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第2-2話 食らえ、昏睡魔法っ!
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不満を全身で表現する私を横目で見ながら、ネムちゃんは私が飲んでいたジュースのグラスを奪うと中身を一気に飲み干してしまった。
満足げに息を吐くと、テーブルにグラスを置く。
コン、という良い音が響いた。
「いいじゃねえか、『ピルタ』で。どうせお前自身も、異世界っぽい名前で呼ばれる事がまんざらでも無いんだろ?」
「ぎくぅっ!? え、あ、ぅ、その……はい、そうです」
「じゃあこのままでいこうぜ、ピルタ」
なーんて言いながら、ネムちゃんはニヤリと笑って私の顔を見上げてきた。
「んもー……ま、いっか。もう呼ばれ慣れちゃったし」
そんなネムちゃんに、私も笑顔を返す。
こういう関係、私キライじゃないのよね。
それに、ネムちゃんの言う通り『ピルタ』って呼ばれるのも、何だか横文字の名前っぽくて嫌いじゃない。
んふふーなーんて、やっていたところ…………
突然、酒場の扉が開いた。
乱暴と言うほどではないけど、でっかい音を立てる。
酒場の中にいた人が一斉に扉の方を見る。
「うえっ!?」
「んん……!?」
そして私とネムちゃんを含めた皆が、一様に驚きの表情を浮かべた。
視線の先には、銀色に輝く甲冑の一団。
「な、何だぁ……!?」
「ありゃあ、レアリーダ騎士団の連中だ」
「何だよ、おだやかな雰囲気じゃねえな……?」
「おい、あの紋章って……王室の近衛隊じゃねえかぁ!?」
「こ、近衛の騎士が、何だってこんな夜の酒場に来るんだ!? 捕り物か!?」
ざわめく酒場。
どよめく人々。
それもそのはず、入って来たのは全身に銀色の甲冑を着込んだ王家の騎士たちだった。
それも、一人ではない。ぞろぞろと列を成して扉から酒場の中に入って来る。
その数およそ10人。
「う、わぁ…………こんな時間に騎士さんたちが酒場に来るなんて、珍しいよね……」
「ああ、そうだな……それもあんな大所帯で」
「し、仕事終わりの打ち上げとか……?」
「いや、フツーは打ち上げに甲冑着たまま来ねえだろ……」
ネムちゃんとヒソヒソ話しているうちに、酒場にいるほぼ全員の視線を集めた騎士の一団は、皆に何かしらを告げることもなく続々とテーブル席の近くまで入ってきた。
空いている席を探してる……という雰囲気じゃ無さそうだけど、一体何だろう?
先頭にいるちょっと豪華な装飾を鎧につけた隊長さんと思しき人が、さっきからキョロキョロとあたりを見回してる。
うーん……実は私、この世界にいる騎士さんたちって、ちょっと苦手なのよねー。
無愛想を標準装備って言うか、笑顔のスキルは未実装ですって言うか。
今だって、たった一言『コレコレこういう理由で入ってきました、お騒がせしてますー』って言えば済む話じゃん。
なのに、さっきみたいに何も言わずにどかどか酒場に入ってきたら、そりゃ皆驚くに決まってるよ。
まぁお堅い人たちだから仕方ないんだろうけどさ。
それでも、もう少し何とかして欲しいもんだと17歳女子高生だった身としては思うワケですよ。
中学校の頃に行ったイベントに来てた自衛隊の人たちなら、もっとずっとフレンドリーだったぞぅ。
隊長っぽい騎士の人は、一通り酒場の客の顔を見渡した後、後ろに振り向いて部下さんに何かヒソヒソと話してる。
…………うん?
2番目にいる部下さんが何やら手に持ってるけど、あれは何だろう?
