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1章
第23話:そして、世界は歩き出す
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三人が織りなおした“理”は、確かに世界に届いていた。
門の向こう側——かつて荒廃していたその地は、今では静かに呼吸を始めているようだった。
空気は柔らかく、風は穏やかで、光は地を照らしていた。
だが、ただの奇跡ではない。これは、彼らが歩んできた全ての記憶、選択、そして意志の積み重ねが繋いだ“結果”だった。
ゼインは腰に剣を収め、光が差し込む草原をゆっくりと歩いた。
その足取りは静かで、けれど迷いはなかった。
「……こんな日が来るなんて、思ってもみなかった」
リリィが隣で呟く。
「私たち、あんなに何も知らなかったのにね」
テオが振り返って笑う。
「知らなかったから、ここまで来られたのかもしれないよ」
ゼインは二人のやりとりを見守りながら、小さく頷いた。
「知らなかったことを、怖がる必要はない。知ったあと、どう行動するかがすべてだ」
門の裂け目は、今や“繋がる回廊”へと変化していた。
人々が自由に行き来するにはまだ遠いが、それでも、もはや呑み込むだけの亀裂ではない。
“世界同士が語り合う入口”として、確かにそこに存在していた。
*
村に戻ると、風景はどこか懐かしくも、新しかった。
村人たちは門の変化を目にし、少しずつ“向こう側”との接続を受け入れ始めていた。
「……門の使者がいなくなってから、不思議と村の木々がよく育つようになったんですよ」
広場で畑を手入れしていた老人が言う。
「向こう側の土地からも、風が流れてくるようになってね。昔より空気が澄んでる気がする」
リオは村の中央で、魔法陣の浄化作業を終えたところだった。
「門が“理の通路”になったことで、精霊の流れが正常化している。かつては止まっていた流れが、今は緩やかに循環しているようだ」
ゼインが深く頷いた。
「これが……俺たちが織った世界か」
ヴァルドが肩を組むようにして笑う。
「よくやったな、ゼイン。お前はもともと孤独な剣だった。だが今は違う。もう、お前は一人じゃない」
ゼインはふと空を見上げた。
穏やかな空。漂う白い雲。
そこに、かつての死地や血の匂いはなかった。
「……確かに。これが、俺の居場所だ」
*
その夜、リリィとテオは湖のほとりで星を見上げていた。
「ねぇ、テオ。もし、また“門”が揺れたら……」
「うん」
「私たち、もう一度行けるかな」
テオは少しだけ考えてから、笑った。
「行けると思うよ。だって僕たち、ちゃんと選べたもん」
「……うん」
リリィは草の上にごろんと寝転がった。
「でも今は、こうして何もない時間が、すごく幸せ」
「うん。僕も」
そこへゼインがやってきて、二人の隣に腰を下ろした。
「お前たちには、これからまだまだやるべきことがある。でも今日は、それを忘れていい」
「今日は?」
「そう。今日はただ、生きていることを感じる日にしよう」
三人はしばし無言で星を見上げていた。
天の川がゆっくりと空を横切っていく。
世界はまだ不完全で、不確かで、壊れやすい。
けれど、そこに生きる誰かが“繋がりたい”と願う限り——
その理は、これからも織り直されていくのだろう。
*
そして数日後。
リリィは村の子どもたちに、本を読んで聞かせていた。
その本には、こんなタイトルが記されていた。
『門の向こうに広がる物語』
テオは小さな紙にペンを走らせ、地図を描いていた。
“かつて門があった場所”と“繋がる道”。
それは世界がふたつに分かれていた証であり、いま再び繋がろうとする記録だった。
ゼインは村の鍛冶場で、子どもたちに剣の構えを教えていた。
「剣は壊すためにあるんじゃない。守るためにある」
それは、彼自身が戦いの果てにたどり着いた“信念”だった。
彼らの日常は、静かに、確かに始まっていた。
