3 / 13
1章
2話
しおりを挟む
家が見えなくなった辺りで足を止め、ぶらぶらと夕暮れの町を歩く。引っ越してきてしばらくたち、灯我は大分町の地理を理解していた。ここを右に曲がれば公園で、まっすぐ行けば保育園だ。さらに一本向こうの通りに行けば学校に続く道がある。学校の方に行く気はないが、保育園に行っても子供はいない。
「あっ!ちょっとそこの君どいてぇぇぇ!!」
「え?」
先の十栄に差し掛かったところで急に叫び声が聞こえてきた。思わずそっちを見ると池身高校の制服を着た青年が灯我に向かって走って来ていた。灯我は呆然と立ち尽くし走ってくる青年を見ることしかできなかった。
「本っ当に危ないから!!」
「ッ!君こっち来て。」
何かに追われ焦ったように向かってくる青年を背に庇い、その後ろにいる”ナニカ”に回し蹴りをぶつける。すると、その”ナニカ”はド派手に吹っ飛び、近くのゴミ捨て場に突っ込む。
「はぁ!?」
「大人しく下がって、出てこないでよ。」
「ちょっと!」
危ない!という声が響いたが、それを聞かず灯我はさらにゴミ捨て場にいる”ナニカ”の上に乗るように蹴る。そしてそのまま呆然としている青年の手を引き走り出す。
「き、君さっきのって…!」
「説明はあと!今はとにかく走って!」
名前も知らない子の手を引っ張り灯我は次どうするか考える。
あの”ナニカ”は明らかに青年を狙っていて、彼自身も大分逃げて抵抗したのだろう。改めて青年を見れば服はボロボロで土まみれ。その上こぶしは何度か殴ったのか血が出てる。なるべく被害が出ないところにしなくては思うように動けない。
「どこにいくの!?」
「とりあえず広いところ!」
「なら近くの公園より二本曲がって突き当りに空き地がある!」
「ありがとう!」
公園に行こうと思ってたけど、青年のアドバイスに行先を変える。一身に走っていた空き地で振り返れば、やっと落ち着いて”ナニカ”の姿が見えた。
「えー…動く人体モデルとかって、理科室ならではじゃん?なーんで出てきちゃったかなー。」
「そんなこと言ってる場合なの?!」
少し戸惑うように、視線を泳がせた先にいるのは気こちなく動く人体モデル。ありがちな反面筋肉とむき出しの内臓からは誰とも知らない血が滴っている。不気味にケタケタ笑いながら近づいてくる人体モデルは二人を追い詰めたとでも考えているのだろう。
「ど、どうするの?」
「まぁ、任せてよ。大丈夫、ナワバリから出たのに余裕ぶってるバカに負けるほど俺弱くないから。」
灯我は懐から数枚、お札のようなものを取り出し、それを空に投げる。するとそれらは意志を持ったかのように人体モデルを中心に円を描き地面に突き刺さる。
「植物を灰にし維持身を涸らす不滅の炎よ。人に仇なす妖を夜に封じ朝をもたらせ。我、太陽を灯すものなり。」
灯我が口上を述べると札が刺さった内側のみがきれいに燃え上がる。大きく燃え上がった業火は、人体モデルを焼き尽くすかのように飲み込んでいく。青年はその炎に見惚れていた。
「あっ!ちょっとそこの君どいてぇぇぇ!!」
「え?」
先の十栄に差し掛かったところで急に叫び声が聞こえてきた。思わずそっちを見ると池身高校の制服を着た青年が灯我に向かって走って来ていた。灯我は呆然と立ち尽くし走ってくる青年を見ることしかできなかった。
「本っ当に危ないから!!」
「ッ!君こっち来て。」
何かに追われ焦ったように向かってくる青年を背に庇い、その後ろにいる”ナニカ”に回し蹴りをぶつける。すると、その”ナニカ”はド派手に吹っ飛び、近くのゴミ捨て場に突っ込む。
「はぁ!?」
「大人しく下がって、出てこないでよ。」
「ちょっと!」
危ない!という声が響いたが、それを聞かず灯我はさらにゴミ捨て場にいる”ナニカ”の上に乗るように蹴る。そしてそのまま呆然としている青年の手を引き走り出す。
「き、君さっきのって…!」
「説明はあと!今はとにかく走って!」
名前も知らない子の手を引っ張り灯我は次どうするか考える。
あの”ナニカ”は明らかに青年を狙っていて、彼自身も大分逃げて抵抗したのだろう。改めて青年を見れば服はボロボロで土まみれ。その上こぶしは何度か殴ったのか血が出てる。なるべく被害が出ないところにしなくては思うように動けない。
「どこにいくの!?」
「とりあえず広いところ!」
「なら近くの公園より二本曲がって突き当りに空き地がある!」
「ありがとう!」
公園に行こうと思ってたけど、青年のアドバイスに行先を変える。一身に走っていた空き地で振り返れば、やっと落ち着いて”ナニカ”の姿が見えた。
「えー…動く人体モデルとかって、理科室ならではじゃん?なーんで出てきちゃったかなー。」
「そんなこと言ってる場合なの?!」
少し戸惑うように、視線を泳がせた先にいるのは気こちなく動く人体モデル。ありがちな反面筋肉とむき出しの内臓からは誰とも知らない血が滴っている。不気味にケタケタ笑いながら近づいてくる人体モデルは二人を追い詰めたとでも考えているのだろう。
「ど、どうするの?」
「まぁ、任せてよ。大丈夫、ナワバリから出たのに余裕ぶってるバカに負けるほど俺弱くないから。」
灯我は懐から数枚、お札のようなものを取り出し、それを空に投げる。するとそれらは意志を持ったかのように人体モデルを中心に円を描き地面に突き刺さる。
「植物を灰にし維持身を涸らす不滅の炎よ。人に仇なす妖を夜に封じ朝をもたらせ。我、太陽を灯すものなり。」
灯我が口上を述べると札が刺さった内側のみがきれいに燃え上がる。大きく燃え上がった業火は、人体モデルを焼き尽くすかのように飲み込んでいく。青年はその炎に見惚れていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる