3 / 42
第1-2話 夢から落ちた先は、異世界でしたっ!
『こ、来ないでぇぇっ!!』
半ベソをかきながら叫ぶ私。
すると、必死にかざした両手がぼんやりと光った。
はじめは何が起きているのか全く解らなかったんだけど……その直後、ナイフを持っていたおじさんが勢いよく倒れちゃった。
私も、もう一人のおじさんも、目の前で起こったコトが理解できずに固まっちゃった。
でもそのうち残ったおじさんが怒ったような顔で駆け出そうとしたので、私はまた同じように叫んでみた。
『こ、来ないでって言ってるでしょぉぉっ!!』
再び、私の両手が紫色に輝いた。
さっきよりも強く、ハッキリと。
すると今度は、こっちに向かって来そうだったもう一人のおじさんが倒れ込んじゃった。
この時、ようやく理解した。
これ、私がやったんだって。
何かの魔法を使ったのかもって。
おそるおそる倒れたおじさんたちの様子を見てみると、完全に意識を失っていたけど息はしているから、殺しちゃったワケじゃない。
よく見れば、いびきをかいてぐっすりと眠っている。
私は、他人を瞬時に眠らせる魔法が使えるようになっていたんだ。
魔法が使えるなんて考えてもみなかった。誰かに教えてもらったワケでもないし。
どうしてこんな魔法が使えるんだろう、私はこれからどうすればいいんだろう。
襲われずに済んだ安心感と、何が何だかもう解らない混乱で、私は地面の上で寝ているおじさんたちを見ながら再び泣き出してしまった。
怖くて、それに何故だか悔しくて涙が溢れてくる。
そんな途方に暮れていた私のもとに現れたのが、このネムちゃんだった。
『よぅっ、何だかスッゲェ威力の昏睡魔法が使われたのを感じたけど、お前がやったのか?』
最初に見た時は、私はいよいよおかしくなっちゃったのかーって思ったよ。
だって、もう完全にファンタジーなんだもん。
見た目がほとんど哺乳類のバクをデフォルメしたような謎の動物が、目の前でふよふよ浮いてんのよ。
そんなの、自分の目を疑うに決まってるでしょ。
さらにそんな哺乳類っぽいナニカが笑みを浮かべて、片手を上げながら「よぅっ」とか挨拶してんのよ。
そんなの、自分の頭を疑うに決まってるでしょ。
でもその時、ネムちゃんは私にこう言ったんだ。
『んん……? よく見たらお前、この世界の人間じゃねぇなぁ? どこから来た? 元の世界に帰らなくていいのかあ?』
その一言を聞いた私は、その場でぼろぼろと泣き始めてしまった。
突如現れたこの謎の生物は、私が他の世界……日本から来たコトを瞬時に見抜いた。
『帰らなくていいのか』なんて、心配までしてくれた。
そうだよ、私はこの世界の人間じゃない。
何でこんな訳わかんない世界に居なきゃならないんだろう。
何とか元の世界に、日本に帰れる手段を見つけ出さなきゃ。
そのためには、目の前に現れたこの宙に浮いている不思議な哺乳類っぽい何かを逃しちゃダメだ、と思った。
だって私が別の世界から来たコトを一発で見抜くような、特別な存在みたいだから。
「初めてピルタに話しかけたとき、いきなりお前がわんわん泣き出すから驚いたぜ。浮いてる俺を鷲掴みにしたかと思ったら、すげぇ力で抱きかかえられて、涙と鼻水をなすりつけられて……」
「あ、うぅ……ごめんよぅ、だってあの時は嬉しくて仕方なかったんだよぅ。ネムちゃんが私に会いに来てくれていなかったら、私は今もこの異世界でどうすればいいのか解らないまま彷徨ってたかも知れないし……」
見知らぬ異世界の街の薄暗い路地裏……出会ったばかりのネムちゃんに、私はずびずびと鼻水をすすりながら涙声で事情を説明した。
何だかよく解らないうちにこの世界に迷い込んでしまったコト。
何故か魔法が使えて、私を襲おうとしたおじさん2人が眠っちゃったコト。
所持金はおろか、いま着ている服以外何も持っていないコト。
そして、何とかして元の世界に帰りたいコト。
そこまで説明した時、もの珍しそうに聞いていたネムちゃんは軽ぅ~い口調でこう言った。
『ふ~ん。じゃあお前さ、俺の相棒になれよ。俺が力をつけるのに協力してくれたら、もしかしたら元の世界に帰れるかもしれないぜ?』