かつて失われた世界の名残が、少しずつ笑顔の中に溶けていく。
そうして“門の物語”は、ひとつの結末へと辿り着いた。
門の向こう側——かつて荒廃していたその地は、今では静かに呼吸を始めているようだった。
空気は柔らかく、風は穏やかで、光は地を照らしていた。
だが、ただの奇跡ではない。これは、彼らが歩んできた全ての記憶、選択、そして意志の積み重ねが繋いだ“結果”だった。
ゼインは腰に剣を収め、光が差し込む草原をゆっくりと歩いた。
その足取りは静かで、けれど迷いはなかった。
「……こんな日が来るなんて、思ってもみなかった」
リリィが隣で呟く。
「私たち、あんなに何も知らなかったのにね」
テオが振り返って笑う。
「知らなかったから、ここまで来られたのかもしれないよ」
ゼインは二人のやりとりを見守りながら、小さく頷いた。
「知らなかったことを、怖がる必要はない。知ったあと、どう行動するかがすべてだ」
門の裂け目は、今や“繋がる回廊”へと変化していた。
人々が自由に行き来するにはまだ遠いが、それでも、もはや呑み込むだけの亀裂ではない。
“世界同士が語り合う入口”として、確かにそこに存在していた。
*
村に戻ると、風景はどこか懐かしくも、新しかった。
村人たちは門の変化を目にし、少しずつ“向こう側”との接続を受け入れ始めていた。
「……門の使者がいなくなってから、不思議と村の木々がよく育つようになったんですよ」
広場で畑を手入れしていた老人が言う。
「向こう側の土地からも、風が流れてくるようになってね。昔より空気が澄んでる気がする」
リオは村の中央で、魔法陣の浄化作業を終えたところだった。
「門が“理の通路”になったことで、精霊の流れが正常化している。かつては止まっていた流れが、今は緩やかに循環しているようだ」
ゼインが深く頷いた。
「これが……俺たちが織った世界か」
ヴァルドが肩を組むようにして笑う。
「よくやったな、ゼイン。お前はもともと孤独な剣だった。だが今は違う。もう、お前は一人じゃない」
ゼインはふと空を見上げた。
穏やかな空。漂う白い雲。
そこに、かつての死地や血の匂いはなかった。
「……確かに。これが、俺の居場所だ」
*
その夜、リリィとテオは湖のほとりで星を見上げていた。
「ねぇ、テオ。もし、また“門”が揺れたら……」
「うん」
「私たち、もう一度行けるかな」
テオは少しだけ考えてから、笑った。
「行けると思うよ。だって僕たち、ちゃんと選べたもん」
「……うん」
リリィは草の上にごろんと寝転がった。
「でも今は、こうして何もない時間が、すごく幸せ」
「うん。僕も」
そこへゼインがやってきて、二人の隣に腰を下ろした。
「お前たちには、これからまだまだやるべきことがある。でも今日は、それを忘れていい」
「今日は?」
「そう。今日はただ、生きていることを感じる日にしよう」
三人はしばし無言で星を見上げていた。
天の川がゆっくりと空を横切っていく。
世界はまだ不完全で、不確かで、壊れやすい。
けれど、そこに生きる誰かが“繋がりたい”と願う限り——
その理は、これからも織り直されていくのだろう。
*
そして数日後。
リリィは村の子どもたちに、本を読んで聞かせていた。
その本には、こんなタイトルが記されていた。
『門の向こうに広がる物語』
テオは小さな紙にペンを走らせ、地図を描いていた。
“かつて門があった場所”と“繋がる道”。
それは世界がふたつに分かれていた証であり、いま再び繋がろうとする記録だった。
ゼインは村の鍛冶場で、子どもたちに剣の構えを教えていた。
「剣は壊すためにあるんじゃない。守るためにある」
それは、彼自身が戦いの果てにたどり着いた“信念”だった。
彼らの日常は、静かに、確かに始まっていた。
かつて失われた世界の名残が、少しずつ笑顔の中に溶けていく。
そうして“門の物語”は、ひとつの結末へと辿り着いた。
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