日常

綾瀬雲母

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 筆を取るまでにこんなにも長いこと時間が空くとは思わなかった。ただ、いつかの自分のため、あの日の自分のためにも、今の自分を記録しておこうと思う。
 あれから、もう5年が経った。新卒の僕の焦燥の書き込みを見て、時間は本当に残酷に、正確に進んでいくんだと感じる。
僕はというと、あの日の自分とは何もかもが変わっていて、それでもまだその隅々に未だ変えられない卑屈さを抱えているんだと思う。
 あの頃の自分について、今の僕にはないものを確かに持っていたこと、少し羨ましいと思う。あの頃に戻ってやり直すことは、きっともうできない。
色々なものが手のひらからこぼれ落ちていった。恋人も年齢もその一つ一つに過ぎない。都会の暮らし、二人で選んだ部屋、確かに色鮮やかな響きだけれど、22の僕の1年は、僕のこれまでで一番壮絶な日々だったんじゃないか?
だけど、あの頃の僕が、山手線の通勤ラッシュ、残業帰りの人身事故、もういっそ自分が飛び込もうとしたあの日投げ出せなかった僕自身が今の僕を作っている。
この5年、無くしたものは多い。
でも無駄に過ごした時間じゃなかった。
間違いもあったと思う。
でも、前に進もうと思える日々だ。
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