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しおりを挟む彼と出会った........いや、見つけたのは春。
桜がほぼ散り、葉桜になった頃。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
(桜、終わっちゃったな。)
季節は巡る。
また、この季節がやってきた。
桜が散るのを見て、毎年切なくなるのは俺だけではないはずだ。
別に寂しかった何かがあった訳では無い。
ただ、何となく。
散りゆくものを見たくなくて。独りになりたくて。
人の流れに逆らった先にあった図書室に入った。
(はじめて、入ったな。)
この広い大学の中でも、中々の敷地をとっていると思われる図書室である。
俺が入学してから2年間、1歩も踏み入れたことの無い場所であった。
カリカリ.......
パラッ......パラッ........
中央の机には、真面目に勉強をしている人や、読書をしている人がいる。
試験が終わってまだ数日。多くの学生は待ってましたとばかりに遊びに行く。
だから人口密度としてはとても過疎と言えるだろう。
でも、
(俺は、独りになりたいんだ。)
周りを見渡してみると、少し進んだ先に螺旋階段が見える。その上に見えるのはまた本棚。
(登る時は目立ちそうだけど.......。)
案の定軋む螺旋階段。皆、案外こちらのことは気にかけてはいないものだな。誰からの視線も感じずに2階に辿り着くことが出来た。
(古い本、ばっかだな。)
古い本特有のセピア色、掠れ、皺。それでも綺麗に保っていると言えた。
そんな古本達が、今の自分にはとても合っていると思った。
数分くらい本棚をまわり、気になった本を取る。
3冊ほど集めた頃、図書室の奥の奥であろう場所に、机と椅子が置いてあるスペースを見つけた。
六人掛けの木の机と椅子のセットが二つ。横並びに設置してあった。
下よりも本の匂いが濃い場所。窓は上の方に丸い形のものが一つだけ。
電気も煌々としている訳では無い。
妙にしっくりきた。
(秘密基地みたいだ。)
人間いつまでも子供の頃の気持ちが抜けないものだ。俺はさっきまでの切ない気持ちなんてなかったみたいに、気分が良かった。
窓に近い、一番端の席に座る。1番窓から入る光を感じられる位置だと思ったから。
しばらくぼーっと光を浴び、思い出したかのように先程集めてきた本を読む。
そうしてどれくらいの時間が経ったのだろうか。
「ハッ.......!」
思いっきり爆睡していた。もう窓から射す光も感じない。
(本に涎とか垂らしてなかったかな.......大丈夫そうだな。よかった。)
「あ、起きた?」
久しぶりに思考が停止した。
「ッッ!?!?!?(ガタガタガタッ)」
「あ、ごめん。驚かせちゃったかな。」
苦笑いを浮かべながら髪をかく青年。少し茶色がかった、ふわっとした髪。犬っぽい、という例えで間違いはないだろう。
「あ、いや、こっちこそ.......」
(他人がいるなんて気づかなかった.......それに俺、さっきまで爆睡してたし.....!)
他人がいる前で無防備を晒していたことに羞恥心を感じていると、
「ごめんね?いきなり。驚かせちゃったよね。俺、いつもここ使っててね。先客がいて、譲ろうかと思ったんだけど.......。やっぱり、どうしてもここが良くてさ。お邪魔しちゃった。.........ここ、いいよね。静かで、本の匂いも濃い。俺の秘密の場所.........あ、今日から『俺達の』になるの、かな?」
へへ、と言いながら頬をかくその青年。
俺は今日、独りになりたくてここに辿り着いた。気持ちよく過ごしてて、起きた時には知らない人がいた.....。
普段の俺なら、恐らく、少しもやもやとした心のまま帰路につき、そして二度とここには訪れなかっただろう。
でも、なんでだろう。
(嫌じゃ、ないなぁ。)
グイグイ来ないからだろうか。自分の気持ちを、水に溶かすかのようにそっと呟いている感じ。
「そろそろ閉館だからさ、起きてくれてよかった。それじゃあ、俺はお先に。」
パタンッと本を閉じてそのままゆっくりと帰っていく青年。
応答も、名前も、何も求めずに。
(また、ここに来たら)
会えるかな。
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