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第13-4話 夢はどこまでも自由っ!
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真っ白な『もや』を切り裂いて出てきたのは…………
家よりもはるかに巨大な、ピンク色のクマさんだった!
「な、なんだこれはぁぁぁっ!?」
驚きの声をあげる王様は、あんぐりと大きな口を開けて巨大なクマさんを見上げていた。
これは……寝所でクエリちゃんが寝る前に抱っこしていた、ぬいぐるみのクマ (のような異世界生物)だね!
全身がカールしたふわふわの毛糸で覆われていて、手の先端には肉球を再現したと思われるボタンまでついている。
お尻のあたりについているまん丸の尻尾には、糸のほつれまで付いている程の再現度。
しかし、そのどれもが超特大サイズ!
黒く塗られた可愛らしいはずの木製の瞳は、もはや恐怖を通り越して絶望すら感じさせるほどの迫力……!
そんなピンクの超巨大クマさんが、『もや』の中から一歩踏み出した。
「うわああああああああっ!?」
たった一歩、足を踏み出し着地しただけで地響きがする。
その周囲にいた騎士さんたちは、特大ボリュームの毛糸の足に吹っ飛ばされて花畑の中へと消えていった。
おぉぉ……すごい威力だー!
「そ、そんなバカなっ……!? ク、クエリが……夢で攻撃しているとでも言うのか!?」
狼狽を隠せない様子の王様は、モコモコの手足のひと薙ぎで前衛の騎士さんたちを吹っ飛ばしていくクマさんを見上げて震えている。
もはや説明もいらないけど、これはネムちゃんが夢を具現化させるときに発生する現象。
いつもなら『悪夢』の中に出てくる物体が具現化して、周囲にいる私たちに物理的に干渉してくるところを何とかやり過ごすけど……今回は、具現化させたクエリちゃんの夢を、好き放題暴れてもらえるように放置してるだけ!
いつもなら襲われないように自分たちの身を守るんだけど、今回に限ってはそんな必要はありませーん!
なぜなら、この夢はクエリちゃんが『おかあさんを守りたい』と思って見ている夢だからっ!
「あ、あわわわわわ…………」
目の前で起きている現象がまるで信じられないかのように、マドラさんは目を剥いて驚いている。
あんまりびっくりしちゃったせいか、私の後ろに隠れるようにして私の袖あたりをぎゅっと握っている。
こうして見ると、マドラさんってクエリちゃんと同じくらい可愛い人だなぁ……!
「大丈夫ですよ、マドラさんっ! これは、クエリちゃんの夢が具現化したものです! 私たちを守ってくれてるんですよ!」
「そ、そうなんですか!? で、でも具現化って事は……これ、幻術とかじゃなくて、ほっ、本物なんですかぁっ!?」
「え、えーと、本物ではない、んですけど、うーん……さ、触れる幻影ですっ!?」
「な、何ですか、それぇぇっ!?」
視界の片隅で別の騎士さんたちがクマさんの腕によって吹っ飛ばされた頃、クエリちゃんの頭から次々と湧き出てくる『もや』に変化が起きた。
「う、うわあぁっ……! 今度のも凄いねっ!」
「うーん、お姫様の想像力ってすげぇなぁ。こりゃもう才能だよ。お勉強よりも、もっともっとお絵描きさせるべきだな」
関心したような声を上げながら見上げる私とネムチャンの前で、『もや』が光り輝く。
次に『もや』の中から登場したのは、全身をこれでもかというほど頑丈そうな鎧で包まれた、巨大な騎士像だった。
三頭身くらいにデフォルメされたような姿だが、そのバランスが一段と恐怖心を煽る。
巨大な姿も相まって、騎士というよりももはやお城だね、うん。
お城に手足が生えて、兜をかぶって歩いてるカンジ!
でも騎士にしては剣とか槍を持ってないなぁ~? 確かにでっかいけど、これで戦えるのかな?
……なんて思ってたけど、無用な心配でした。
超巨大な騎士像は、おもむろに両腕を持ち上げたかと思うと、先端をまっすぐ上に向けて伸ばしてみせた。
すると次の瞬間、腕の先端部分から轟音とともに無数の光の矢が発射されたのが見えた。
「え、えぇぇえ……手からビームだすのぉぉ!?」
「うん、凄い。発想が凄いわ、お姫様。ゴーレムとか作らせてみたいわ」
驚きと感心を隠せない私たちのはるか向こうで、笑っちゃうくらい慌ててる人影が見える。
「な、何だこれはーーーーーーーーッッ!?」
大口を開けて絶叫をあげる王様だったが、まるで打つ手なし。
発射された大量の光の矢は天高く上空へ舞い上がったかと思うと上空で急旋回し、数秒後には勢いよく地面へと降り注ぎ始めた。
まるで超大量の流れ星が、次々と落下してくるかのような光景!
着弾点にいた騎士さんたちは膨張した光により弾き飛ばされるかのように、あちこちで空中を舞っていた。
「ぎゃあああああああああああ!?」
「うひゃあああああああああっ!?」
「ほげええええええええええ!?」
もはや阿鼻叫喚の地獄絵図のような有様だけど、クエリちゃんの夢はどうやらまだまだ終わりそうにない。
巨大なままの『もや』から、次々と具現化した夢の登場人物が這い出てきている。
まず、先端が丸くなっている木製の超巨大包丁。これはきっとおままごとで使ってるオモチャかな。
空中で止まったと思ったら、まるで誰かが操っているかのように騎士さんの列を微塵切りし始めた、ひえぇぇええぇ。
次に出てきたのは、カラフルなボール。
てんてんとバウンドしているだけかと思ったら、一度着地するごとに騎士さんを確実に一人ずつ踏み潰して地面にめり込ませていた、ひょぇぇええぇぇ。
さらに、青い正八面体のような積み木が出現したと思ったら、角からビームを発射し始めた。
あっ、これ私見たことある! 荷粒子砲を発射するタイプのやつだ!
包丁とボールと積み木から運よく逃れられた騎士さんもいたようだったが、そんな人は最初に出現したクマさんの地面スレスレ薙ぎ払いラリアットを食らってあえなくリタイアしていた。
完全なる形勢逆転。
私たちを追うために真夜中のノルトアイルまで駆けてきた騎士さんたちは、クエリちゃんの夢が生み出した『おかあさんガーディアンズ』によって残らず地に伏せるコトとなった。
これ、全部クエリちゃんが『おかあさんを守りたい』という一心で生み出した夢の住人だよね。
クエリちゃんのお母さんを想う気持ちの大きさを感じ、私は思わずじーんとしちゃった。
それにしても……たった一人の女の子が見た夢が具現化しただけで、王国の誇る騎士団が全滅しちゃうんだね。
夢は具現化させたまま放置してはいけないと、改めて学ぶコトができました。
幻獣とペアを組んで昏睡魔法を使う予定の方は、くれぐれも注意してくださいねっ!
「こ、こんな……こんな事が……バカなっ! バカなぁぁっ! ぬぐううぅぅぅっ!!」
気付けば月夜の丘に立っているのは、王様ただ一人になっていた。
クマさんのボディプレスも、騎士像の光の矢も、巨大包丁の微塵切りも、奇跡的に王様を避けている。
もしかして……クエリちゃんが無意識のうちに、お父さんである王様を標的から外してたのかな?
なんにせよ、チャンスだっ!!
王様の周辺に、騎士さんたちの姿はもう無いっ!
「よぉし、ピルタ。最後の仕上げといこうぜ。昏睡魔法、あと1発撃てるか!?」
ふわりと上空から舞い降りてきたネムちゃんは、私の横に着地するなり問いかけてきた。
具現化魔法を使い続けているせいか、全身が淡く紫色に光り続けている。
うーん、幻想的でカッコいいなぁ。
私は期待に応えるべく、全身に意識を集中させ残った魔力を指先へとかき集めた。
「うんっ! 準備おっけー、いつでもオッケー! ネムちゃんのタイミングで言ってもらっていいからねっ!」
「よし、じゃあお姫様の夢の具現化を解除したら、一発頼むぜ!」
「はーーーーいっ! まかせてちょうだいっ!!」
家よりもはるかに巨大な、ピンク色のクマさんだった!