『ふぇっ!?』
唐突に持ちかけられた、驚きの取引。
なんでも、このネムちゃんは様々な世界を飛び回りながら、人々の夢……とりわけ『悪夢』を食べることによって力を増していく幻獣の一種らしい。
質の高い『悪夢』のニオイを嗅ぎ分けてはその世界に飛び、眠っている人の夢を具現化して食べてるとか。
『悪夢』の食べられそうな世界を渡り歩いているらしく、私のいた日本にも行ったコトがあるんだって。
だから私がこの異世界の人間でないコトを一瞬で見抜いてくれたんだろうね。
しかし当時のネムちゃんは、なかなか『悪夢』を見る人間に出会えずこのところ困り果てていたらしい。
夜、寝ている人間が見ている夢を長い鼻で嗅ぎ分けながら悪夢を探していたらしいんだけど、なかなか成功しない。
『悪夢』のニオイがしてみたので行ってみれば、到着した頃には終わっているか、別の夢を見ているコトばっかり。
運よく『悪夢』を見ている人間に辿り着いても、食べるために具現化させたら、音が騒がしすぎて起こしちゃう。
そもそも『悪夢』を見ている人間が意外なほど少なくて、なかなか出会えない。
考えてみたら、明確に『悪夢』だって言えるほどの悪い夢を見るのって、1年でも数回くらいしかないもんね……。
私がいた日本にも長いこと居たらしいけど、日本国民はどちらかと言うと『悪夢』を見る人よりも眠りが浅すぎて夢を見ていない人か、もしくは疲れ果てて夢も見ないでとっぷり寝ちゃってる人の方が多かったんだってさ。
そんな時、運よく昏睡魔法を使える私を見つけた。
一瞬にして深い眠りへと誘う昏睡魔法ならば、夢を見るほどの深い眠りに確実に落とすコトができる。
魔法による眠りに落ちれば、しっかりと効果が続いている限り周囲が騒がしくなっても起きるコトもない。
さらに、魔法によって強制的に眠らせるコトができるなら、その気になれば皆が寝静まる夜だけでなく日中でも『悪夢』を食べられる。
となれば、あとは『悪夢』に悩んでいる人を探して昏睡魔法をかければ、ネムちゃんは効率よく『悪夢』を食べ、幻獣としてもりもり力をつけることができる!
そしていつか、私を元の世界へと帰せるくらいのパワーを得られるかもしれなーーい!
こうして私とネムちゃんは、お互いwin-winの関係を築き『悪夢祓いの聖女』と称して悪夢に悩む人々を助けていくコトにしたんだ。
依頼を受ける形式にしておけば、ネムちゃんがわざわざ毎晩のように『悪夢』を見ている人を探さずに済むし、私は依頼人のご自宅にお邪魔して昏睡魔法をかけるだけ。
さらにお金まで貰えるっていうんだから、もうサイコーよね!
「…………で? 明日はどこか依頼は入ってるのか?」
「ほぇっ? そういえば、今日だけで3件こなしちゃったから、明日の依頼は残ってないかも……」
「ありゃりゃ、そうなのか?」
「う、うん……ちょっと待ってね、手帳を確認してみるから」
そういえば、今日は日中から立て続けに依頼をこなせちゃったんだ。
午前中に1件、午後に2件。
あんまりはりきりすぎたせいで、明日の依頼が残ってないかもしれない……。
私はお尻にあるポケットから、小さな手帳を取り出した。
あまり質の良くない紙が綴じられた手帳には、日本語の文字がズラリと書かれている。
この異世界の文字もだいぶ読めるようになったけど、自分しか読まない手帳なら日本語で書いたほうが便利ってもんですし。
私が受けた『悪夢祓い』の依頼をメモしたページを開こうと、親指でぺらぺらとページを捲っていると……
「おうっ! お嬢ちゃん! カワイイねぇ……今日は一人で飲んでんのかい!?」
「ほぇっ?」
唐突にすぐ後ろから、耳慣れない声が聞こえてきた。
カワイイお嬢さん、って言った気がするから、きっと私のコトを呼んだんだろうな!
首だけをくるりと回して後ろを見ると、そこには一人のオジサンが立っていた。
「おぉっ! 間近で見ると、さらにカワイイねぇ……! どうだいお嬢ちゃん、あっちでお兄さんと一緒に飲まないかいっ!?」
赤く焼けた顔、隙間だらけの歯、ぼさぼさの髪。
手にはお酒がほとんど入っていない空の木製ジョッキ。
見るからに酔っ払いだね!
