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その後

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澄み渡る空の眩しさに、鬱々としないのは随分久しぶりのことだ。天気もいい、絶好の結婚式日和だ。

ミッシェルの結婚式に出席するなんてつい一年前までは思いもよらなかった。それもこれも全て今日義兄となる彼のおかげだ。

この日のために各地から集められた選りすぐりの精鋭たちが奏でる演奏とともにミッシェルは大公閣下のエスコートで入場する。これは、彼女が公爵家ではなく大公家の後見で嫁ぐことを意味した。若干悔しいが仕方がない。

誰もが彼女を見ていた。彼女はこの一年で飛躍的に美しくなったが、今日はさらに美しい。

ミッシェルと目が合い、彼女はにっこりと笑った。

私の隣には婚約者が立っている。生まれは下級貴族だが、非常に優秀で、何より人柄に優れていた。両親を隠居させたあとの公爵領をあっという間に掌握するくらいに。

上の方の人員はほとんど彼の友人が占めている。乗っ取り状態だが、私にどうにかできることでもなかったので何も言わなかった。

私が子を生みさえすればなんとかなる。そしてこの世界ではそれは簡単なことだった。

逆に言えば簡単に子供ができるということだからそこだけはしっかりと釘を刺しておいた。その愛人との仲は清いままにしろと穏やかな言い方で。それだけは譲れない。

使用人たちは私に良くしてくれている。
ああ、なんて幸せなんだろう。

誰もが見つめる先で、ミッシェルと王太子となった王子が誓いのキスを交わした瞬間、天から光が降り注いだ。

二人に光が降り注ぎ、二人の手に集まる。

光が収まったとき二人の左の薬指に指輪が嵌っていることを最前列に座っていた私は見ることが出来た。

なんということだろう。二人は神の祝福を受けたのだ。

神の威光の前に自然と一人、また一人と膝をつき右手を胸に当てていく。もちろん、私も。

神様って本当にいるんだなあとしみじみと脳天気なのはレイチェルくらいでそれ以外がどれほどそれを恐れたか彼女は知らない。

不妊にされていたことも、不妊を癒していただいたこともレイチェルは知る必要がない。

ただ婚約者のみが知り、そして悔い改めるべきことなのだから。

ミッシェルと王子の儀式が終わり、休むことなく二人は移動していく。集まった国民の祝福を受けるためだ。

夜会の前に休憩を取っているとき、壁越しにこちらにまで聞こえるほど大きな歓声が響いた。
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