「な、なんだこれはぁぁぁっ!?」
驚きの声をあげる王様は、あんぐりと大きな口を開けて巨大なクマさんを見上げていた。
これは……寝所でクエリちゃんが寝る前に抱っこしていた、ぬいぐるみのクマ (のような異世界生物)だね!
全身がカールしたふわふわの毛糸で覆われていて、手の先端には肉球を再現したと思われるボタンまでついている。
お尻のあたりについているまん丸の尻尾には、糸のほつれまで付いている程の再現度。
しかし、そのどれもが超特大サイズ!
黒く塗られた可愛らしいはずの木製の瞳は、もはや恐怖を通り越して絶望すら感じさせるほどの迫力……!
そんなピンクの超巨大クマさんが、『もや』の中から一歩踏み出した。
「うわああああああああっ!?」
たった一歩、足を踏み出し着地しただけで地響きがする。
その周囲にいた騎士さんたちは、特大ボリュームの毛糸の足に吹っ飛ばされて花畑の中へと消えていった。
おぉぉ……すごい威力だー!
「そ、そんなバカなっ……!? ク、クエリが……夢で攻撃しているとでも言うのか!?」
狼狽を隠せない様子の王様は、モコモコの手足のひと薙ぎで前衛の騎士さんたちを吹っ飛ばしていくクマさんを見上げて震えている。
もはや説明もいらないけど、これはネムちゃんが夢を具現化させるときに発生する現象。
いつもなら『悪夢』の中に出てくる物体が具現化して、周囲にいる私たちに物理的に干渉してくるところを何とかやり過ごすけど……今回は、具現化させたクエリちゃんの夢を、好き放題暴れてもらえるように放置してるだけ!
いつもなら襲われないように自分たちの身を守るんだけど、今回に限ってはそんな必要はありませーん!
なぜなら、この夢はクエリちゃんが『おかあさんを守りたい』と思って見ている夢だからっ!
「あ、あわわわわわ…………」
目の前で起きている現象がまるで信じられないかのように、マドラさんは目を剥いて驚いている。
あんまりびっくりしちゃったせいか、私の後ろに隠れるようにして私の袖あたりをぎゅっと握っている。
こうして見ると、マドラさんってクエリちゃんと同じくらい可愛い人だなぁ……!
「大丈夫ですよ、マドラさんっ! これは、クエリちゃんの夢が具現化したものです! 私たちを守ってくれてるんですよ!」
「そ、そうなんですか!? で、でも具現化って事は……これ、幻術とかじゃなくて、ほっ、本物なんですかぁっ!?」
「え、えーと、本物ではない、んですけど、うーん……さ、触れる幻影ですっ!?」
「な、何ですか、それぇぇっ!?」
視界の片隅で別の騎士さんたちがクマさんの腕によって吹っ飛ばされた頃、クエリちゃんの頭から次々と湧き出てくる『もや』に変化が起きた。
「う、うわあぁっ……! 今度のも凄いねっ!」
「うーん、お姫様の想像力ってすげぇなぁ。こりゃもう才能だよ。お勉強よりも、もっともっとお絵描きさせるべきだな」
関心したような声を上げながら見上げる私とネムチャンの前で、『もや』が光り輝く。
次に『もや』の中から登場したのは、全身をこれでもかというほど頑丈そうな鎧で包まれた、巨大な騎士像だった。
三頭身くらいにデフォルメされたような姿だが、そのバランスが一段と恐怖心を煽る。
巨大な姿も相まって、騎士というよりももはやお城だね、うん。
お城に手足が生えて、兜をかぶって歩いてるカンジ!
でも騎士にしては剣とか槍を持ってないなぁ~? 確かにでっかいけど、これで戦えるのかな?
