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大学生

第13話

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 大学に通い始めて、もうすぐで三ヶ月が経とうとしている頃。
 今日は朝から天気も良く、土曜日ということもあり、俺は決して広くない部屋でゴロゴロしていた。
 一方の六花は、朝から洗濯機をガンガン回し、洗濯物を外に干している。

 「ねぇ、布団持ってきて」

 「えー。布団も干すのー?」

 「干さないとホコリやダニでうじゃうじゃになるよ?」

 「……それは嫌だけど……」

 正直なところ――めんどくさい。
 せっかくの休みだから一歩も動きたくないのだが、俺は渋々布団を取りに自分の部屋がある二階へと向かった。

◆❖◇◇❖◆

 「よっこいしょ……意外と重いな」

 俺は六花に言われた通り、布団を担ぎ上げる。
 そして、両手で抱えながら狭い部屋を出たのだが、前が見えなくて短い廊下だが不安になってきた。

 「……大丈夫かな……」

 一歩一歩ゆっくり足を動かしながら廊下を渡っていく。
 何とか洗濯機がある洗面所に辿り着きそうだと一瞬油断した時だった。

 「うわっ!」

 俺は足を滑らせ、もの凄い音を立て後頭部を強打した。

 (ゴトンッ!)
 
 「……はや……く……!」

 薄れゆく意識の中、六花が慌てた表情で俺の元へ駆け寄った。
 俺の変わり果てた様子を見た六花は、涙を流しながら必死に名前を呼ぶ。
 でも俺は答えることもできず、静かに目を閉じた。
 ……………………………………それが俺の最後の記憶となった。
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