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陸上
【番外編】アスリートママ冬の密事:3月(後編)
【番外編】冬の密事:3月(後編)
三月中旬。街を吹き抜ける風に春の湿り気が混じり始めた頃、俺はいつものホテルの密室で、獣のような形相をした彼女と対峙していた。
十一月から始まったこの異常な「子作り」の試行も、今日で五回目。これまで、彼女がその完璧に鍛え上げられた肉体をもってしても手に入れられなかった「結果」を、彼女は今日、力ずくで奪い取ろうとしていた。
「……今日で、すべてを決めるわ。もう、一ヶ月も、一分も待てない」
彼女はベッドに腰掛け、バッグからあの「真空断熱ミニボトル」を取り出した。二月から週に一度、俺から無理やり搾り取って溜めてきた、いわば『予備』の結晶だ。彼女はそれを愛おしそうに撫で、蓋を開けて中身を確認する。
「このボトルの中に溜めた分と、今からあなたが出す新鮮な三回分。そのすべてを、私の卵子にぶつけるの。……これだけやってダメなら、神様なんていないわ」
彼女の瞳には、もはや常人の理解を超えた「信仰」にも似た狂気が宿っていた。彼女はボトルをサイドテーブルに置くと、服を脱ぎ捨て、剥き出しの飢餓感を俺にぶつけてきた。
一回目。彼女は俺を仰向けに倒すと、猛烈な勢いで俺の上に跨がった。
「あ……あああ……っ!! 入った……! 完璧なタイミングよ……っ!」
彼女は俺の胸を両手で強く押し、背中を反らせて絶叫した。一打一打が、俺の遺伝子を子宮の最深部へと押し流すための杭のように重く、深い。彼女の強靭な内転筋は、俺の腰をギリギリと締め上げ、一滴の液体さえも逆流させまいと必死に抗っている。
「出しなさい……! 私の体温を、あなたの熱で沸騰させて……っ!!」
二月のボトル回収で疲弊していたはずの俺の肉体は、彼女の殺気立った興奮に強制的に駆動させられた。彼女は果てる瞬間、俺の肩に深く歯を立て、痛みに悶える俺のすべてを吸い尽くした。
だが、彼女に休息という概念はない。
二回目――彼女は俺を立たせ、壁に背を向けさせると、自ら俺の腰にしがみついてきた。重力すらも利用し、俺のモノを自らの深淵へと垂直に落とし込む。
「んんんっ! ああ……! 届いてる……! 今、あなたの命が……私の奥底に届いたわ!!」
彼女は俺の首筋に顔を埋め、熱い涙を流しながら腰を振り続けた。
「負けない……。私は、絶対に負けない……! この肉体が、あなたの種を捕まえるまで……何度だって、何度だって飲み込んでやるんだから!!」
三回目――。彼女の体力は限界に近いはずだが、精神の焦りが肉体を無理やり動かしていた。
彼女は俺をベッドに這わせ、自らは後ろを向いて、四つん這いの姿勢で俺を迎え入れた。動物的な、子を繋ぐためだけの姿勢。
「最後よ……。最後の一滴まで、私に……全部、寄越しなさい!!」
彼女は腰を高く突き出し、俺を最奥まで迎え入れた。衝撃のたびに、彼女の鍛えられた肢体が汗で光り、波打つ。もはやこれは情事ではない。自らの肉体を「受精の器」として完成させるための、暴力的なまでの自己研鑽だ。
俺の限界が訪れた。咆哮と共に、俺は今日持てるすべての遺伝子を、彼女の最深部へと解き放った。
「あああああ……っ!! 捕まえた……! 今、捕まえたわ!!」
三度目の絶頂と共に、俺が彼女の奥底へすべてを解き放った瞬間、彼女はこれまでとは違う声を上げた。確信に満ちた、歓喜の咆哮。
彼女は俺を引き抜かせまいと、腰を強く押し付けたまま、シーツを指が白くなるほど強く握りしめて震えていた。
