俺の学園生活をこれ以上めちゃくちゃにしないでくれ!!

雪鵠夕璃

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一学期【中間試験】編

誤解招くとろくなことが無い

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リビングに降りた俺達は、夕飯を作っていた。今夜のメニューは野菜たっぷりカレー。 妹華の『好きなご飯ランキング』の3位に入っているものだ。リィンとレヴィには野菜を任せ、俺はお肉を切る。 役割分担した方がスピーディーに作れる。思いの外、リィンとレヴィも料理経験はあったので助かった。 特にリィンの方はとても手際がいい。 レヴィの方は手際がそこまで良くないが上手くやれている。なので、心置き無く自分の仕事に集中できる。 

「--っし!後はルウを溶かすだけだな」

「未来の伴侶の手作りカレー。 我、楽しみ!!」

「悔しいけどあんたの料理美味しいのよね」

ルウを溶かしていると、レヴィとリィンがそれぞれ感想を零す。

「んー、父さんほどじゃないけどな」

「あんたの両親って、いま海外でしょ?」

「ん? そうなのか?」

確かに両親は海外で仕事しているため、家にはめったに帰ってこない。しかし時たまに帰ってくることがあり、その日は父さんが料理を振舞ってくれる。 母さんも作れるのだが、味がいまいち美味しくない。その代わりに盛り付けや食材の善し悪しをみき分ける事が出来る。父さんと母さんが二人で作れば絶品料理間違いなしだ。俺もそれを目指して頑張っている途中だ。

「さて、そろそろ妹華が着く頃だろうし、ルウ溶かしといてくれ」

俺はレヴィとリィンにそう声をかけて、玄関へと向かう。そのタイミングで、ピンポーン、とインターホンを押す音が聞こえた。

「はーい」

返事をすると共に扉を開ける。と、同時に腹部に激痛が走った。よろよろと後ろに後退しながら視線を少し下ろすと、俺の腹部に妹華の拳がめり込んでいた。

「おま、俺じゃなかったらやばかったぞ」

「お兄以外にはやんないし」

「それはそれでどうかと思うぞ? 酷くない?お兄ちゃんの扱い」

腕を下ろして酷いことを言う妹華にそう告げると、脛を無言で蹴られた。激痛が走り蹲る。

「あ、あの、大丈夫ですか?」

俺の耳にスッと入り込んでくるような澄んだ声が聞こえた。視線を上げると、白凪桔梗のお姉さんが心配な表情でこちらを見ていた。

やはり近くで見れば見るほど可愛い。オマケに部屋着らしいシャツ一枚とはまたエロい。胸の谷間が見えているじゃないか。

「シスコンお兄さん、さっきからお姉ちゃんの胸見すぎですよ~♪」

桔梗ちゃんがニヤニヤしながら告げる。その言葉にお姉さんが顔を真っ赤にして、胸を片手で隠すと共にもう片方の手を俺に翳した。

--瞬間。


巨大な水球が俺の身体に激突した。まるで飛び込み台からプールに飛び込んで失敗した時に腹を打ちつけるような固い感覚。並の人間なら重傷または死ぬ。だが俺の場合は鍛えに鍛え抜いた為、これぐらいの事はなんて事ない。といっても痛いものは痛い。

「ちょっと、今の音なに!?」

「敵襲か!? 未来の伴侶よ!」

リビングの方からドタドタと足音を響かせながら、リィンとレヴィが廊下に顔を出した。おまけに2人とも臨戦態勢。 

「なんでもないから、臨戦態勢解け。 特にレヴィ。 お前はその両手に持ってる物騒なもん捨てろ」

濡れ鼠状態の俺は、リィンとレヴィに静止の声をかける。 

「はぁ、いつもの事ね」

「う、うむ。 未来の伴侶がそういうのならば」

リィンは溜息をつき、レヴィは両手に持った鋭く尖った剣を消した。

「・・・なんでリィンさんがいるの?しかもお兄の婚約者とかほざくブスもいるし。 どういうことか説明してくれるかなぁ? 二股お兄?」

リィンとレヴィを見た妹華がご立腹である。おまけに、

「ど、どういうことですか!? 妹華ちゃんのお兄さん! ひ、一目惚れだったのに、只の二股最低クズ男だったんですね!?」

白凪姉が水球を作り出しながら涙目でなんか怒っていた。話が余計ややこしくなった気がする。俺は桔梗ちゃんに助けを求めたが、

「あ、私に助け求めても無駄ですよ。お姉ちゃん、こうなったら気が済むまでどうにもならないので。 まぁ、精々頑張ってください、シスコンお兄さん♪」

あっさりと見捨てられた。

「そういうわけです。これからお兄さんの部屋に二人っきりでお話しましょうねぇ?」

水球を更に増殖させて天使の微笑を浮かばせた白凪姉。 これはあれだ。 部屋に入った瞬間に水球でボコボコにされる。

「あ、あの、ご、誤解ですから!こ、こいつらはタダのクラスメイトで、今日はたまたま勉強会を開いてただけなんです!!」

俺は必死にそう訴える。 が、

「む? 我は未来の伴侶の嫁だぞ?」

レヴィが余計な一言を口にする。確かにお前の中ではそうなってるかもしれないけど、俺は1度もお前を好きになった事ないからな。 やれやれ、このままレヴィがここにいたらさらに話がややこしくなる。

「リィン。 レヴィをリビングに連れてってくれ」

「はぁ? なんで私がアンタの命令を聞かなきゃならないのよ」

「・・・勉強時間三倍」

「んぐっ・・・。 行くわよ、レヴィ」

俺の脅しに一瞬にして掌を返したリィンはバタバタと暴れるレヴィを引きずりながらリビングへと消えていった。これで邪魔者は消えた。

「えーと、立ち話もなんですし、和室でお話しませんか?」

「・・・分かりました。 桔梗ちゃん、あなたは妹華ちゃんと部屋で遊んでてくれる?」」

白凪姉は桔梗にそう声をかける。

「はーい♪ んじゃ、行こっか? 妹華ちゃん」

「桔梗ちゃんのお姉さんに変な事したら貧相なソレもぐから」

桔梗ちゃんに引っ張られる妹華は階段を上がる前に恐ろしい言葉を残して消えていった。なんて恐ろしい妹なのだろうか。兄のアレをもごうだなんて!悪逆非道だ!

「さて、二人になった事ですし、しっかりみっちりと長い時間楽しみましょうか? お兄さん」

水球を浮かばせたまま、白凪姉がジリジリと俺に距離を詰めてくる。決して早くないのだが動けない。まるで蛇に睨まれたカエルのように。やがて距離が縮まり、白凪姉の胸と俺の胸が服越し通しで密着するほどの距離になった。 その為、首筋辺りに白凪姉の吐息があたり、こそばゆい。自分のアレがアレしてないか心配になる。

「あ、あの、桔梗ちゃんのお姉さん? こ、これは一体・・・」

「お姉さんだなんて他人行儀はやめてください。私のことは気軽に純恋すみれと呼んでください」

「いや、ちょ・・・っ!?」

あまりの近さに後ずさると、踵で何かを踏みつけバランスを崩す。ズテン!という音を鳴らして後頭部を床にうちつけた。あまりの激痛に悶えようとするが、重しがのしかかっているのか、身動きが取れない。ただ重しにしては柔らかいというか、なんか落ち着くような温もりを感じる。しばしその温もりにホンワカしていると、冷めきった眼でこちらを睨むリィンと目が合った。

「・・・カレーが出来たから呼びに来たけど、まじキモイ」

リィンはそう言い残してリビングへと帰っていく。

「・・・・」

マジトーンすぎて怖かった。 滅多に聞かないマジトーンの悪口に俺は瀕死である。というか、落ちつくような温もりにホンワカしてるだけで気持ち悪いとは失礼な・・・ん? そうえば、ホンワカしてたのはいいが、この温もりなに?  
 
俺は視線を重し(?)に移す。 

そして、目を見開いた。

何故なら、重し(?)の正体は
桔梗ちゃんのお姉さんだったからだ。

しかし、少しだけ様子がおかしい。先程までとは違う表情だ。わかりやすく言うと顔が真っ赤か。熱でも出たのだろうか。

「えーと、大丈夫ですか?」

「・・・ゅ~」

なんか小さな呻き声だけが聞こえる。相当ヤバいのが見て分かる。ただ、さっきまで元気だったのに突然、熱を出すという症状は聞いたことがない。新種の病気か、体質か。

「このまま放置するのもアレだし、一度、リビングに運ぶか」

俺は純恋さんを抱き起こそうと、身体に触れた瞬間、

「なにしてんの! 変態お兄!!」

妹華の大声と共にゴスっという鈍い音が鳴り響いた。 俺の脇腹から。軽く意識が飛びかけたが、なんとか堪える。

「人の話を聞いてから判断してくれない!?」

脇腹を押さえながら叫ぶ。それに対し、

「はァ? お兄の話を聞いた所で寝込みを襲ったという証拠はどうにもならないけど?」

「だから!それが誤解だってんだ! 純恋さんが突然、熱出したからリビングに運ぼうとしたんだよ!」

「とか言って、本当はお兄がなんかしたんでしょ?」

「ほんと信用してないな! お兄ちゃんの事!」

血の通った兄を疑うなんて酷い。これでも兄だぞ。 お兄ちゃんだぞ。1度でも、俺が犯罪に手を染めたことがあるか? ないぞ。断言出来る。

「まったく、お兄ちゃんはお前の将来が心配になるよ」

ため息をついて、俺は純恋さんをリビングに運ぶ。 

ガチャリと扉を開け、中に入る。

「遅かったではないか! 未来の伴り・・・浮気か!?」

「・・・一度死んだら?」

レヴィのお馬鹿発言とリィンのお酷い発言に俺は泣きそうになる。心が痛い。なんで俺の周りはこういうヤツらばかりなんだ。悲しくて痛いけど、これ以上構ってると話が長くなる気がしたので、無視して純恋さんをソファに寝かせる。

「うーん、まだ熱いか」

純恋さんの額に手を当てて呟く。俺はどうしたものかと考えていると、

「お茶取りに行った妹華ちゃんが遅いから様子見に来てみれば、シスコンお兄さんがお姉ちゃんの寝込みを襲ってる現場に鉢合わせるなんて」

「君まで俺の事を--」

「--冗談です♪ シスコンお兄さんは、倒れたお姉ちゃんを運んでくれたんですよね?」

泣きそうな声でそう叫ぼうとする瞬間、桔梗ちゃんはそう言って悪戯いたずらに成功した子供のように微笑んだ。

「・・・・き、桔梗ちゃぁああああんっ!!」

俺は思わず、桔梗ちゃんの胸に飛び込もうとジャンピングした。が、視界の端に滞空する妹華の姿を捉える。しかも、高速の回し蹴りのモーションで。恐らく、こうなることを想定して、咄嗟に動いたのだろう。なんという獣の感。時々思うけど、本当に俺と妹は血が繋がっているのか? 

「げへんっ!?」

そんな疑問を最後に俺の意識は刈り取られた。
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