「ねぇネムちゃん。あそこにいる前から2番目の騎士さんが持ってるのって、なに?」
「ああ、ありゃ魔力計測器だな。周囲でどんな魔法が、どれくらいの威力でぶっ放されたかを調べる、道具、なんだが…………」
「…………へぇー」
説明の途中から、歯切れが悪くなるネムちゃん。
ほーほー、そうですか。魔力計測器ですかー。
う、う~~ん、何ででしょうかね。私すーーーーっごく、イヤな予感がするんですけど。
「……ねぇ、まさかあの人たち、私の昏睡魔法の痕跡を辿って来たとか、そんなんじゃないよね」
「奇遇だなピルタ、ちょうど俺もそんな可能性にぶち当たっていたんだ」
さすが相棒、気が合うね~……じゃなくて!
ま、まて、落ち着くんだ、私。素数を数えろ。
今のは『もしかしたら』の話であって、まだ確定したワケじゃ ────────
あ。
魔力計測器を持った部下さんが、こっちの方向を指さした。
隊長さんを含めたのこり9人の銀鎧マンたちが、一斉にこっちを見た。
その様子を見ていた酒場のお客さんたちも、残らず私を見た。
予感,的中したかも。
隊長っぽい騎士さんが、私を目掛けて勢いよく足を踏み出す。
すぐさまその後を追いかけるように、9人の銀色甲冑ががしゃんがしゃんと足音を立てながら続いてくる。
ものの数秒で、私がいるテーブルの目の前に騎士たちが詰めかけてきてしまったのだ。
どよめきの後、静まり返る酒場。
「(ちょ、ちょちょちょちょ……ちょっと、どうすればいいの、コレ!? 何でこの人たち、私のところに!?)」
「(しっ、知らねえよぉ……ピルタよぉ、お前なにか騎士たちに追いかけられるようなコトしてたんじゃねえの!?)」
「(失礼ねっ! その、あの……ちょっとくらいしかしてないわよっ!)」
「(やってる事はやってるんだな…………)」
慌てふためきながら小声で話す私たち。
そんな私たちを見下ろすようにしながら取り囲んでいた騎士たちだったが……突然片膝を着き、頭を下げて見せた。
「え、えっ…………!?」
「なんだぁ…………!?」
一瞬、何をされたのか理解できずに私とネムちゃんは驚きの声を上げた。
「食事中に失礼します。貴女は、かの高名な『悪夢祓いの聖女』様で相違ないでしょうか?」
「ほへっ!?」
酒場中の注目を集めたうえで問いかけられた私は、思わず素っ頓狂な声を上げちゃった……。
満足げに息を吐くと、テーブルにグラスを置く。
コン、という良い音が響いた。
「いいじゃねえか、『ピルタ』で。どうせお前自身も、異世界っぽい名前で呼ばれる事がまんざらでも無いんだろ?」
「ぎくぅっ!? え、あ、ぅ、その……はい、そうです」
「じゃあこのままでいこうぜ、ピルタ」
なーんて言いながら、ネムちゃんはニヤリと笑って私の顔を見上げてきた。
「んもー……ま、いっか。もう呼ばれ慣れちゃったし」
そんなネムちゃんに、私も笑顔を返す。
こういう関係、私キライじゃないのよね。
それに、ネムちゃんの言う通り『ピルタ』って呼ばれるのも、何だか横文字の名前っぽくて嫌いじゃない。
んふふーなーんて、やっていたところ…………
突然、酒場の扉が開いた。
乱暴と言うほどではないけど、でっかい音を立てる。
酒場の中にいた人が一斉に扉の方を見る。
「うえっ!?」
「んん……!?」
そして私とネムちゃんを含めた皆が、一様に驚きの表情を浮かべた。
視線の先には、銀色に輝く甲冑の一団。
「な、何だぁ……!?」
「ありゃあ、レアリーダ騎士団の連中だ」
「何だよ、おだやかな雰囲気じゃねえな……?」
「おい、あの紋章って……王室の近衛隊じゃねえかぁ!?」
「こ、近衛の騎士が、何だってこんな夜の酒場に来るんだ!? 捕り物か!?」
ざわめく酒場。
どよめく人々。
それもそのはず、入って来たのは全身に銀色の甲冑を着込んだ王家の騎士たちだった。
それも、一人ではない。ぞろぞろと列を成して扉から酒場の中に入って来る。
その数およそ10人。
「う、わぁ…………こんな時間に騎士さんたちが酒場に来るなんて、珍しいよね……」
「ああ、そうだな……それもあんな大所帯で」
「し、仕事終わりの打ち上げとか……?」
「いや、フツーは打ち上げに甲冑着たまま来ねえだろ……」
ネムちゃんとヒソヒソ話しているうちに、酒場にいるほぼ全員の視線を集めた騎士の一団は、皆に何かしらを告げることもなく続々とテーブル席の近くまで入ってきた。
空いている席を探してる……という雰囲気じゃ無さそうだけど、一体何だろう?
