ。

でも、たしか恋愛小説の主人公じゃなかったっけ?

恋愛小説???

そんなわけがございませんわ。

レイチェルなんて方いままで存じ上げ、、、

するっと、まるで今日の夕飯はシチューとでもいうかのように当たり前にそこにマリアではない記憶があることに、五木真理子としての記憶にマリアは特に困惑することなく納得した。

ちなみに、トマトをふんだんに使ったシチューは寿命を延ばすと信じられており貴族の食卓にのぼらないことは珍しい。

冬でもなぞのまほーぱわーで新鮮なものを入手できる。

記憶持ちは思い出すとききぜつするのではなかったかしら?


まあ、いいでしょう。

そう、切り替えの早さを発揮しようとしたところで頭の隅にひとつ無視できない情報が引っかかる。

スタンピートって何事?!?!

スタンピートとは、魔物の集団が興奮状態で大移動する現象。王都に来るだなんて大惨事大戦まったなしの大事件だと記憶が告げる。

国土は蹂躙され男は殺され女も殺され後には何も残らない。誰がいったか歴史の修正液。文明の漂白剤。

要するにとんでもない大事件だ。それも自分に危険が及ぶ。

そんなときでも淑女は決して取り乱さない。

そういえば元凶になったという王子はちょうどわたくしと同じ年回りというか婚約者候補ね。

なじみの娼婦について調べましょう。

これは、色恋遊びにふけろうとしたことをきっかけに悪役令嬢になるはずだった公爵令嬢がスタンビートに立ち向かう物語。


ーーーーーーーー

続きは、、、ないです。

1000字を超えてたので分類を短編に変更しました。
自分が思っているより長かった。
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