事後、彼女はピクリとも動かず、俺の体に覆いかぶさっていた。
だが、その手はまだ、あのサイドテーブルのボトルを探っていた。
「……ふふ。……まだよ。……最後は、これ。……一週間、大切に温めてきた、あなたの『予備』……」
彼女は震える手でボトルを手に取り、俺との行為で開いたままの自らの秘部へと、その冷えた(と俺は確信しているが、彼女には温かく感じている)液体を流し込んだ。
医学的な死滅も、雑菌の繁殖も、今の彼女には一切関係ない。
自分の手で、俺の種を、自分の深淵へと導く。その「作業」を終えて初めて、彼女は深い溜息をつき、俺の腕の中で眠りについた。
それから数日後。
俺は彼女から連絡を受け、あのグラウンドへと向かった。
桜の花びらが舞う中、彼女は立っていた。
つい数日前、ホテルで髪を振り乱し、ボトルの中身を自分に注ぎ込んでいたあの狂女の姿はどこにもなかった。
そこにいたのは、勝利を確信した聖母のような、傲慢なまでに穏やかな微笑みを浮かべた一人の女性だった。
「……できたよ。陽性。病院でも確認してきたわ」
彼女の手は、まだ平らな下腹部を、世界で最も価値のある宝物を扱うように愛おしそうに撫でていた。
俺は、その微笑みの裏側にある、あの「ボトル」の底に溜まった白濁の光景を思い出し、背筋に走る戦慄を必死に隠した。
彼女の執念が、ついに「奇跡」を、あるいは「呪い」を実らせたのだ。
「……おめでとう。よかった……本当によかった」
俺はあえて、驚きと喜びに震える声を演じた。
桜が舞い散る中、俺たちは抱き合った。
彼女の腹部には今、俺たちの「最高傑作」が宿っている。
そして、彼女のコートのポケットには、もう必要なくなったはずのあの「魔法瓶」が、勝利の証として今も重みを持って収まっているような気がした。
(番外編:冬の密事・完結)
三月中旬。街を吹き抜ける風に春の湿り気が混じり始めた頃、俺はいつものホテルの密室で、獣のような形相をした彼女と対峙していた。
十一月から始まったこの異常な「子作り」の試行も、今日で五回目。これまで、彼女がその完璧に鍛え上げられた肉体をもってしても手に入れられなかった「結果」を、彼女は今日、力ずくで奪い取ろうとしていた。
「……今日で、すべてを決めるわ。もう、一ヶ月も、一分も待てない」
彼女はベッドに腰掛け、バッグからあの「真空断熱ミニボトル」を取り出した。二月から週に一度、俺から無理やり搾り取って溜めてきた、いわば『予備』の結晶だ。彼女はそれを愛おしそうに撫で、蓋を開けて中身を確認する。
「このボトルの中に溜めた分と、今からあなたが出す新鮮な三回分。そのすべてを、私の卵子にぶつけるの。……これだけやってダメなら、神様なんていないわ」
彼女の瞳には、もはや常人の理解を超えた「信仰」にも似た狂気が宿っていた。彼女はボトルをサイドテーブルに置くと、服を脱ぎ捨て、剥き出しの飢餓感を俺にぶつけてきた。
一回目。彼女は俺を仰向けに倒すと、猛烈な勢いで俺の上に跨がった。
「あ……あああ……っ!! 入った……! 完璧なタイミングよ……っ!」
彼女は俺の胸を両手で強く押し、背中を反らせて絶叫した。一打一打が、俺の遺伝子を子宮の最深部へと押し流すための杭のように重く、深い。彼女の強靭な内転筋は、俺の腰をギリギリと締め上げ、一滴の液体さえも逆流させまいと必死に抗っている。
「出しなさい……! 私の体温を、あなたの熱で沸騰させて……っ!!」
二月のボトル回収で疲弊していたはずの俺の肉体は、彼女の殺気立った興奮に強制的に駆動させられた。彼女は果てる瞬間、俺の肩に深く歯を立て、痛みに悶える俺のすべてを吸い尽くした。
