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第7話:聖女の噂は、国王陛下を動かしました
第7話:聖女の噂は、国王陛下を動かしました
「……カシアン様。今、何とおっしゃいました?」
朝の光が差し込む食堂。最高級のツバメの巣のスープ(滋養強壮用)を口に運んでいたエルナは、カシアンが淡々と告げた爆弾発言に、スプーンを皿に落とした。
「陛下がお見えになる。市場での一件を聞き、アルトワ公爵夫人の……お前の『気高い慈悲』に深く感動されたそうだ。余命短い身でありながら、民を慈しむ聖女のような令嬢に、直接言葉をかけたいと仰せだ」
「聖女!? 慈悲!? いえ、あれはただの気まぐれというか、逃亡資金の……いえ、なんでもありませんわ!」
エルナは頭を抱えた。
あらすじにある「逃げ回る日常」は、ついに王宮からの追っ手――もとい、国王の親臨という最悪のステージへ突入しようとしていた。
(やばい、やばすぎるわ! 公爵様を騙すだけでも処刑ものなのに、国王陛下まで騙して『聖女様』なんて崇められたら、真実がバレた瞬間にラインハルト家の家系図ごと歴史から消される……!)
「エルナ、顔色が優れないな。やはり陛下をお迎えするのは負担か。……分かった。陛下には『妻の体調が最優先につき、一歩でもこの屋敷に足を踏み入れたら謀反とみなす』と伝えて追い返そう」
「待って! それは本当の謀反になりますから止めてください!」
「お前の呼吸一回分の方が、王冠よりも価値がある。……だが、お前がそこまで言うなら、謁見の間まで私が抱えて連れて行くことで妥協しよう」
(妥協のラインがおかしい!)
* * *
数時間後。アルトワ公爵邸の謁見の間には、この世のものとは思えない緊張感が漂っていた。
玉座に近い椅子に(カシアンの膝の上に)座らされそうになるのを必死に固辞し、エルナは豪華なソファで病人らしく、かつ気高く見えるように装っていた。
カシアンは、腰の剣に手をかけたまま、まるで暗殺者を警戒する猛獣のように、入り口を睨みつけている。
やがて、国王陛下が数人の近衛を連れて現れた。
「おお、彼女が噂の……」
国王が歩み寄ろうとした瞬間、カシアンがその前に立ちふさがった。
「陛下。そこまでです。エルナは極めて繊細な状態にあります。三歩以上近づくことは、彼女の生命維持への侵害とみなします」
「カシアン……。相変わらずだな。我が国の最強の盾が、一人の令嬢にこれほどまでに入れあげるとは」
国王は苦笑しながらも、ソファに横たわるエルナへ慈愛に満ちた視線を向けた。
「エルナ・フォン・アルトワ。其方の噂は聞いている。死を目前にしながら、私欲を捨て、民に施しを与えたとか。その瞳……。確かに、現世の執着を超越した、澄み切った輝きを感じるぞ」
(違います、陛下。それは「どうやってこの場を逃げ切ろうか」とフル回転している脳の輝きです!)
エルナは、震える声(演技)で答えた。
「……陛下。もったいなきお言葉。私はただ、この身が尽きる前に、少しでも誰かの役に立ちたいと……ふうっ、うっ……」
「エルナ! 喋るな、酸素が足りなくなる!」
カシアンが即座に駆け寄り、エルナの背中を支える。その手は、まるで壊れ物を扱うように繊細で、同時に恐ろしいほど執着に満ちていた。
「陛下、見舞いの言葉は十分です。お引き取りを。彼女には休息が必要です」
「待て、カシアン。私はただ会いに来たのではない。……エルナよ。其方のその無垢な魂を讃え、王家より『救国の聖女』の称号を授ける。そして、其方の病を治すため、王宮秘蔵の聖遺物――『常しえの涙』を貸し出そう」
(常しえの涙!? それ、使うとあらゆる傷や病が消えるっていう伝説のアーティファクトじゃない!)
エルナの心臓が、恐怖で跳ね上がった。
そんなものを使われたら、一瞬で「不治の病(笑)」が消滅し、自分が嘘をついていたことが科学的・魔法的に証明されてしまう。
「……へ、陛下。そんな貴重なものを、私のような者に。……畏れ多すぎて、かえって病状が悪化しそうですわ! どうか、どうか他の方のために……!」
「見よ、カシアン! 自分の命が救われるというのに、他者を優先するこの謙虚さ! これぞ真の聖女ではないか!」
国王は感動に目を潤ませ、カシアンもまた、深い感銘を受けたようにエルナを見つめた。
「エルナ……。お前はどこまで……。分かった。陛下、その聖遺物、ありがたく頂戴する。これでエルナが助かるなら、私は一生陛下に忠誠を誓おう」
(あああ……話がどんどん最悪の方向に進んでいくわ!)
* * *
国王が満足げに去った後。
エルナは、カシアンの腕の中でぐったりとしていた。
「エルナ、喜べ。聖遺物が届けば、もう死を恐れる必要はない。お前は私のそばで、永遠に贅沢を享受できるのだ」
カシアンは、エルナの額に優しく口づけを落とした。その瞳には、もはや「契約相手」への興味ではなく、狂気にも似た深い愛と救済への願いが宿っている。
(どうしよう。聖遺物が届く前に、本当に『死んだふり』をして消えるしかない……。でも、今の公爵邸は騎士団に包囲されてるし、カシアン様は私のトイレまでついてこようとするし、物理的に逃げ道がない!)
