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復活編

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─202×年4月某日、後楽園ホール

 この日、真日本プロレスの興行にてアトラス星野の引退試合が行われる事となった。
 星野輝臣50歳、まだまだ現役でやれるだろうという声も多かったが、1周目の人生ではリング禍により不本意ながら闘いの舞台から退いたのだから、生きてリングを降りられるだけでも星野にとっては幸せな締め括りである。

 メインイベントに据えられたアトラス星野引退試合のカードは対戦相手がX(未発表)となっていた。ファンの間でXの正体が誰なのか、様々な予想が飛び交う。同期である第三世代の誰か?星野に憧れ入団したジョニー・オズマか?それとも盟友であるスペル・リンピオか?その答えはこれから始まる試合で明らかとなる。

 鳴り響く星野のテーマ曲。ここで、会場の誰もが違和感を抱く。

『引退試合だというのに、星野が先に入場するという事なのでしょうか?ん?入場してくる星野の隣に誰かいますね……』

 実況の言うとおり、いつものTシャツに黒パン姿の星野が一人の若者を帯同して入場する。若手がセコンドであればジャージ姿であろうものだが、彼は黒パン一丁。これから試合でもする様な出で立ちである。
 二人は同時にリングインすると、星野が赤コーナー、若者は青コーナーへと別れる。 

「ただ今より本日のメインイベント、アトラス星野引退試合兼、星野晴光《ほしの はるみつ》デビュー戦を行います!青コーナー、180cm88kg、星野~~晴光~~!!」

 星野の息子である晴光は一礼する。

「赤コーナー、身長190cm110kg、アトラス~~星野~~!!」

 お馴染みの右手を突き上げるポーズの後、星野は脱いだTシャツを観客席に放り投げた。 

『本日デビューのヤングライガー、星野晴光はお察しの通りアトラス星野の息子です。父に憧れプロレスラーを目指したという春光!ですが、その父が引退を決めた為、自身のデビュ一戦にして父の現役最後の相手を務める事となりました!!最初で最後の親子対決、今ゴングが打ち鳴らされます!!』



 結果は10分40秒、アトラス・ボムからのボストンクラブでアトラス星野の勝利であった。アマレス五輪金メダリストにしてこの道25年の大スターは満足そうにリングを去った。

 10カウントゴングの後、リングアナウンサーが再びコールする。

「身長190cm110kg、『ザ・ゴールデンスター・アトラス~~星野~~!!」
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