先頭にいるちょっと豪華な装飾を鎧につけた隊長さんと思しき人が、さっきからキョロキョロとあたりを見回してる。
うーん……実は私、この世界にいる騎士さんたちって、ちょっと苦手なのよねー。
無愛想を標準装備って言うか、笑顔のスキルは未実装ですって言うか。
今だって、たった一言『コレコレこういう理由で入ってきました、お騒がせしてますー』って言えば済む話じゃん。
なのに、さっきみたいに何も言わずにどかどか酒場に入ってきたら、そりゃ皆驚くに決まってるよ。
まぁお堅い人たちだから仕方ないんだろうけどさ。
それでも、もう少し何とかして欲しいもんだと17歳女子高生だった身としては思うワケですよ。
中学校の頃に行ったイベントに来てた自衛隊の人たちなら、もっとずっとフレンドリーだったぞぅ。
隊長っぽい騎士の人は、一通り酒場の客の顔を見渡した後、後ろに振り向いて部下さんに何かヒソヒソと話してる。
…………うん?
2番目にいる部下さんが何やら手に持ってるけど、あれは何だろう?
「ねぇネムちゃん。あそこにいる前から2番目の騎士さんが持ってるのって、なに?」
「ああ、ありゃ魔力計測器だな。周囲でどんな魔法が、どれくらいの威力でぶっ放されたかを調べる、道具、なんだが…………」
「…………へぇー」
説明の途中から、歯切れが悪くなるネムちゃん。
ほーほー、そうですか。魔力計測器ですかー。
う、う~~ん、何ででしょうかね。私すーーーーっごく、イヤな予感がするんですけど。
「……ねぇ、まさかあの人たち、私の昏睡魔法の痕跡を辿って来たとか、そんなんじゃないよね」
「奇遇だなピルタ、ちょうど俺もそんな可能性にぶち当たっていたんだ」
さすが相棒、気が合うね~……じゃなくて!
ま、まて、落ち着くんだ、私。素数を数えろ。
今のは『もしかしたら』の話であって、まだ確定したワケじゃ ────────
あ。
魔力計測器を持った部下さんが、こっちの方向を指さした。
隊長さんを含めたのこり9人の銀鎧マンたちが、一斉にこっちを見た。
その様子を見ていた酒場のお客さんたちも、残らず私を見た。
予感,的中したかも。
隊長っぽい騎士さんが、私を目掛けて勢いよく足を踏み出す。
すぐさまその後を追いかけるように、9人の銀色甲冑ががしゃんがしゃんと足音を立てながら続いてくる。
ものの数秒で、私がいるテーブルの目の前に騎士たちが詰めかけてきてしまったのだ。
どよめきの後、静まり返る酒場。
「(ちょ、ちょちょちょちょ……ちょっと、どうすればいいの、コレ!? 何でこの人たち、私のところに!?)」
「(しっ、知らねえよぉ……ピルタよぉ、お前なにか騎士たちに追いかけられるようなコトしてたんじゃねえの!?)」
「(失礼ねっ! その、あの……ちょっとくらいしかしてないわよっ!)」
「(やってる事はやってるんだな…………)」
慌てふためきながら小声で話す私たち。
そんな私たちを見下ろすようにしながら取り囲んでいた騎士たちだったが……突然片膝を着き、頭を下げて見せた。
「え、えっ…………!?」
「なんだぁ…………!?」
一瞬、何をされたのか理解できずに私とネムちゃんは驚きの声を上げた。
「食事中に失礼します。貴女は、かの高名な『悪夢祓いの聖女』様で相違ないでしょうか?」
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