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プロローグ
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「レディ・アレクシア、貴様との婚約を破棄する。」
「なぜ・・・」
少し首をかしげて、夜会で叫んだ婚約者を見つめる。いついかなる時も淑女たるもの焦りを表に出してはならない。
そんなこと幼いころから叩き込まれていることだがつい表情が強張ってしまったかもしれないわね。仕方がない事だと思うけれど。私自身突然の事で驚いているのだもの。そうよ!だって私は侯爵令嬢だけれども伯爵家の令息と結婚したいわけではないもの!!私の結婚は王家の意向によるもの、と他人事に思っているのが良くないのかもしれない。
よりによって私があまりものになったがゆえに彼はひどい思いをしているのだから。
だから、私はこう返した。
「成績をごまかして、非常に評判の悪い女性と婚約させてしまい申し訳ございませんでした。シルヴァン様」
そして、頭を下げる。すぐに、真っ青になった騎士が駆けつけてくる。
赤い布、第一騎士団の人がこんなところにいるなんて。いえ。今考えるべきはそれではないですね。
「何をなさっておられるのですか!」
怒鳴られる。そう身を固くした私は凍り付いた。
「なに自分は関係ないという顔をなさっておられるのですか、、、、」
怒鳴られたのはシルヴァン様だった。
視線をふさぐように桃色の外套、後宮騎士団の衣装だから女性のはずだ、が私の前に立つ。
大丈夫、ではなさそうですね。と筋骨隆々の彼女?は私の手を取った。あ、この人は男性の方かしら?身長が高い。それに顔つきも凛々しい。でもどこか男性らしさというものはない。そのようなことを靄のかかった頭でつらつらと考えるうちに気がつけばみしらぬ小部屋でソファの上に座らされていた。
「こちらでしばしの間休まれていてください。それと陛下へご報告してまいります。」
「陛下は外遊中ではございませんか?」
「いいえ、今は王宮におられますよ。」
そうおっしゃって騎士の方は行ってしまった。えぇと?どちら様だったのかしら、あのかたは?
ココアがおいしいですわ。
はぁ、と一口飲んでホッとした息をつく。さすが高級品といった所かしら。ミルクとお砂糖が入っているだけなのに、いつも飲むカフェオレとはまるで違う甘さと暖かさが広がるような味。あら?ここは、とあたりを見回してみれば、見覚えのある内装だ。確かここはアルジェ辺境伯家の本邸の休憩室ね、今まで何をしていたのかしら?
確か朝は、、、
ゆっくりと朝から何をしていたのかをたどり、先ほど婚約を破棄されたことを思い出す。悪役令嬢もののテンプレね。
でもあの家、王家から私との婚約を条件に相当な援助をいただいていたような。。。もしかしてざまあ?
ふう、と息を吹きかければ白い湯気が上がり、消えていく。その向こうにあるのは大きな鏡だ。そこには絹糸のような真っ白な髪を持つ美女がいる。赤色の目だけがギラリと光っていて怖い。まるで獣だ。
私こと、アレクシアは公爵家の生まれであるものの正式な一員ではなくない。私の母は伯爵家の出身でわたくしと同じく素晴らしい容姿をしておりそれで公爵を魅了したとか。姦淫の罪で母は処刑され、公爵夫人の慈悲によって私は二人の実子として育てられた。しかし妾の子は妾の子。結構な問題児だった。それでも両親はどうにかしようと神原
(突然の神原)
(当然誤字)
・・・手を尽くすも最終的にレティシアに危害を加えて恩を仇で返し除籍された。という悪役令嬢。ちなみにヒロインレティシアは攻略対象に守られて無傷。まあそのおかげで処罰は除籍だけで済んだんだけどね。
ここまで来ても王家の血を引く私は大切にされていて、幸か不幸か王族の血を引く健康な女性が少ないために、伯爵家との縁組が王家から用意された。まあ、今しがた破棄されたけど。
飲み終わったマグをカートに乗せる。
この部屋のメイドにはもう指示を出してありますの。私がカップを置いて出て行った瞬間ドアがノックされます。はいどうぞと答えれば失礼しますといって若い執事が入ってくるでしょうね。そう思っていれば案の定若い男性の執事がやってくる。
「失礼いたしま……!?レディ!!」
なんて失礼なのでしょう。わたくしのふるまいに文句をつけるだなんて。思わずムッとするわ。無能か、礼儀知らずかのどちらかね。まぁ、わたくしの振る舞いに下々が振り回されるのは必然のことですからこの程度で文句をつけたりいたしませんわ。それにこの方もまだ入ったばかりですもの。きっとこれから伸びてくださることを信じておりますわ!わたくし。
ふふんっと笑えば、びくっとした彼が一瞬動きを止めて慌てて言い直してきた。
「失礼しました。アレクシア・ソレル・アントワーヌ様」
あれ?わたくしこんな名前でしたっけ。
考えを巡らせる。アントワーヌは王族の姓だったはずだが私は公爵令嬢でかつ妹のように準王族というわけでもない。普通に不敬罪でございます。
執事に問い返そうと立ち上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
人間、獣人族などいろいろあるが、はいろいろな側面を持っているものだ。相手によって態度が変わり、一貫性があったりなかったりする。しかし、それらは外部からの刺激によって変化しつつも連続している。
アレクシアは過酷な子供時代を経て、三つの人格が別々に連続性を持つようになってしまった。
忘れっぽい気弱でなんでも謝るアレクシア。
傲慢で勝ち気ででも慈悲深いアレクシア。
