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個性沢山作りました《一日目》

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 調合を終えポーションを作り終えた俺は、アイテムを複製できるような個性である『複製』の上位個性である『完全複製』なる個性を作り出し、一応無限に増えるポーションを作り上げることに成功した。しかし、問題は山のようにある。
 「調合はレシピも全部分かるし、あとは素材だけがあればいいんだな」
 調合に関しては調合のレシピが分かる個性により、心配することはなくなった。しかし、調合をするにしても素材が必要。素材はモンスターを狩れば大まか手に入るが、解体個性等がないと多くは取れない。また、戦闘についても今のままでは魔法でしか戦えないので、慣れない戦闘となってしまう。そこでだ、
 「俺がまたこの世界で生きていく為に必要な個性を創造していきたいと思いまーす」
 単純に必要最低限の個性を作るのが取り敢えず今日の残りの半日くらいと、明日の目標にしようと思う。幸いなことに、衣食住の全てが取り敢えずは確保されているから、じっくりと考えに耽れる。食糧は当分スライムゼリーになってしまうが、必要最低限の空腹は満たせる。水は水魔法があるから大丈夫だし、服も着替えはないが前世での革装備一式がある。住む場所も、決していいとは言える場所ではないが、簡易式の小屋がある。転生してきて一日と半日でここまでやれているのだ、出だしは上々だろう。
 《キルビリス様へ提案致します》
 と、ここで頼りになる声のアナウンスが聞こえた。
 《本日の残りの時間で補助系統の個性を創造、明日の午前に身体系統の個性を創造、明日の午後は狩りを含めた攻撃系統の個性の創造のように、時間ごとに区切るのはどうでしょう。ある程度の補助系統の個性が作れてしまえば、その後の身体系統、攻撃系統はゆっくりと創造なさればよろしいかと》
 「ふむふむ……、確かに無闇矢鱈に個性だけ作っていっても思いつくのが億劫になるな。だったら、似ているような個性ごとの系統で作るのが賢明な判断だな。よし、その提案乗った」
 個性はある程度の自由さが許容されている。俺の魔法のように、ある程度の誤差が生じても補正が掛かるからだ。ならば、取り敢えずで個性を揃えるにしても系統ごとに分けるのはいいかも知れない。
 「よし、ならまずは補助系統の個性だな。でも、補助系統っても沢山あるよな……。補助系統って例えばどんな物がある?」
 《身体系統に若干含まれてしまう個性もありますが、例として各種耐性系、道具系、アイテム系、地図系、生活系等の個性だと思われます》
 「そうだなぁ、まぁ、取り敢えず補助系統の作れる個性を作っていくか。でさ、作る時は一つ一つ作るのか、俺がまとめて言ったやつを作るのか、叡智の声さんが自動で作るのかどうしようか」
 《個性の創造につきましては、主にキルビリス様が創造されたい個性を言ってくだされば、私がそれに加えて有用な個性も加えて創造、統合致します》
 「それなら安心だな」
 補助系統でやっぱ真っ先に作るとしたら、耐性系の個性だな。これがあるのと無いのとじゃ雲泥の差が生まれてくる。
 「まずは、耐性系だ。大雑把にしか言わないけど、作る時は細かくなってもいいから任せるわ。んで、まずは物理耐性と魔法耐性。これがないと攻撃全般のダメージが違うからな」
 こうして俺は地獄の地獄の個性を言い続けるという苦痛の作業を始めたのだった。
 「続けて、各種属性耐性、状態異常耐性、抵抗力とかの症状が出るのを防ぐ感じの個性」
 《個性『斬撃軽減』、『刺突軽減』、『打撃軽減』、『貫通軽減』、『落下軽減』、『風圧軽減』、『振動軽減』、『魔力抵抗』、『火属性攻撃軽減』、『水属性攻撃軽減』、『氷属性攻撃軽減』、『雷属性攻撃軽減』、『土属性攻撃軽減』、『風属性攻撃軽減』、『光属性攻撃軽減』、『闇属性攻撃軽減』、『毒軽減』、『酸軽減』、『麻痺軽減』、『睡眠軽減』、『混乱軽減』、『気絶軽減』、『石化軽減』、『火傷軽減』、『温熱耐性』、『凍傷軽減』、『寒冷耐性』、『盲目軽減』、『腐食軽減』、『痛覚軽減』、『精神攻撃軽減』、『抵抗力上昇』、『速度低下軽減』、『攻撃力減少軽減』、『防御力減少軽減』、『継続ダメージ軽減』を創造致します》
 「多いな、けどまだまだあるぞ。次は地図だな、あとは道具とか装備の扱い方と知識。これがあればある程度の装備は装備できるようになるはず。その他色々な知識があると尚更いいね」
