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大会編
超格闘王のテーマ
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干支乱勢大武繪が敗者に人としての生を放棄させる死亡遊戯 (デス・ゲーム)と判明し、各国の干支乱勢達に更なる緊張が走る中、第2仕合となるBブロック一回戦が始められようとしていた。
『卯《ヘア》、ピエレ!!』
開会時と同じくタンクトップにファイトショーツ、両手にオープンフィンガーグローブという出で立ちで登場したのは卯国の干支乱勢ピエレことピエール・ド・ゴール。かつては「暴君」の異名で暴れ回った猛者である。
『さてヒナコさん、ピエレ選手の使う格闘技“サバット"ですが、これは一体どんなものなのでしょうか?』
『サバットはね、蹴りも投げも、武器術すらもある総合格闘技だよ』
サバットの発祥は古く、フランスにおいてブルボン朝時代には体系化されフランス革命時に広まったとされる。
基本的にボックス・フランセーズという拳と蹴りによる打撃中心のスタイルで闘うが、そこへ更に投げや関節技を加えたリュット・パリジェンヌ、杖 (ステッキ) を用いた武器術ラ・カンが加わった複合武術。それがサバットである。
『亥《バビルサ》、ウィン!!」
ピエレがリングインすると、次に入場してくるのは亥国の干支乱勢、ウィン。上はピエレと同じくタンクトップだが、下はキックボクシング用のトランクス。
『ウィン選手はラウェイなる格闘技の使い手との事ですが、これまたどういったものなのでしょう?』
『ラウェイはねぇ、別名をムエカッチュア。基本的にパンチとキックで闘うのはサバットやカラテ、キックボクシングなんかと同じなんだけど、ラウェイは他の打撃格闘技では禁じ手とされる攻撃が使えるんだよ』
ラウェイ。ミャンマー発祥のこの格闘技は隣国タイの格闘技「ムエタイ」と同じ起源を持つとされる。
しかし、ムエタイが打拳、蹴り、そして肘打ちのみを攻撃手段として認めているのに対し、ラウェイは頭突きや投げ技、更には立った状態での関節技までもが認められているのだ。
そして、過激なのはルールだけではない。殆どの打撃を伴う格闘技において、自らの拳を保護し、また相手の怪我等を防止するためにグローブや拳サポーターを着装するのだが、ラウェイにはそれが存在しない。 裸拳ないしバンテージを巻いただけの状態で殴り合うのだ。
『なるほど、ラウェイがいかに過激な格闘技であるかが解りました』
『過激さで言えば、ピエレの生前も過激だよ』
卯の干支乱勢ピエレことピエール・ド・ゴール。 生前の彼はサバットの全仏王者からキャリアをスタートし、キックボクシング、MMAといった格闘技のプロ大会で頭角を現して来た。が、彼には格闘家として大きな問題があった。
それは高すぎる暴力性である。ルールの抜け穴を利用した反則すれすれの行為、事故に見せかけ相手の目を突き失明させる、相手がタップ(降参)しても関節技を掛け続け故意に脱臼や骨折をさせる、体にオイルを塗布し組ませなくする、挙げ句の果てにはドーピング等。
これには各種格闘技団体やスポンサーも難色を示した。特にテレビ放映やネット配信を行う上で健全なるスポーツ性が重んじられる中、ピエールの居場所は表の格闘技界には無くなってゆく。
最終的に彼の行き着いた先は「裏」や「地下」と呼ばれる格闘技界だった。過激なルール、犯罪歴まみれの闘技者、違法な収益のプール先として行われる賭博試合……しかし、それすらも刺激として楽しんだ男こそがピエール・ド・ゴールなのだ。だが、ある日彼はドーピングの酷使により帰らぬ人となる。享年35歳。 ピエールは闘いの人生を楽しみきらずに終えたのだ。
「へへへ、生き返るのは俺様だ!こんなガキみてえな体と何もない世界じゃ楽しくねえからな!!まずは“ムエタイもどき”、テメエから血祭りだぜぇ」