きっとどこかのテーブルで飲んでたんだろうけど、カワイイ私のコトを見つけてナンパしに来たんだろうね。
「……ピルタ、どうする? 明らかにめんどくせぇのが来たぞ」
「えー、どうするって言われてもなぁ」
話の腰を折られてため息を吐くネムちゃんに、私も唇を尖らせて答えた。
「とりあえずオジサン、お酒を一緒に飲むつもりは無いから、あっち行ってね☆」
「おいおーい! ンだよぉお嬢ちゃん、冷てぇなぁ~! そんな事言わないでさァ、ホラっ! 一人で飲むより楽しいぜぇ~!」
むぅ……きっぱり断ったつもりなんだけど、このオジサンなかなかしつこいな。
私が困ったような表情をしていると、その顔を見たネムちゃんが鼻息を吐いてから立ち上がった。
「おいオッサン、聞こえなかったか? ピルタは1人じゃなく、俺と飲んでんだ。貧乏くせえお前なんてお呼びじゃねぇとよ」
ズバッとぶった斬ってくれたネムちゃん。
うーん、最高に口が悪いけど、こういう時すんごい頼りになるね!
小さなバクみたいな見た目じゃなく、人間の男性でイケメンだったらすっごく絵になりそう。
でも、残念ながら完全に小動物な見た目のせいか、小馬鹿にされたオジサンはネムちゃんを見て激昂してしまった。
「あ、あぁ……!? 何だてめぇ、小せえナリのくせに喧嘩売ってんのかぁ!?」
あーあー、まぁネムちゃんの言い方じゃあこうなるよね。
もしかして、わざとオジサンを怒らせるために言ったのかなぁ?
うん、きっと間違いないね。
さっきからネムちゃんがにやにやしながら、横目でこっちを見てる。
あれは『やっちまえ』って目だね!
もう……仕方ないなぁ!
「あー、えっと……おじさん、ちょっといーい?」
「あぁん?」
ネムちゃんと睨み合っていたおじさんがくるりとこちらを向いた瞬間、私は右手を突き出した。
半ベソをかきながら叫ぶ私。
すると、必死にかざした両手がぼんやりと光った。
はじめは何が起きているのか全く解らなかったんだけど……その直後、ナイフを持っていたおじさんが勢いよく倒れちゃった。
私も、もう一人のおじさんも、目の前で起こったコトが理解できずに固まっちゃった。
でもそのうち残ったおじさんが怒ったような顔で駆け出そうとしたので、私はまた同じように叫んでみた。
『こ、来ないでって言ってるでしょぉぉっ!!』
再び、私の両手が紫色に輝いた。
さっきよりも強く、ハッキリと。
すると今度は、こっちに向かって来そうだったもう一人のおじさんが倒れ込んじゃった。
この時、ようやく理解した。
これ、私がやったんだって。
何かの魔法を使ったのかもって。
おそるおそる倒れたおじさんたちの様子を見てみると、完全に意識を失っていたけど息はしているから、殺しちゃったワケじゃない。
よく見れば、いびきをかいてぐっすりと眠っている。
私は、他人を瞬時に眠らせる魔法が使えるようになっていたんだ。
魔法が使えるなんて考えてもみなかった。誰かに教えてもらったワケでもないし。
どうしてこんな魔法が使えるんだろう、私はこれからどうすればいいんだろう。
襲われずに済んだ安心感と、何が何だかもう解らない混乱で、私は地面の上で寝ているおじさんたちを見ながら再び泣き出してしまった。
怖くて、それに何故だか悔しくて涙が溢れてくる。
そんな途方に暮れていた私のもとに現れたのが、このネムちゃんだった。
『よぅっ、何だかスッゲェ威力の昏睡魔法が使われたのを感じたけど、お前がやったのか?』
最初に見た時は、私はいよいよおかしくなっちゃったのかーって思ったよ。
だって、もう完全にファンタジーなんだもん。
見た目がほとんど哺乳類のバクをデフォルメしたような謎の動物が、目の前でふよふよ浮いてんのよ。
そんなの、自分の目を疑うに決まってるでしょ。
さらにそんな哺乳類っぽいナニカが笑みを浮かべて、片手を上げながら「よぅっ」とか挨拶してんのよ。
そんなの、自分の頭を疑うに決まってるでしょ。
でもその時、ネムちゃんは私にこう言ったんだ。
『んん……? よく見たらお前、この世界の人間じゃねぇなぁ? どこから来た? 元の世界に帰らなくていいのかあ?』
その一言を聞いた私は、その場でぼろぼろと泣き始めてしまった。
