アルトリアの花

マリネ

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序章

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暗闇の森を、漆黒のフードを深く被った青年は迷いなく進んでいた。
周りの木々の影には得たいも知れぬ獣の気配を感じるものの、青年のただならぬ気配を察してか、息を潜めている。
森の中心に位置する朽ちてきている巨木の根までやって来ると、青年はフードをさっと払った。
闇夜に溶け込むような髪とは対照的な色白な素肌、整った容貌、何かを決したような決意さえ感じ取れる青き双眸が輝いていた。
「久しいな。精霊王。」
青年の声に反応するように、巨木の根はぼうっと白く光る。
「その瞳。『精霊に厭われし者』か。」
「懐かしいだろう。今の名はソウディックという。お前リュクスをどこに隠した。」
巨木の光は淡く揺れながら、長身の男性の姿へとかわる。
精霊王は長い髪をなびかせながら、無言のまま首を左右にふった。
「あれは私の加護をすり抜けるのを知っているだろう。」
「そんな言い訳は通じない。やっとお前の居場所を探り当てたんだ。この森を焼いてでも教えて貰うぞ。」
ソウンディックはにやりと笑みを浮かべると、指先を精霊王へと向ける。
そこには小さく揺らめく灯火が宿っていた。
「精霊に厭われているにも関わらず、術を使うすべを手にいれるとは。相も変わらず身の程しらずな。」
観念したと手を振り、ため息をつく。
人が人間という種族を超えた力を欲したとき、努力や友愛、契約によって力を貸してくれる者がいる。
精霊や魔物と呼ばれているが『精霊に厭われし者』は、その恩恵を受けられない。
ソウンディックは、その難点を克服していた。
「そうまでして光を手に入れたいならば、何故今まで放って置いた。」
「うるさい。こちらにも事情があるんだ。」
灯を消すと、面倒くさそうに髪をかき上げる。
精霊は心や精神に素直な分、人の心の見られたくないところを突いてい来る。
「人の理はいつも煩わしいもの。良かろう、あれに付けた者からの連絡も途絶えている。お前が迎えに行くと良い。」
微笑みを浮かべた精霊王の姿が、煙のように揺れ始める。
「おい、どういう事だ。」
「急げ。辺境へ。」
すうっと精霊王だった光の塊は、東の空へと消えていった。
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