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第30話 悪役令嬢、影の戦い
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私とアリシアの二人がクルーゼ王子の婚約者候補…要するに未来のこの国のお妃候補となった時から、可能性はあったもののできれば起こらないで欲しいと思っていたことがとうとう起きてしまった。
それはつまり、貴族の血を引く私、エリスレア・ヴィスコンティが王子の妃となることを望む王族貴族を中心とした者たちと、”春妖精の巫女"であるアリシアを擁立した、宗教的な意味での権力を持つ"神殿"と強い繋がりを持つ者たちによる派閥争いである。
そもそもアリシアが神殿に見出され・妃候補となったこと自体がイレギュラーな事態なのだ。(まぁ、ゲームの設定としてそれが起こらないとゲームが始まらないっていうメタな都合であるといったらそれまでなんだけど…)
順当にいけば当然のように貴族の中から有力な家の娘が順当に妃になるだろうと、誰もが思っている中で、アリシアが突然にポップしたものだから、政治的な意味でもそれ以外でも大騒ぎになった(厳密にいえばなっている)訳である。
だからこそ、表立っての諍いこそないものの、この城の中でもエリスレア派とアリシア派が水面下で火花を散らしている状態になっているのだ。
――――とはいえ、最初にも言ったようにこうなることの想像はついていたので、私としてもアリシアに危険が及ばないよう周囲の動きにも目を光らせてもいた。
貴族派の連中は、アリシアを貶めようと、あることないこと彼女の良くない噂を広めようとしたりすることもあったし、時には彼女自身の心を折ろうと口汚い言葉で彼女を罵るようなものまで現れていた。
これは城の下働きのものや侍女、出入りを許された商人などを使って(金を握らせるんだろう…)行われていることは明らかだったが、私はそうした者たちを見つけ次第、厳しく処断した。
アリシアに対する侮蔑を、自分自身を侮辱されたと同様の処罰を与えた。
王族貴族相手ならともかく、同じ庶民の出である娘に対して陰でこそこそ悪口を叩くだけで罪に問われるなど考えてもみなかったであろう者たちは、私の言葉にひどく動揺し、困惑した。
「どうしてですか、エリスレア様…!私は貴女様のためを思い、あのような下賤な生まれの女をー…」
「お黙りなさい。春妖精の巫女である彼女を…、そしてわたくしにとっても大事な友人であるアリシアを侮蔑することは―…、すなわちわたくしを…そしてわたくしたちを婚約者とする王子をも侮辱する行為だと言うことになるということがわかりませんの?」
まぁ、処罰と言っても城への出入り禁止だとか、一週間のお休みを強制的に与えるだとかその程度で(それでも本人からしたら大変なことだろうが)、ゲームのままのエリスレアであればもっと冷淡な処罰を与えたかも知れない…なんて思いつつ、それでも、私に罰を与えられるなんて夢にも思っていなかった者たちは、予想外の人間から予想外の邪魔をされたことになるのだから、手痛い思いをしたと感じることだろう。
貴族連中に金を握らされた者たちがそんな風になっているのを見れば、もし次に唆される者たちがいたとして、少しは尻込みをするはずだ。
陰口をいうだけ、噂を広げるだけの簡単な小遣い稼ぎのはずが、次期妃候補のエリスレアに目を付けられるリスクを伴うなんてことになれば、普通の神経をしていたら勘弁してほしいと思うだろう。(しかもエリスレアの後押しの為にやってるのに本人から罰を与えられるのだ…と)
「ひいっ、お許しください…!どうか、どうか…」
「非常に不愉快ですわ。もうお行きなさい」
半ば泣きべそをかきながらヒィヒィと去って行く下男とメイドを見送りつつ、少しばかりの同情を覚えてはしまう…が、ここは悪役令嬢としてもビシっと〆ておかないといけないところだ。
それで私自身の評判が悪くなろうと知ったことではない。
アリシアのためならなんでもする。そう誓ったのだから。
それはつまり、貴族の血を引く私、エリスレア・ヴィスコンティが王子の妃となることを望む王族貴族を中心とした者たちと、”春妖精の巫女"であるアリシアを擁立した、宗教的な意味での権力を持つ"神殿"と強い繋がりを持つ者たちによる派閥争いである。
そもそもアリシアが神殿に見出され・妃候補となったこと自体がイレギュラーな事態なのだ。(まぁ、ゲームの設定としてそれが起こらないとゲームが始まらないっていうメタな都合であるといったらそれまでなんだけど…)
順当にいけば当然のように貴族の中から有力な家の娘が順当に妃になるだろうと、誰もが思っている中で、アリシアが突然にポップしたものだから、政治的な意味でもそれ以外でも大騒ぎになった(厳密にいえばなっている)訳である。
だからこそ、表立っての諍いこそないものの、この城の中でもエリスレア派とアリシア派が水面下で火花を散らしている状態になっているのだ。
――――とはいえ、最初にも言ったようにこうなることの想像はついていたので、私としてもアリシアに危険が及ばないよう周囲の動きにも目を光らせてもいた。
貴族派の連中は、アリシアを貶めようと、あることないこと彼女の良くない噂を広めようとしたりすることもあったし、時には彼女自身の心を折ろうと口汚い言葉で彼女を罵るようなものまで現れていた。
これは城の下働きのものや侍女、出入りを許された商人などを使って(金を握らせるんだろう…)行われていることは明らかだったが、私はそうした者たちを見つけ次第、厳しく処断した。
アリシアに対する侮蔑を、自分自身を侮辱されたと同様の処罰を与えた。
王族貴族相手ならともかく、同じ庶民の出である娘に対して陰でこそこそ悪口を叩くだけで罪に問われるなど考えてもみなかったであろう者たちは、私の言葉にひどく動揺し、困惑した。
「どうしてですか、エリスレア様…!私は貴女様のためを思い、あのような下賤な生まれの女をー…」
「お黙りなさい。春妖精の巫女である彼女を…、そしてわたくしにとっても大事な友人であるアリシアを侮蔑することは―…、すなわちわたくしを…そしてわたくしたちを婚約者とする王子をも侮辱する行為だと言うことになるということがわかりませんの?」
まぁ、処罰と言っても城への出入り禁止だとか、一週間のお休みを強制的に与えるだとかその程度で(それでも本人からしたら大変なことだろうが)、ゲームのままのエリスレアであればもっと冷淡な処罰を与えたかも知れない…なんて思いつつ、それでも、私に罰を与えられるなんて夢にも思っていなかった者たちは、予想外の人間から予想外の邪魔をされたことになるのだから、手痛い思いをしたと感じることだろう。
貴族連中に金を握らされた者たちがそんな風になっているのを見れば、もし次に唆される者たちがいたとして、少しは尻込みをするはずだ。
陰口をいうだけ、噂を広げるだけの簡単な小遣い稼ぎのはずが、次期妃候補のエリスレアに目を付けられるリスクを伴うなんてことになれば、普通の神経をしていたら勘弁してほしいと思うだろう。(しかもエリスレアの後押しの為にやってるのに本人から罰を与えられるのだ…と)
「ひいっ、お許しください…!どうか、どうか…」
「非常に不愉快ですわ。もうお行きなさい」
半ば泣きべそをかきながらヒィヒィと去って行く下男とメイドを見送りつつ、少しばかりの同情を覚えてはしまう…が、ここは悪役令嬢としてもビシっと〆ておかないといけないところだ。
それで私自身の評判が悪くなろうと知ったことではない。
アリシアのためならなんでもする。そう誓ったのだから。
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