異世界で子育てしながら静かに暮らしたい元スパイ

ライカタイガ

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1章

第1話:異世界で目覚めたら

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ゼインが意識を取り戻したとき、最初に感じたのは土の匂いと柔らかな草の感触だった。
肌に触れる陽光は穏やかで、心地よい暖かさが全身を包んでいる。
ゆっくりと目を開けると、青く澄んだ空が広がり、絵のように美しい白い雲が風に流されていた。

「ここは……どこだ?」

視界が定まると同時に、頭に鋭い痛みが走った。最後の記憶がフラッシュバックする。

――真夜中の薄暗い倉庫。手には銃、息を殺して潜むゼイン。
世界を脅かすテロリスト集団のアジトへの潜入任務。
極秘情報を奪取し、撤退寸前だった。しかし、突如響き渡る銃声と背後からの爆発。
裏切りか、それとも罠か――

「俺は、死んだはずだ……」

身体を起こそうとすると、ふいに小さな声が耳に届いた。

「あ、起きましたか?」

振り返ると、木漏れ日の中に三人の子供たちがこちらを不安そうに見ていた。
木陰で座っている金髪、碧眼の少女。年は15、6くらいだろうか。
柔らかな笑顔でこちらを見ているが、どこか辛そうに見えた

その隣には寄り添うように10歳くらいの女の子
長い栗色の髪を柔らかく風に揺らす少女、その大きく青い瞳には不安と優しさが混在している。

逆側には、5歳くらいだろうか
白銀の髪を持つ少年。金髪の少女の後ろから無邪気さの中にも警戒心をのぞかせている。

「ああ……君たちは?」

ゼインは痛む頭を押さえながら尋ねた。金髪の少女は優しく微笑みながら口を開く。

「私はミア。この子たちはリリィとテオ。森であなたを見つけて、ここまで連れてきました」

ゼインは困惑した。こんな平和な風景が広がる場所が、自分の知る世界に存在するとは思えない。
広がる緑の草原、木製の小さな家、色とりどりの花が咲き誇り、どこか牧歌的な雰囲気が漂っている。

「この村はどこにある? ここは……地球なのか?」

ゼインの問いに、ミアは小さく首を横に振る。

「いいえ……ここはあなたがいた世界とは違う場所です。きっとあなたは『異世界』からやって来たんだと思います」

――異世界。

ありえない話だが、状況からして否定はできない。
ゼインが戸惑う様子を察したのか、ミアはさらに言葉を継いだ。

「私には時間がありません……。お願いです。この子たちを守ってくれませんか?」

少女の言葉には切迫感があった。
彼女の頬に涙が一筋流れる。ゼインは眉をひそめ、迷いを見せる。

「守るって……俺に何ができる?」

ゼインの言葉に、ミアは震える声で訴える。

「あなたには特別な力があるはずです……
私にはわかります。この子たちを託せるのは、あなたしかいないのです」

ミアの目は真剣だった。ゼインは彼女の瞳の奥にある強い意思を感じ取り、胸が締め付けられた。

元スパイとして、常に人を疑い、冷徹に判断してきたゼインだが、この時ばかりは直感に従いたい気持ちが湧き上がっていた。

「わかった。約束しよう。だが、君は……」

ミアは満足そうに頷き、微笑んだ。

「ありがとうございます……もう、大丈夫」

その言葉と同時に、少女の瞳が静かに閉じられていく。

「おい、待て!」

ゼインは焦って少女のもとへ駆け寄ったが、ミアは安らかな表情のまま動かなくなっていた。

後ろで小さなすすり泣きが聞こえ、振り返ると、リリィが涙を浮かべてゼインを見上げていた。

「……パパ?」

その言葉に戸惑いながらも、ゼインは決意した。もう後戻りはできない。

「……そうだな。これからは俺が、お前たちを守る」

静かに告げたゼインの言葉は、異世界での新たな人生の幕開けを告げるのだった。
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