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第一曲
カンタービレの昔語り
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私、カンタービレの出身はここ花の都より馬車で3日程にある村だ。
私は農家の生まれで、幼い頃より小麦畑での作業を手伝いながら育った。このまま大きくなっても、一生小麦を育て続けるのかなと思った瞬間、言いようの無い絶望感を感じた。
私は当時、もっとキラキラした何かを追い求めていた。
例えば、小麦を買い付けにやってきた行商人のおじさんにに聞いた、これまでに立ち寄ってきた国の話。
住人皆が不思議な術を使う魔法都市、とっても美味しい魚が獲り放題な水の国、背中に翼を持ち肌には鱗を纏う人々の住む竜人の里。
そして、美しい花に彩られた商売の一大都市である花の都。
家族からは猛烈な反対を受けたが、最終的には笑顔で送り出してくれた。大量の上京資金まで持たせてもらって、一体どこにこんなお金隠してたのやら、感謝しか無い。
こうして憧れた花の都に単身乗り込んだ初日、ものの見事に私は悪党に捕まった。
世間知らずのお金を持っている田舎娘を拐かすのはさぞ楽なことだったろう。
気づいた時には人気の無い路地に連れ込まれ、荷物を奪われた。
そしてそのまま私も悪党共に頂かれてしまう直前に、通りがかりの壮年の騎士に助けられた。
その騎士は、歳の関係で花の都中央庁管轄の騎士団を引退した身らしく、仕事もなくぶらぶらしていた所を嫌がる娘を連れた怪しい男達に偶然遭遇したらしい。
彼はヴォルツと名乗った。
ヴォルツさんにはその後もお世話になってしまった。宿の紹介から仕事先である花酒場【蜜蜂の集い】の紹介までしてもらって至れり尽せりだった。
私はお礼をと言ったが、ヴォルツさんは
「こんなおっさんに構う事はねえよ。それでも礼がしたいというのなら、この街で活き活きと過ごす姿を見せてくれ」
と言うのだった。
それから私は、街でヴォルツさんを見かける度に手を振ったり、仕事の合間を見つけてお喋りするようにした。
私が元気にこの街で生きている姿に、ヴォルツさんは満足気だった。
そんな日々を3年、過ごす内にふと気になったことがあるのだ。
街で見かける回数が目に見えて減っていたのだ。
気づいた時にはもうヴォルツさんを街で見かけなくなっており、行方を探そうにも私はヴォルツさんの家を知らなかったのだ。
仕事がお休みの日に、ヴォルツさんの知り合いを求めて騎士団の下へ話を聞きに行ったが、教えてもらった家には誰の気配も無かった。休日の度にヴォルツ邸へと赴いているが、未だその姿を見てはいない。
まだこの街にいるのかそれともどこかへ行ってしまったのかも分からないが、自分で打てる手は尽くしてしまった。
そんな時に私はこの白髪少女と出会った。
私は農家の生まれで、幼い頃より小麦畑での作業を手伝いながら育った。このまま大きくなっても、一生小麦を育て続けるのかなと思った瞬間、言いようの無い絶望感を感じた。
私は当時、もっとキラキラした何かを追い求めていた。
例えば、小麦を買い付けにやってきた行商人のおじさんにに聞いた、これまでに立ち寄ってきた国の話。
住人皆が不思議な術を使う魔法都市、とっても美味しい魚が獲り放題な水の国、背中に翼を持ち肌には鱗を纏う人々の住む竜人の里。
そして、美しい花に彩られた商売の一大都市である花の都。
家族からは猛烈な反対を受けたが、最終的には笑顔で送り出してくれた。大量の上京資金まで持たせてもらって、一体どこにこんなお金隠してたのやら、感謝しか無い。
こうして憧れた花の都に単身乗り込んだ初日、ものの見事に私は悪党に捕まった。
世間知らずのお金を持っている田舎娘を拐かすのはさぞ楽なことだったろう。
気づいた時には人気の無い路地に連れ込まれ、荷物を奪われた。
そしてそのまま私も悪党共に頂かれてしまう直前に、通りがかりの壮年の騎士に助けられた。
その騎士は、歳の関係で花の都中央庁管轄の騎士団を引退した身らしく、仕事もなくぶらぶらしていた所を嫌がる娘を連れた怪しい男達に偶然遭遇したらしい。
彼はヴォルツと名乗った。
ヴォルツさんにはその後もお世話になってしまった。宿の紹介から仕事先である花酒場【蜜蜂の集い】の紹介までしてもらって至れり尽せりだった。
私はお礼をと言ったが、ヴォルツさんは
「こんなおっさんに構う事はねえよ。それでも礼がしたいというのなら、この街で活き活きと過ごす姿を見せてくれ」
と言うのだった。
それから私は、街でヴォルツさんを見かける度に手を振ったり、仕事の合間を見つけてお喋りするようにした。
私が元気にこの街で生きている姿に、ヴォルツさんは満足気だった。
そんな日々を3年、過ごす内にふと気になったことがあるのだ。
街で見かける回数が目に見えて減っていたのだ。
気づいた時にはもうヴォルツさんを街で見かけなくなっており、行方を探そうにも私はヴォルツさんの家を知らなかったのだ。
仕事がお休みの日に、ヴォルツさんの知り合いを求めて騎士団の下へ話を聞きに行ったが、教えてもらった家には誰の気配も無かった。休日の度にヴォルツ邸へと赴いているが、未だその姿を見てはいない。
まだこの街にいるのかそれともどこかへ行ってしまったのかも分からないが、自分で打てる手は尽くしてしまった。
そんな時に私はこの白髪少女と出会った。
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