突如現れたこの謎の生物は、私が他の世界……日本から来たコトを瞬時に見抜いた。
『帰らなくていいのか』なんて、心配までしてくれた。
そうだよ、私はこの世界の人間じゃない。
何でこんな訳わかんない世界に居なきゃならないんだろう。
何とか元の世界に、日本に帰れる手段を見つけ出さなきゃ。
そのためには、目の前に現れたこの宙に浮いている不思議な哺乳類っぽい何かを逃しちゃダメだ、と思った。
だって私が別の世界から来たコトを一発で見抜くような、特別な存在みたいだから。
「初めてピルタに話しかけたとき、いきなりお前がわんわん泣き出すから驚いたぜ。浮いてる俺を鷲掴みにしたかと思ったら、すげぇ力で抱きかかえられて、涙と鼻水をなすりつけられて……」
「あ、うぅ……ごめんよぅ、だってあの時は嬉しくて仕方なかったんだよぅ。ネムちゃんが私に会いに来てくれていなかったら、私は今もこの異世界でどうすればいいのか解らないまま彷徨ってたかも知れないし……」
見知らぬ異世界の街の薄暗い路地裏……出会ったばかりのネムちゃんに、私はずびずびと鼻水をすすりながら涙声で事情を説明した。
何だかよく解らないうちにこの世界に迷い込んでしまったコト。
何故か魔法が使えて、私を襲おうとしたおじさん2人が眠っちゃったコト。
所持金はおろか、いま着ている服以外何も持っていないコト。
そして、何とかして元の世界に帰りたいコト。
そこまで説明した時、もの珍しそうに聞いていたネムちゃんは軽ぅ~い口調でこう言った。
『ふ~ん。じゃあお前さ、俺の相棒になれよ。俺が力をつけるのに協力してくれたら、もしかしたら元の世界に帰れるかもしれないぜ?』
『ふぇっ!?』
唐突に持ちかけられた、驚きの取引。
なんでも、このネムちゃんは様々な世界を飛び回りながら、人々の夢……とりわけ『悪夢』を食べることによって力を増していく幻獣の一種らしい。
質の高い『悪夢』のニオイを嗅ぎ分けてはその世界に飛び、眠っている人の夢を具現化して食べてるとか。
『悪夢』の食べられそうな世界を渡り歩いているらしく、私のいた日本にも行ったコトがあるんだって。
だから私がこの異世界の人間でないコトを一瞬で見抜いてくれたんだろうね。
しかし当時のネムちゃんは、なかなか『悪夢』を見る人間に出会えずこのところ困り果てていたらしい。
夜、寝ている人間が見ている夢を長い鼻で嗅ぎ分けながら悪夢を探していたらしいんだけど、なかなか成功しない。
『悪夢』のニオイがしてみたので行ってみれば、到着した頃には終わっているか、別の夢を見ているコトばっかり。
運よく『悪夢』を見ている人間に辿り着いても、食べるために具現化させたら、音が騒がしすぎて起こしちゃう。
そもそも『悪夢』を見ている人間が意外なほど少なくて、なかなか出会えない。
考えてみたら、明確に『悪夢』だって言えるほどの悪い夢を見るのって、1年でも数回くらいしかないもんね……。
私がいた日本にも長いこと居たらしいけど、日本国民はどちらかと言うと『悪夢』を見る人よりも眠りが浅すぎて夢を見ていない人か、もしくは疲れ果てて夢も見ないでとっぷり寝ちゃってる人の方が多かったんだってさ。
そんな時、運よく昏睡魔法を使える私を見つけた。
一瞬にして深い眠りへと誘う昏睡魔法ならば、夢を見るほどの深い眠りに確実に落とすコトができる。
魔法による眠りに落ちれば、しっかりと効果が続いている限り周囲が騒がしくなっても起きるコトもない。
さらに、魔法によって強制的に眠らせるコトができるなら、その気になれば皆が寝静まる夜だけでなく日中でも『悪夢』を食べられる。
となれば、あとは『悪夢』に悩んでいる人を探して昏睡魔法をかければ、ネムちゃんは効率よく『悪夢』を食べ、幻獣としてもりもり力をつけることができる!
そしていつか、私を元の世界へと帰せるくらいのパワーを得られるかもしれなーーい!
こうして私とネムちゃんは、お互いwin-winの関係を築き『悪夢祓いの聖女』と称して悪夢に悩む人々を助けていくコトにしたんだ。
依頼を受ける形式にしておけば、ネムちゃんがわざわざ毎晩のように『悪夢』を見ている人を探さずに済むし、私は依頼人のご自宅にお邪魔して昏睡魔法をかけるだけ。
さらにお金まで貰えるっていうんだから、もうサイコーよね!
「…………で? 明日はどこか依頼は入ってるのか?」
「ほぇっ? そういえば、今日だけで3件こなしちゃったから、明日の依頼は残ってないかも……」
「ありゃりゃ、そうなのか?」
「う、うん……ちょっと待ってね、手帳を確認してみるから」
そういえば、今日は日中から立て続けに依頼をこなせちゃったんだ。
午前中に1件、午後に2件。
あんまりはりきりすぎたせいで、明日の依頼が残ってないかもしれない……。
私はお尻にあるポケットから、小さな手帳を取り出した。
あまり質の良くない紙が綴じられた手帳には、日本語の文字がズラリと書かれている。
この異世界の文字もだいぶ読めるようになったけど、自分しか読まない手帳なら日本語で書いたほうが便利ってもんですし。
私が受けた『悪夢祓い』の依頼をメモしたページを開こうと、親指でぺらぺらとページを捲っていると……
「おうっ! お嬢ちゃん! カワイイねぇ……今日は一人で飲んでんのかい!?」
「ほぇっ?」
唐突にすぐ後ろから、耳慣れない声が聞こえてきた。
カワイイお嬢さん、って言った気がするから、きっと私のコトを呼んだんだろうな!
首だけをくるりと回して後ろを見ると、そこには一人のオジサンが立っていた。
「おぉっ! 間近で見ると、さらにカワイイねぇ……! どうだいお嬢ちゃん、あっちでお兄さんと一緒に飲まないかいっ!?」
赤く焼けた顔、隙間だらけの歯、ぼさぼさの髪。
手にはお酒がほとんど入っていない空の木製ジョッキ。
見るからに酔っ払いだね!
きっとどこかのテーブルで飲んでたんだろうけど、カワイイ私のコトを見つけてナンパしに来たんだろうね。
「……ピルタ、どうする? 明らかにめんどくせぇのが来たぞ」
「えー、どうするって言われてもなぁ」
話の腰を折られてため息を吐くネムちゃんに、私も唇を尖らせて答えた。
「とりあえずオジサン、お酒を一緒に飲むつもりは無いから、あっち行ってね☆」
「おいおーい! ンだよぉお嬢ちゃん、冷てぇなぁ~! そんな事言わないでさァ、ホラっ! 一人で飲むより楽しいぜぇ~!」
むぅ……きっぱり断ったつもりなんだけど、このオジサンなかなかしつこいな。
私が困ったような表情をしていると、その顔を見たネムちゃんが鼻息を吐いてから立ち上がった。
「おいオッサン、聞こえなかったか? ピルタは1人じゃなく、俺と飲んでんだ。貧乏くせえお前なんてお呼びじゃねぇとよ」
ズバッとぶった斬ってくれたネムちゃん。
うーん、最高に口が悪いけど、こういう時すんごい頼りになるね!
小さなバクみたいな見た目じゃなく、人間の男性でイケメンだったらすっごく絵になりそう。
でも、残念ながら完全に小動物な見た目のせいか、小馬鹿にされたオジサンはネムちゃんを見て激昂してしまった。
「あ、あぁ……!? 何だてめぇ、小せえナリのくせに喧嘩売ってんのかぁ!?」
あーあー、まぁネムちゃんの言い方じゃあこうなるよね。
もしかして、わざとオジサンを怒らせるために言ったのかなぁ?
うん、きっと間違いないね。
さっきからネムちゃんがにやにやしながら、横目でこっちを見てる。
あれは『やっちまえ』って目だね!
もう……仕方ないなぁ!
「あー、えっと……おじさん、ちょっといーい?」
「あぁん?」
ネムちゃんと睨み合っていたおじさんがくるりとこちらを向いた瞬間、私は右手を突き出した。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
コクジキ ~ 首輪の青年は 禁色の炎を身にやどす《黎明編》
弓月
ファンタジー
大陸の中立地帯、砂の街コラン。そこに暮らす首輪を付けた青年マルチェは、ある日《 コクジキ 》と呼ばれる黒い炎を暴走させてしまう。その黒い炎は強力だが……禁色とされる危険な力だった。
マルチェを救った気紋師の青年。
力の暴走に怯える謎多き少女。
宝具と呼ばれる正体不明の道具。
そして、他国への侵攻をたくらむキンベル帝国。
争いと陰謀に巻き込まれながら、マルチェは首輪に隠された悲しき真実へとたどり着く──。
正義、恋愛、友情が絡み合う、少年ジャンプ系のバトル小説です。
■ マルチェ・カルル(18)
鍵穴の無い謎の鉄首輪を付けている青年。
■ 真貫 シン(19)
東の果てにある蕃東国から来た気紋師。
■ 梗華(16)
蕃東国の森で出会う、謎多き可憐な少女。
人を縛り支配するのは
国か、首輪か、恐怖か、愛か
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。