全年齢対象じゃ我慢出来ない!

夜摘

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第5話 波乱の遊園地デート

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 そらくんを誘惑して"その気"にさせようと奮闘していた私が、いつの間にか私の方が、私自身に自覚のない"羞恥心"や"ときめき"みたいなものに妙に振り回されてるぞ…?と気が付いてから数日が経っていた。
 部室での"照れてる(照れてない)事件"の後、何となく気まずくなった私は、少しの間だけ宙くんの顔を見辛くなってしまい、出来るだけ彼に会わないように過ごしていた。
 "無自覚に誘惑してくる小悪魔なセンパイ"を演じてるのに、照れていたら色々バレバレじゃん!と思ったら、さすがに私だって恥ずかしくなってしまったんだよね…。
 …なのに、なのに…。そんな風にこっちが日和ひよっている時に限って、普段はそこまで多くない宙くんからのアクションが来ちゃうんだよなぁ…!
 週末に遊びに行かないかって宙くんからの連絡があって、当然!宙くんが大好きな私は断れる訳がなく、それをOKした。

「………どうも」

「あ、うん…。お待たせ…」

「………」

「………」

「………」

「…じゃ、じゃあ行こっか…」

「……あ、うん…」

 デートの場所は遊園地。
 アトラクションには種類がいくつもあるから、どの攻略キャラでもどれか一つは好きなものがあるって意味で、安牌のデートスポットである。
 私もゲームでは大分お世話になったものだけれど、こんなに微妙に気まずい待ち合わせ会話は初めてだだった。
 別に怒ってる…という訳ではないようだけれど、宙くんも何だか妙にソワソワしてると言うか、気まずげだし、私の方も言わずもがな…。あからさまに変な態度は取らないように気をつけているけどそれでも何となくぎくしゃくしてしまう。
 宙くんは時々ちらちら私の方を見ている気配があるけど、私も顔を直視したらまた赤面しちゃうんじゃないか…って思うと直視出来ないんだよお…。

「え、えっと……何乗る?ジェットコースター?」

 気まずい雰囲気を何とかしようと、私は提案する。
 宙くん、ジェットコースターは好きなんだよね…!私は正直なところあまりジェットコースターは得意じゃないんだけど、今は会話しながら楽しむアトラクションよりも喋る隙が無い激しいものの方が有難い。
 ゲームだったら、攻略対象の好きな乗物を提案すれば好感度もアップするし、場の雰囲気も良くなる…………はずだったんだけど………。

「………いや、今日は観覧車乗ろ」

「え?」

 宙くんは静かにそう言うと、口を開けてぽかんとしている私を尻目に観覧車乗り場へと向かって歩き出してしまう。

「あ、あ、ちょ、ちょっと待って…」

 すたすたと歩いて行ってしまう宙くんを慌てて追いかける私。
 頭の中では、提案したものを蹴られて再提案なんて"ゲーム"じゃなかったよね!?なんて少し混乱していた。
 それによりも寄って観覧車だなんて…。今のこんな状態で観覧車が一周するまでの間…あの狭い空間で二人きり…で?

「………」

「………」

「………」

「………」

 二人で観覧車に乗り込んで向かい合って席に腰を下ろすと、観覧車のゴンドラは徐々に上へ上へと進んで行く。

「……センパイ、あのさ」

「う、うん!?」

 私は、さすがにまだ見つめ合う心の準備は出来ていないので外の景色を見つめるふりをする…。

「……最近さ、俺のこと避けてない?」

「え?」

 思わずびっくりして彼の顔を見てしまう。宙くんは、思ったよりもずっと真剣な表情で私の方を見ていていた。

「……この間部室で…ちょっと言い合いになってから…部室にも来てないし…」

「そ、そうだっけ……」

「…今まではやたらベタベタしてきてたのに、今日は目も合わせないし」

「うっ……」

 こうズバズバ言葉にされると自分の迂闊さと露骨さにダメージを受けてしまう。さりげなくやってたつもりが、全然さりげなく出来てなかったわけですね!!!!

「……俺、なんか余計なこと言っちゃったかもって……」

 宙くんは俯いて、少し寝癖が付いたままの髪をくしゃくしゃと搔きむしる。私はその様子を見て、思わず慌ててしまう。

「……ち、違うの。そう言うのじゃなくてっ………」

「……そう言うのじゃなくて?」

 前髪で隠されえた目が、その隙間から不安そうに私の事を見つめてくる。

「え、…えっと…それは…………」

「…………」

「…照れてるって言われて、なんか…急に恥ずかしくなっちゃった……だけで…その……」

「…………」

「…………宙くんは何にも悪くない…デス…」

「………なんだぁ……」

 私はもう恥ずかしくて恥ずかしくて仕方がなくて俯いてしまったので、宙くんの表情は見えなかったけれど、何処かほっとしたような気の抜けた声が耳に入って来て、私も何だか少し…安心した気持ちになった。

 やっぱり照れてたんじゃん…って少し意地悪な言葉に、私は思わず反論しようとしてしまったけれど、宙くんが何だか嬉しそうに笑っていたものだから、私は何も言えなくなってしまった。
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