なぜか妾の子と思い込んでる転生者なアレクシア。
人生という物語は中盤へと移り行く。
「なぜ・・・」
少し首をかしげて、夜会で叫んだ婚約者を見つめる。いついかなる時も淑女たるもの焦りを表に出してはならない。
そんなこと幼いころから叩き込まれていることだがつい表情が強張ってしまったかもしれないわね。仕方がない事だと思うけれど。私自身突然の事で驚いているのだもの。そうよ!だって私は侯爵令嬢だけれども伯爵家の令息と結婚したいわけではないもの!!私の結婚は王家の意向によるもの、と他人事に思っているのが良くないのかもしれない。
よりによって私があまりものになったがゆえに彼はひどい思いをしているのだから。
だから、私はこう返した。
「成績をごまかして、非常に評判の悪い女性と婚約させてしまい申し訳ございませんでした。シルヴァン様」
そして、頭を下げる。すぐに、真っ青になった騎士が駆けつけてくる。
赤い布、第一騎士団の人がこんなところにいるなんて。いえ。今考えるべきはそれではないですね。
「何をなさっておられるのですか!」
怒鳴られる。そう身を固くした私は凍り付いた。
「なに自分は関係ないという顔をなさっておられるのですか、、、、」
怒鳴られたのはシルヴァン様だった。
視線をふさぐように桃色の外套、後宮騎士団の衣装だから女性のはずだ、が私の前に立つ。
大丈夫、ではなさそうですね。と筋骨隆々の彼女?は私の手を取った。あ、この人は男性の方かしら?身長が高い。それに顔つきも凛々しい。でもどこか男性らしさというものはない。そのようなことを靄のかかった頭でつらつらと考えるうちに気がつけばみしらぬ小部屋でソファの上に座らされていた。
「こちらでしばしの間休まれていてください。それと陛下へご報告してまいります。」
「陛下は外遊中ではございませんか?」
「いいえ、今は王宮におられますよ。」
そうおっしゃって騎士の方は行ってしまった。えぇと?どちら様だったのかしら、あのかたは?
ココアがおいしいですわ。
はぁ、と一口飲んでホッとした息をつく。さすが高級品といった所かしら。ミルクとお砂糖が入っているだけなのに、いつも飲むカフェオレとはまるで違う甘さと暖かさが広がるような味。あら?ここは、とあたりを見回してみれば、見覚えのある内装だ。確かここはアルジェ辺境伯家の本邸の休憩室ね、今まで何をしていたのかしら?
確か朝は、、、
ゆっくりと朝から何をしていたのかをたどり、先ほど婚約を破棄されたことを思い出す。悪役令嬢もののテンプレね。
でもあの家、王家から私との婚約を条件に相当な援助をいただいていたような。。。もしかしてざまあ?
ふう、と息を吹きかければ白い湯気が上がり、消えていく。その向こうにあるのは大きな鏡だ。そこには絹糸のような真っ白な髪を持つ美女がいる。赤色の目だけがギラリと光っていて怖い。まるで獣だ。
私こと、アレクシアは公爵家の生まれであるものの正式な一員ではなくない。私の母は伯爵家の出身でわたくしと同じく素晴らしい容姿をしておりそれで公爵を魅了したとか。姦淫の罪で母は処刑され、公爵夫人の慈悲によって私は二人の実子として育てられた。しかし妾の子は妾の子。結構な問題児だった。それでも両親はどうにかしようと神原
(突然の神原)
(当然誤字)
・・・手を尽くすも最終的にレティシアに危害を加えて恩を仇で返し除籍された。という悪役令嬢。ちなみにヒロインレティシアは攻略対象に守られて無傷。まあそのおかげで処罰は除籍だけで済んだんだけどね。
ここまで来ても王家の血を引く私は大切にされていて、幸か不幸か王族の血を引く健康な女性が少ないために、伯爵家との縁組が王家から用意された。まあ、今しがた破棄されたけど。
飲み終わったマグをカートに乗せる。
この部屋のメイドにはもう指示を出してありますの。私がカップを置いて出て行った瞬間ドアがノックされます。はいどうぞと答えれば失礼しますといって若い執事が入ってくるでしょうね。そう思っていれば案の定若い男性の執事がやってくる。
「失礼いたしま……!?レディ!!」
なんて失礼なのでしょう。わたくしのふるまいに文句をつけるだなんて。思わずムッとするわ。無能か、礼儀知らずかのどちらかね。まぁ、わたくしの振る舞いに下々が振り回されるのは必然のことですからこの程度で文句をつけたりいたしませんわ。それにこの方もまだ入ったばかりですもの。きっとこれから伸びてくださることを信じておりますわ!わたくし。
ふふんっと笑えば、びくっとした彼が一瞬動きを止めて慌てて言い直してきた。
「失礼しました。アレクシア・ソレル・アントワーヌ様」
あれ?わたくしこんな名前でしたっけ。
考えを巡らせる。アントワーヌは王族の姓だったはずだが私は公爵令嬢でかつ妹のように準王族というわけでもない。普通に不敬罪でございます。
執事に問い返そうと立ち上がった。
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人間、獣人族などいろいろあるが、はいろいろな側面を持っているものだ。相手によって態度が変わり、一貫性があったりなかったりする。しかし、それらは外部からの刺激によって変化しつつも連続している。
アレクシアは過酷な子供時代を経て、三つの人格が別々に連続性を持つようになってしまった。
忘れっぽい気弱でなんでも謝るアレクシア。
傲慢で勝ち気ででも慈悲深いアレクシア。
なぜか妾の子と思い込んでる転生者なアレクシア。
人生という物語は中盤へと移り行く。
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