ピエレは対峙するウィンに向かって両手の中指を立てる。
「煩悩と愉悦のみに生き、あの世たる此処へ来てまでそれを願うか。くだらんな」
ウィンは拳を握り、構えた。
『それでは開始《はじめ》ぇ!!』
審判ゴーレムはゴングの音を響かせた。
『卯《ヘア》、ピエレ!!』
開会時と同じくタンクトップにファイトショーツ、両手にオープンフィンガーグローブという出で立ちで登場したのは卯国の干支乱勢ピエレことピエール・ド・ゴール。かつては「暴君」の異名で暴れ回った猛者である。
『さてヒナコさん、ピエレ選手の使う格闘技“サバット"ですが、これは一体どんなものなのでしょうか?』
『サバットはね、蹴りも投げも、武器術すらもある総合格闘技だよ』
サバットの発祥は古く、フランスにおいてブルボン朝時代には体系化されフランス革命時に広まったとされる。
基本的にボックス・フランセーズという拳と蹴りによる打撃中心のスタイルで闘うが、そこへ更に投げや関節技を加えたリュット・パリジェンヌ、杖 (ステッキ) を用いた武器術ラ・カンが加わった複合武術。それがサバットである。
『亥《バビルサ》、ウィン!!」
ピエレがリングインすると、次に入場してくるのは亥国の干支乱勢、ウィン。上はピエレと同じくタンクトップだが、下はキックボクシング用のトランクス。
『ウィン選手はラウェイなる格闘技の使い手との事ですが、これまたどういったものなのでしょう?』
『ラウェイはねぇ、別名をムエカッチュア。基本的にパンチとキックで闘うのはサバットやカラテ、キックボクシングなんかと同じなんだけど、ラウェイは他の打撃格闘技では禁じ手とされる攻撃が使えるんだよ』
ラウェイ。ミャンマー発祥のこの格闘技は隣国タイの格闘技「ムエタイ」と同じ起源を持つとされる。
しかし、ムエタイが打拳、蹴り、そして肘打ちのみを攻撃手段として認めているのに対し、ラウェイは頭突きや投げ技、更には立った状態での関節技までもが認められているのだ。
そして、過激なのはルールだけではない。殆どの打撃を伴う格闘技において、自らの拳を保護し、また相手の怪我等を防止するためにグローブや拳サポーターを着装するのだが、ラウェイにはそれが存在しない。 裸拳ないしバンテージを巻いただけの状態で殴り合うのだ。
『なるほど、ラウェイがいかに過激な格闘技であるかが解りました』
『過激さで言えば、ピエレの生前も過激だよ』
卯の干支乱勢ピエレことピエール・ド・ゴール。 生前の彼はサバットの全仏王者からキャリアをスタートし、キックボクシング、MMAといった格闘技のプロ大会で頭角を現して来た。が、彼には格闘家として大きな問題があった。
それは高すぎる暴力性である。ルールの抜け穴を利用した反則すれすれの行為、事故に見せかけ相手の目を突き失明させる、相手がタップ(降参)しても関節技を掛け続け故意に脱臼や骨折をさせる、体にオイルを塗布し組ませなくする、挙げ句の果てにはドーピング等。
これには各種格闘技団体やスポンサーも難色を示した。特にテレビ放映やネット配信を行う上で健全なるスポーツ性が重んじられる中、ピエールの居場所は表の格闘技界には無くなってゆく。
最終的に彼の行き着いた先は「裏」や「地下」と呼ばれる格闘技界だった。過激なルール、犯罪歴まみれの闘技者、違法な収益のプール先として行われる賭博試合……しかし、それすらも刺激として楽しんだ男こそがピエール・ド・ゴールなのだ。だが、ある日彼はドーピングの酷使により帰らぬ人となる。享年35歳。 ピエールは闘いの人生を楽しみきらずに終えたのだ。
「へへへ、生き返るのは俺様だ!こんなガキみてえな体と何もない世界じゃ楽しくねえからな!!まずは“ムエタイもどき”、テメエから血祭りだぜぇ」
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