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転生編

The Heat Goes On

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「トスター、メレオ、ゲッコ!そいつらを放してやれ」

「はっ!」

 ヒカルが命じると、亀のトスターはテルとリコの背から降り、カメレオンのメレオとヤモリのゲッコは二人に巻き付けていた尾の拘束を解く。

「そいつらのした事は悪かったよ。 だが、修行の邪魔されたくなかったんでな」

 ヒカルはテルを宥める様な手振りで言う。 橙色の眼には縦長の瞳孔があり、目の下から頷にかけてのラインは鱗に覆われている。 そして、深緑色の髪はコブラのフードを思わせる形であった。

「……おまえ、 巳年の干支乱勢か!?」

 テルが問う。巳年という言い方を用いたのは、彼女が日本出身であるが故だ。

「ああ。その通り巳《レプタ》の干支乱勢だ。名をヒカル……ヒカルド・マエダ・シウバ。お前らは?」

 ヒカルは口から先端の割れた舌をチロチロとのぞかせ、 鱗に覆われた尾の先端をガラガラと鳴らしながら小刻みに震わせる。その不気味さを孕んだ眼差しに、ネズミと鳥の干支乱勢であるテルとリコは、ぞわりとした寒気を背筋に感じた。

「俺はテル。元の名は星野輝臣、プロレスラーだった」

「僕はリコ。リカルド・ムチョス・ゴンザレス。ルチャドールだよ」

 テルとリコの自己紹介を聞いた後、 ヒカルは一瞬目を丸くした。刹那、プッと息を吹き出した。 そして・・・・・・

「ククッ……ハハハハハハ!プロレスだと!?」

 大声で笑い出した。

「何がおかしい!」

 突然笑い出したヒカルに対し、 テルは問う。

「何がって、プロレスってのはショーだろ?ルチャってのはピョ ンピョン跳び回る曲芸だったな」

 笑って目尻に泪を溜めたヒカルに対し、テルとリコは拳を握り込み、 睨み付ける。

「ロープに振ったら跳ね返ってくる……コーナーの上から跳んでくる奴を避けない……相手の協力が無いと成立しない技……オマエたちは闘技者じゃあない。役者だ。真剣勝負のトーナメントには場違いなんだよ」

「てめえっ!!」

 テルは思わずヒカルに掴みかかろうとしたが、

「よせ、テル!」

 リコがその手を掴み、止めた。

「そっちのリカルドってメヒカーノは賢いようだな。 オレと同じ字の名前 (Richard) なだけあるぜ」

 ヒカルは更に挑発する様に言う。

「お前のマエダって姓は日系人か?サムライの血は地球の裏側で随分と陰湿になったみたいだな。大和魂が泣いてるぜ」

 テルとヒカルは至近距離で睨み合う。

「トーナメントで決着を着けてやるよ、ヘビ野郎!何の技でやられたい?コブラツイストか?アナコンダバイスか?」

「うるせえ。丸呑みにしてやるぜ日本《ハポン》のドブネズミが!!………トスター、帰るぞ!」

 ヒカルはテルと距離を取った後、お供のレプタ人達に命じる。

「はっ!」

 トスターが持っていた杖を掲げ呪文を唱えると、 巳国の4人は一瞬で姿を消した。

「…………僕らも各々の国に戻ろう」

「ああ......」
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