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椎名

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消えた友人

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 うそだ。そんな。でも。


「じゃあ、教頭先生が犯人……?」

「まだ断定はできねぇよ。学校に忍び込むくらいなんだから、ピッキングくらいできる奴かも知れねぇだろ」


 ピッキング……ドラマとかで見る、ピンで鍵開けたりするやつか。


「ヒント二、失踪した生徒達は確かにその犯人に襲われたんだろう。じゃあ、何故犯人は生徒達が侵入してくる日を知ってたんだろうな?」

「……え、」


 そっか。いつもいつもいるわけじゃないもんね。


「…………わかりません」

「誰かがそいつに教えていたからだ」

「えっ! じゃあ犯人は二人!?」


 そんなの、捕まえられっこないじゃないか!

 思わず身を乗り出す。


「だから、もう少し考えろ。犯人かどうかはわかんねぇが、協力者ではある。じゃあその目的は?」

「うええ……? そんなのわかりませんよお……」


 夜の学校に忍び込む意味もわからないのに、わざわざそれを助けるようなやつの考えなんて、わかるわけがない。


「まあ確かに、これは俺も調べるまでは解んなかったからな。じゃあ別のヒント。実は夜中に男の不審者が出る、て噂の前にもう一つ噂が合ったんだ。わかるか?」


 噂の前の、噂?


「……いえ」

「“夜の学校に子供が忍び込んでいる”」

「へ? でもそれって……」


 男の噂を聞いて忍び込んだ生徒のことじゃ?
 だが、それでは男の噂の前にあるのはおかしい。


「そう。ここで俺達は勘違いをしたんだ。怪しい子供は生徒なんかじゃない。また別もんだ」


 思わずあんぐりと口を開けて頭を抱えてしまった。

 それじゃあ不審者は二人いる事になるじゃないか!


「うう……頭がこんがらがってきた」

「……ふ、ゆっくり考えろ」


 くしゃ、と優しく髪を撫でられる。

 ……また子供扱いか。
 いや、まあ、こんなしがみついて歩いているだなんて子供同然だけれど。


 ――あれ? そういえばこれ、何処に向かってるんだ?

 先程から時政は、僕に語りかけながらも迷いなく足を進めている。

 ……もしかして、犯人の居場所がわかってる?

 チラリと時政を伺って見ると、表情は見えないがやはり迷いはないように思えた。


(やっぱり、この人には未来が見えているのかも知れない)


 ……なんて、馬鹿げているけれど。


「じゃあ次のヒント。仮に教頭がその怪しい男としよう。なら目的は?」

「……え、」


 教頭先生の目的……

 そもそもあの優しい教頭先生がそんな奇妙な事を、ましてや佐竹達を襲ったなんて信じられない。


「……わかりません。だってあの教頭先生ですよ? 目的なんて……」

「こうは考えられねぇか? その子供の噂を聞いた熱血な教頭先生は、生徒と勘違いし、捕まえようとする。しかし捕まらない。次の日も捜す。が、捕まらない。……そして、それを繰り返している内に不審な男として噂が上がってしまった。――――そうですよね? 教頭先生?」

「っ!?」


 ガラッ!

 時政が、いつの間にか目前に迫っていた家庭科室のドアを力一杯引いた。


 そこには――――





「…………教頭、先生……」

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