だが、彼女に休息という概念はない。
二回目――彼女は俺を立たせ、壁に背を向けさせると、自ら俺の腰にしがみついてきた。重力すらも利用し、俺のモノを自らの深淵へと垂直に落とし込む。
「んんんっ! ああ……! 届いてる……! 今、あなたの命が……私の奥底に届いたわ!!」
彼女は俺の首筋に顔を埋め、熱い涙を流しながら腰を振り続けた。
「負けない……。私は、絶対に負けない……! この肉体が、あなたの種を捕まえるまで……何度だって、何度だって飲み込んでやるんだから!!」
三回目――。彼女の体力は限界に近いはずだが、精神の焦りが肉体を無理やり動かしていた。
彼女は俺をベッドに這わせ、自らは後ろを向いて、四つん這いの姿勢で俺を迎え入れた。動物的な、子を繋ぐためだけの姿勢。
「最後よ……。最後の一滴まで、私に……全部、寄越しなさい!!」
彼女は腰を高く突き出し、俺を最奥まで迎え入れた。衝撃のたびに、彼女の鍛えられた肢体が汗で光り、波打つ。もはやこれは情事ではない。自らの肉体を「受精の器」として完成させるための、暴力的なまでの自己研鑽だ。
俺の限界が訪れた。咆哮と共に、俺は今日持てるすべての遺伝子を、彼女の最深部へと解き放った。
「あああああ……っ!! 捕まえた……! 今、捕まえたわ!!」
三度目の絶頂と共に、俺が彼女の奥底へすべてを解き放った瞬間、彼女はこれまでとは違う声を上げた。確信に満ちた、歓喜の咆哮。
彼女は俺を引き抜かせまいと、腰を強く押し付けたまま、シーツを指が白くなるほど強く握りしめて震えていた。
事後、彼女はピクリとも動かず、俺の体に覆いかぶさっていた。
だが、その手はまだ、あのサイドテーブルのボトルを探っていた。
「……ふふ。……まだよ。……最後は、これ。……一週間、大切に温めてきた、あなたの『予備』……」
彼女は震える手でボトルを手に取り、俺との行為で開いたままの自らの秘部へと、その冷えた(と俺は確信しているが、彼女には温かく感じている)液体を流し込んだ。
医学的な死滅も、雑菌の繁殖も、今の彼女には一切関係ない。
自分の手で、俺の種を、自分の深淵へと導く。その「作業」を終えて初めて、彼女は深い溜息をつき、俺の腕の中で眠りについた。
それから数日後。
俺は彼女から連絡を受け、あのグラウンドへと向かった。
桜の花びらが舞う中、彼女は立っていた。
つい数日前、ホテルで髪を振り乱し、ボトルの中身を自分に注ぎ込んでいたあの狂女の姿はどこにもなかった。
そこにいたのは、勝利を確信した聖母のような、傲慢なまでに穏やかな微笑みを浮かべた一人の女性だった。
「……できたよ。陽性。病院でも確認してきたわ」
彼女の手は、まだ平らな下腹部を、世界で最も価値のある宝物を扱うように愛おしそうに撫でていた。
俺は、その微笑みの裏側にある、あの「ボトル」の底に溜まった白濁の光景を思い出し、背筋に走る戦慄を必死に隠した。
彼女の執念が、ついに「奇跡」を、あるいは「呪い」を実らせたのだ。
「……おめでとう。よかった……本当によかった」
俺はあえて、驚きと喜びに震える声を演じた。
桜が舞い散る中、俺たちは抱き合った。
彼女の腹部には今、俺たちの「最高傑作」が宿っている。
そして、彼女のコートのポケットには、もう必要なくなったはずのあの「魔法瓶」が、勝利の証として今も重みを持って収まっているような気がした。
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