……なんて思ってたけど、無用な心配でした。
超巨大な騎士像は、おもむろに両腕を持ち上げたかと思うと、先端をまっすぐ上に向けて伸ばしてみせた。
すると次の瞬間、腕の先端部分から轟音とともに無数の光の矢が発射されたのが見えた。
「え、えぇぇえ……手からビームだすのぉぉ!?」
「うん、凄い。発想が凄いわ、お姫様。ゴーレムとか作らせてみたいわ」
驚きと感心を隠せない私たちのはるか向こうで、笑っちゃうくらい慌ててる人影が見える。
「な、何だこれはーーーーーーーーッッ!?」
大口を開けて絶叫をあげる王様だったが、まるで打つ手なし。
発射された大量の光の矢は天高く上空へ舞い上がったかと思うと上空で急旋回し、数秒後には勢いよく地面へと降り注ぎ始めた。
まるで超大量の流れ星が、次々と落下してくるかのような光景!
着弾点にいた騎士さんたちは膨張した光により弾き飛ばされるかのように、あちこちで空中を舞っていた。
「ぎゃあああああああああああ!?」
「うひゃあああああああああっ!?」
「ほげええええええええええ!?」
もはや阿鼻叫喚の地獄絵図のような有様だけど、クエリちゃんの夢はどうやらまだまだ終わりそうにない。
巨大なままの『もや』から、次々と具現化した夢の登場人物が這い出てきている。
まず、先端が丸くなっている木製の超巨大包丁。これはきっとおままごとで使ってるオモチャかな。
空中で止まったと思ったら、まるで誰かが操っているかのように騎士さんの列を微塵切りし始めた、ひえぇぇええぇ。
次に出てきたのは、カラフルなボール。
てんてんとバウンドしているだけかと思ったら、一度着地するごとに騎士さんを確実に一人ずつ踏み潰して地面にめり込ませていた、ひょぇぇええぇぇ。
さらに、青い正八面体のような積み木が出現したと思ったら、角からビームを発射し始めた。
あっ、これ私見たことある! 荷粒子砲を発射するタイプのやつだ!
包丁とボールと積み木から運よく逃れられた騎士さんもいたようだったが、そんな人は最初に出現したクマさんの地面スレスレ薙ぎ払いラリアットを食らってあえなくリタイアしていた。
完全なる形勢逆転。
私たちを追うために真夜中のノルトアイルまで駆けてきた騎士さんたちは、クエリちゃんの夢が生み出した『おかあさんガーディアンズ』によって残らず地に伏せるコトとなった。
これ、全部クエリちゃんが『おかあさんを守りたい』という一心で生み出した夢の住人だよね。
クエリちゃんのお母さんを想う気持ちの大きさを感じ、私は思わずじーんとしちゃった。
それにしても……たった一人の女の子が見た夢が具現化しただけで、王国の誇る騎士団が全滅しちゃうんだね。
夢は具現化させたまま放置してはいけないと、改めて学ぶコトができました。
幻獣とペアを組んで昏睡魔法を使う予定の方は、くれぐれも注意してくださいねっ!
「こ、こんな……こんな事が……バカなっ! バカなぁぁっ! ぬぐううぅぅぅっ!!」
気付けば月夜の丘に立っているのは、王様ただ一人になっていた。
クマさんのボディプレスも、騎士像の光の矢も、巨大包丁の微塵切りも、奇跡的に王様を避けている。
もしかして……クエリちゃんが無意識のうちに、お父さんである王様を標的から外してたのかな?
なんにせよ、チャンスだっ!!
王様の周辺に、騎士さんたちの姿はもう無いっ!
「よぉし、ピルタ。最後の仕上げといこうぜ。昏睡魔法、あと1発撃てるか!?」
ふわりと上空から舞い降りてきたネムちゃんは、私の横に着地するなり問いかけてきた。
具現化魔法を使い続けているせいか、全身が淡く紫色に光り続けている。
うーん、幻想的でカッコいいなぁ。
私は期待に応えるべく、全身に意識を集中させ残った魔力を指先へとかき集めた。
「うんっ! 準備おっけー、いつでもオッケー! ネムちゃんのタイミングで言ってもらっていいからねっ!」
「よし、じゃあお姫様の夢の具現化を解除したら、一発頼むぜ!」
「はーーーーいっ! まかせてちょうだいっ!!」
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