 《続けて、個性『地形知識』、『気象知識』、『地図』、『脳内地図』、『自動マッピング』、『地名知識』、『一般道具知識』、『一般魔道具知識』、『一般武器知識』、を創造致します》
 「後は、料理の個性とか?」
 《個性『調理知識』、『調理具知識』、『調理レシピ』、『簡易調理』、『調理効果付与』、『調理効果上昇』、『魔物調理』、『神族調理』、『調理時間短縮』、『調理効率上昇』を創造致します》
  「最後の区切りとして、生活に困らないような個性。例えば、言語理解とかは大切だよな。これがないとドワーフやらエルフとかとも話せないし。後は……んー、あっ! 探知とか隠密とかのそこら辺がないと戦う以前の問題になる!」
 《でしたら、個性『他種族言語学習』、『他種族言語理解』、『計算知識』、『理論知識』、『理論頭脳』、『思考力上昇』、『思考速度上昇』、『思考加速』、『同時思考』、『暗記』、『気配感知』、『魔法感知』、『意識感知』、『熱探知』、『危機察知』、『振動感知』、『生命感知』、『罠察知』、『魔素遮断』、『魔力遮断』、『気配遮断』、『消音』、『隠密』、『影探知』、『解体知識』、『簡易解体』、『肉体構造把握』、『解体道具知識』、『解体時間短縮』、『解体品質上昇』を創造致します》
 「取り敢えずこれくらいにしよう。統合とかもしてくれていいからさ俺は少し待機するわ」
 《かしこまりました。では、各種個性の統合に移ります。個性の想像は完了致しておりますので、開始致します。まず、個性『斬撃軽減』、『刺突軽減』、『打撃軽減』、『貫通軽減』、『落下軽減』、『風圧軽減』、『振動軽減』を統合し、個性『物理軽減』を創造致します。創造中……創造完了。続けて、個性『魔力抵抗』、『火属性攻撃軽減』、『水属性攻撃軽減』、『氷属性攻撃軽減』、『雷属性攻撃軽減』、『土属性攻撃軽減』、『風属性攻撃軽減』、『光属性攻撃軽減』、『闇属性攻撃軽減』、『精神攻撃軽減』を統合し、個性『魔法攻撃軽減』を創造致します。創造中……創造完了。続けて、個性『毒軽減』、『酸軽減』、『麻痺軽減』、『睡眠軽減』、『混乱軽減』、『気絶軽減』、『石化軽減』、『火傷軽減』、『温熱耐性』、『凍傷軽減』、『寒冷耐性』、『盲目軽減』、『腐食軽減』、『抵抗力上昇』、『速度低下軽減』、『攻撃力減少軽減』、『防御力減少軽減』、『継続ダメージ軽減』を統合し、個性『状態異常軽減』を創造致します。創造中……創造完了。続けて、個性『地形知識』、『気象知識』、『地図』、『自動マッピング』、『地名知識』を、個性『脳内地図』へと統合致します。統合中……統合完了。続けて、個性『調理知識』、『調理具知識』、『調理レシピ』、『簡易調理』、『調理効果付与』、『調理効果上昇』、『魔物調理』、『神族調理』、『調理時間短縮』、『調理効率上昇』を統合し、個性『調理ノ心得』を創造致します。創造中……創造完了。続けて、個性『他種族言語学習』、『他種族言語理解』、『計算知識』、『理論知識』、『理論頭脳』、『思考力上昇』、『思考速度上昇』、『思考加速』、『同時思考』、『暗記』を、自律型上位個性『叡智の声』へと統合します。統合中……統合完了。また……》
 「んー……長いなぁ」
 俺は同時進行で流れているアナウンスが終わるまでの暫く間、色々な個性の能力を片っ端から眺めて時間を潰すことにした。

 膨大なアナウンスが流れ終わったのは個性を作り始めてから日がかなり傾いてからだった。俺の頭の中では既に新しい個性の情報が目まぐるしく回っているのだが、新しい個性のお陰で何処と無く理解ができた。
 《個性の創造、統合が完了致しました。》
 「おう、サンキューな。にしても、耐性系やら軽減系やらの数が多いなぁ」
 《ですが、物理と魔法と状態異常との三つにまとめることが出来ましたので、そこまで気にすることではないかと推測致します》
 「それなら馬鹿な俺でも分かりやすいな」
 《キルビリス様は思考力は以前よりも格段に上昇していると判断致します》
 「いんや、頭の良さっていう所ではないよ」
 叡智の声にフォローされるとは。
 《そうですか……》
 「そんなことはいいや。俺は腹が減った」
 転生してから一日と半日、いやもうそろそろで二日目も終わるのに、俺はまだ何も口に入れてない。2日のうち十四時間半寝ていたのはあるのだが、にしても空腹が辛すぎる。
 《調理を開始致しますか?》
 「調理ってもなぁ……」
 食べれるものが現状、ストラ草とスライムゼリーしかないのだ。
 「絶望的な食材しかないぞこれ」
 《でしたら、創作料理を作ることを提案致します》
 はい?
 「んー……ちょっと待ってくれ……、スライムゼリーとストラ草で……俺は料理するのか?」
 《ならその二つに加えて、この近辺に生息しているテイルラビットの肉を焼いてみることを提案致します》
  「おぉ、そうすれば肉が手に入るしなぁ。それに、少し早いけど火魔法とか使って火起こしも出来るし、狩りもある程度個性使って出来るかもな」
 《はい》
 テイルラビットはここら辺ならワーウルフによく狩られているところだが、幸いなことに今日はワーウルフを見かけていない。だとすると……
 「よし、あと一時間位とかそこら辺で狩りしてくるか」
 テイルラビットは数匹狩れるだろう。一匹いれば一食分は余裕で賄えるから、多く取れたら捌いて外で乾燥させておこう。いずれ街へ行く時には食糧がないと難しいから、今日からでも保存食を作っておいて損は無いはず。
 《今後、狩りや戦闘を行うにあたって、探知系、隠密系の個性を発動致します。また、解体作業時等には解体系の個性を発動致します》
 「ありがとな、んじゃ早速小屋の周りに居ないか探してみるか。探知系発動よろしく」
 《はい、探知系個性を発動致します。個性発動》
 探知系の個性は本来であれば直感のように感覚的に分かるものなのだが、俺の場合は個性『脳内地図』のお陰で周囲の地形が分かっている為、その地図上に位置がわかるモンスターや人等が表示される様になっている。だから、今周囲に反応があったモンスターは地図上に点で表示され、意識を向ければどんなモンスターか、詳細まで分かる。
 「んー……スライムが八匹、ワーウルフがかなり遠くに二匹、テイルラビットは……居た」
 俺が今回テイルラビットを見つける為に主に使った探知系の個性は、個性『熱察知』だ。スライムの体温はそれほど高くない為、テイルラビットやワーウルフの様に高温体温のモンスターとの見分けが付きやすい。また、テイルラビットを見つけるにはそれの逆であるから、数あるスライムの中で体温の高いモンスター、それの詳細を見れば一目瞭然。簡単にテイルラビットが見つけられる。
 《小屋の入口正面、距離十七メートルと推測致します》
 「だったら扉開けて『水の小槍』でいいかな?」
 《水魔法『水の小槍』を使用するのでしたら、着弾後に爆発させないようにすることを推奨致します。せっかくの食糧が砕け散ってしまいます》
 「それはまずいな、分かった。んじゃ、早速」
 まぁ、威力はさっきスライムに使ったのの半分位にして、なるべく槍を細くしよう。そうしないと大切な肉が少なくなってしまう。
 「隠密つけてるからある程度の音は大丈夫だよね? 扉開けていきなり逃げるとかだったら俺キレるよ?」
 《その点は、個性『消音』のお陰で大丈夫だと判断致します》
 「ほいほい」
 俺の心配は意味もなく、普通に扉を開けてみた。驚くことに木が軋む音は一切聞こえず、無音で俺は外に出られた。
 「えっと、魔法はイメージだから……」
 魔素を辺りから集めて手の平で水へと変化させる。完成した水を小槍よりも更に小さく、もう針のように……例えるなら、蜂の針のようにしていく。
  《水魔法『水の小槍』の威力を軽減、水魔法『水の針』が発動致します》
 「ふぅ……こんな感じかな、『水の針ウォーター・ニードル』」
 手の平に収まるような大きさで、水の針を作ってみた。1本しか作らなかったが、この要領だと幾らかまとめて作るのも簡単だろう。
 「んで、これを飛ばすと」
 槍のように持って投げるのは厳しいので、投げナイフのを持つように構えてみる。針先を地面に対して垂直にし、着弾地点であるテイルラビットに当たるようにする。この投げ方で当たるのかどうかは知らないが、命中率補正が掛かるし、個性の影響もあるから大丈夫だろう。
 《テイルラビットに対して一撃でも当てられれば、仕留める事が可能だと推測致します》
 「んじゃ、一匹目っ」
 小槍を投げた時よりも小さいモーションで、最速で腕を振り下ろした。針を離したと同時にテイルラビットへと目を向けたが、こちらには気付いていなかったらしく、呆気なく命中したのだった。
 「よし、命中したな。これなら幾らでも狩れる気がするよ」
 《命中率補正は発動致しませんでした。キルビリス様御自身の技能の高さ故の結果です》
 補正無しでこの距離の的に当てられるのか、これなら見かけた奴は全部狩れるかもな。あいにく倉庫は無限にあるし、解体に関しても個性を既に習得してるから問題無い。
 「取り敢えず仕留めたテイルラビットを回収してこようか」
 念願の肉を仕留めた俺はテンション高めで仕留めたテイルラビットへと歩いていった。
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