ほどけそうな結び目なのにほどけないね

圍 杉菜ひ

文字の大きさ
3 / 5

第3話 雷の音が鳴り響いて!

「ったれ」

 小声とは言え、思わず汚い言葉が漏れてしまった。だが仕方がない。

 午後の授業中、晴天で気持ちの良い天気ではあったけど、ゴロゴロと教室中に響く音。「先生、ゲリラ豪雨かも」とか「傘持ってきてない」などなど、急激な天候の変化を心配して窓の外に視線を送る生徒が多数。授業に集中できないほどの音が鳴り響くため私は居ても立っても居られなくなり、震えながら右手を上げようとした。

日比ひびさん、聞こえてる? 体調が悪いのであれば保健室に行ってみてはどうかしら?」

 私が手を上げるよりも先に先生が私のSOSに気付いたようだ。そう、教室中に鳴り響く音は雷の音ではなくて私のお腹が急を要していただけ。

「すみません。日比 津賀子、行ってきます」

 走れば何かが崩壊しそうなのでゆっくりと席を立ち、とても小さな歩幅でゆっくりと教室を出る。

 私が教室を出て扉を閉めると、教室内から「雷の音が少しだけ離れて行った」「このまま晴れをキープしてくれ」などと言う声が聞こえ、なんだか申し訳なさと恥ずかしさを感じた。

 授業中なので廊下に出てしまえば見ている人はいない、多少なりとも変な格好をして歩いても問題はない。

 背筋をピンと張り、肛門が油断しないように両手でがっちりお尻を圧縮。時折変な声が漏れたり、顎に首筋、そして太ももに普段とは違う力を入れつつ私は一歩一歩トイレを目指した。だが、辿り着いた楽園の光景に私は落胆した。

「し、使用中?」

 すべてのトイレのドアが閉まっている。授業中にこれだけの人がトイレを利用していることがありますか普通。

「津賀子さん。そこに居るのですか?」

 苦しみと衝撃で放心状態だった私を我に返したのは、ソナタさんの声だった。

「津賀子さん、お腹を下したのですね」

「ソナタさんもお腹を?」

「恐らくですが、私の手に付着していた細菌が原因かと考えています」

「……」

 手に付着していた細菌。あいつの指……なんかモヤっとした感じになったけど、今はそんなことはどうでもよくて。

「津賀子さん、私はすでに長居しましたので今から出ますね」

「大丈夫、私は頑張って下の階に行くから」

「いいえ津賀子さん、ここを使ってください」

「そう、じゃあ」

 彼女は頑固者なので、ここで譲り合っていても時間の無駄。今は急を要しているので従った方が賢明である。出てきたソナタさんは口元を抑えながら苦しそうにも見えたけど、私にも余裕がないだけに謝りつつトイレに入った。慌ててトイレの便蓋を開けるとそこには溢れんばかりの……その光景に私が呆然としているとドア越しにソナタさんが話しかけてきた。

「津賀子さん、私のう〇ちはどうでしょうか?」

「お前、快便じゃねーか」

「誤解です、津賀子さん。最初はちょっとだけ水状だったのですが、途中からスッキリと出たのです」

「それは快便なんだよ」

 溢れんばかりのう〇ちは水を流しても予想通り詰まった。私は頬をピクピクと引きつらせながら懸命にラバーカップを押して引っ張ってを繰り返し、他人の立派なう〇ちと格闘した。そもそもラバーカップがこの場に用意されていることが引っかかるがな。

「うわぁーん、きたなぁーい」

「津賀子さん、汚いは失礼です。そちらのう〇ちを褒めていただけませんか?」

「話しかけるな」

「津賀子さん」

「はいはい立派ですよ。こんなう〇ちには滅多に遭遇できないくらいの大きさね。快便で羨ましいこと……ただ、私はあんたのう〇ちを見るためでも掃除しに来たわけではないからね」

 全然流れない他人のう〇ちの片付けしているよりも、他のトイレが空いている可能性があるから移動した方が早いかもしれない。私は出ようとドアを開けようとしたがびくともしなかった。

「あんた今ドア押さえてるでしょ? 離れなさい。私は限界が近づいてんのよ」

「せっかく私が途中で譲ったのですから、そこで済ますべきですよ津賀子さん」

「お前は、悪魔の使いかなにかなのか?」

 私が間に合ったのか間に合わなかったのか……それは内緒にしておこう。

 ――ったれが。
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

ワシの子を産んでくれんか

KOU/Vami
ライト文芸
妻に先立たれ、息子まで亡くした老人は、息子の妻である若い未亡人と二人きりで古い家に残された。 「まだ若い、アンタは出て行って生き直せ」――そう言い続けるのは、彼女の未来を守りたい善意であり、同時に、自分の寂しさが露見するのを恐れる防波堤でもあった。 しかし彼女は去らない。義父を一人にできないという情と、家に残る最後の温もりを手放せない心が、彼女の足を止めていた。 昼はいつも通り、義父と嫁として食卓を囲む。けれど夜になると、喪失の闇と孤独が、二人の境界を静かに溶かしていく。 ある夜を境に、彼女は“何事もない”顔で日々を回し始め、老人だけが遺影を直視できなくなる。 救いのような笑顔と、罪のような温もり。 二人はやがて、外の世界から少しずつ音を失い、互いだけを必要とする狭い家の中へ沈んでいく――。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…