僕らが吐いた息がいつか世界の風になるように

綾瀬雲母

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夢のなかの景色

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いつの頃からだったかあまりよく覚えていない。
気づけば僕の脳裏に焼き付いた思い出の景色がある。

だけど僕はそんな場所に行った記憶はないし、実際にそんな場所は僕から見えている世界のどこにも無い。
ただ、その景色は僕が打ちひしがれた時、どこか遠くに行ってしまいたいと思うその時々に僕の心に映し出される。
まるで僕がそこを目指して生きているのかと思うときもあるどこか懐かしさの混じる美しい景色なのだ。

 その世界は夕暮れのなんとも言えない美しい薄紫色に染まっていて視界には静かなビル街とどこまでも続く海がある。そして海には水平線まで続く鉄筋コンクリートの真っ直ぐな道路が伸びている。道路の両端に均整に取り付けられた街灯が水平線に至る道を照らしている。その世界の中に僕はいない。僕はその景色を絵画を見るのと同じように見入っている。その世界には今のところ誰一人として人物は目に入らず、ただただ美しい夕映えと夜の境目に白いビル街と海が照らされている。
静止しているわけではない。ただゆっくりと景色は動いている。けれどその夕陽は沈まないまま夕暮れの空を映した海は穏やかに凪いでいる。
決して誰も干渉することのできない成立した美しさを見ているように感じる。
これは僕の中の景色で僕だけのたった一つの景色で僕はいつか、ここに行きつきたいのだ。僕に関係する人たち、知人とか親戚とか近くにそういう人たちがいなくなって愛する人とも最期の別れをして僕自身にもとうとう終わりが来て僕のこの体ももう僕のものじゃなくなったその時ぼくはここに辿り着くのだ。そして僕はこの景色の一部になるのだ。この街のたった一人の住人に。

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