あらすじにある「逃げ回る日常」は、今や「国家ぐるみの監視」へと進化していた。
エルナは、差し出された最高級のメロン(王室からの見舞い品)を口にしながら、冷や汗が止まらなかった。
「……あの、カシアン様。聖遺物を使う前に、一度、一人で静かにお祈りをしたいのですけれど……」
「駄目だ。お前が祈っている間に魂が天へ昇ってしまったらどうする。祈るなら、私の腕の中でしろ。お前の祈りは、私が直接、神にねじ込んでやる」
(神様も迷惑だわ、そんなの!)
エルナの「死ぬ死ぬ詐欺」は、ついに引き返せない一線を越えてしまった。
聖女として崇められ、王家に守られ、執着公爵に抱きしめられる毎日。
健康になればなるほど死罪に近づき、愛されれば愛されるほど自由が遠のく。
「……ふふ、ふふふ……」
「エルナ? どうした、突然笑い出して。やはり発熱が……」
「いえ、あまりに幸せすぎて、気が変になりそうですわ」
(本音:もう笑うしかないわ、この状況!)
エルナは、カシアンの広い胸に顔を埋めた。
本当の病気よりも恐ろしい「溺愛」という名の不治の病に侵されているのは、果たして自分なのか、それともこの公爵様なのか。
期間限定の妻の、命がけの隠蔽工作は、いよいよクライマックス(逃亡編)へと向けて、混迷を極めていくのだった。
「……カシアン様。今、何とおっしゃいました?」
朝の光が差し込む食堂。最高級のツバメの巣のスープ(滋養強壮用)を口に運んでいたエルナは、カシアンが淡々と告げた爆弾発言に、スプーンを皿に落とした。
「陛下がお見えになる。市場での一件を聞き、アルトワ公爵夫人の……お前の『気高い慈悲』に深く感動されたそうだ。余命短い身でありながら、民を慈しむ聖女のような令嬢に、直接言葉をかけたいと仰せだ」
「聖女!? 慈悲!? いえ、あれはただの気まぐれというか、逃亡資金の……いえ、なんでもありませんわ!」
エルナは頭を抱えた。
あらすじにある「逃げ回る日常」は、ついに王宮からの追っ手――もとい、国王の親臨という最悪のステージへ突入しようとしていた。
(やばい、やばすぎるわ! 公爵様を騙すだけでも処刑ものなのに、国王陛下まで騙して『聖女様』なんて崇められたら、真実がバレた瞬間にラインハルト家の家系図ごと歴史から消される……!)
「エルナ、顔色が優れないな。やはり陛下をお迎えするのは負担か。……分かった。陛下には『妻の体調が最優先につき、一歩でもこの屋敷に足を踏み入れたら謀反とみなす』と伝えて追い返そう」
「待って! それは本当の謀反になりますから止めてください!」
「お前の呼吸一回分の方が、王冠よりも価値がある。……だが、お前がそこまで言うなら、謁見の間まで私が抱えて連れて行くことで妥協しよう」
(妥協のラインがおかしい!)
* * *
数時間後。アルトワ公爵邸の謁見の間には、この世のものとは思えない緊張感が漂っていた。
玉座に近い椅子に(カシアンの膝の上に)座らされそうになるのを必死に固辞し、エルナは豪華なソファで病人らしく、かつ気高く見えるように装っていた。
カシアンは、腰の剣に手をかけたまま、まるで暗殺者を警戒する猛獣のように、入り口を睨みつけている。
やがて、国王陛下が数人の近衛を連れて現れた。
「おお、彼女が噂の……」
国王が歩み寄ろうとした瞬間、カシアンがその前に立ちふさがった。
「陛下。そこまでです。エルナは極めて繊細な状態にあります。三歩以上近づくことは、彼女の生命維持への侵害とみなします」
「カシアン……。相変わらずだな。我が国の最強の盾が、一人の令嬢にこれほどまでに入れあげるとは」
国王は苦笑しながらも、ソファに横たわるエルナへ慈愛に満ちた視線を向けた。
「エルナ・フォン・アルトワ。其方の噂は聞いている。死を目前にしながら、私欲を捨て、民に施しを与えたとか。その瞳……。確かに、現世の執着を超越した、澄み切った輝きを感じるぞ」
(違います、陛下。それは「どうやってこの場を逃げ切ろうか」とフル回転している脳の輝きです!)
エルナは、震える声(演技)で答えた。
「……陛下。もったいなきお言葉。私はただ、この身が尽きる前に、少しでも誰かの役に立ちたいと……ふうっ、うっ……」
「エルナ! 喋るな、酸素が足りなくなる!」
カシアンが即座に駆け寄り、エルナの背中を支える。その手は、まるで壊れ物を扱うように繊細で、同時に恐ろしいほど執着に満ちていた。
「陛下、見舞いの言葉は十分です。お引き取りを。彼女には休息が必要です」
「待て、カシアン。私はただ会いに来たのではない。……エルナよ。其方のその無垢な魂を讃え、王家より『救国の聖女』の称号を授ける。そして、其方の病を治すため、王宮秘蔵の聖遺物――『常しえの涙』を貸し出そう」
(常しえの涙!? それ、使うとあらゆる傷や病が消えるっていう伝説のアーティファクトじゃない!)
エルナの心臓が、恐怖で跳ね上がった。
そんなものを使われたら、一瞬で「不治の病(笑)」が消滅し、自分が嘘をついていたことが科学的・魔法的に証明されてしまう。
「……へ、陛下。そんな貴重なものを、私のような者に。……畏れ多すぎて、かえって病状が悪化しそうですわ! どうか、どうか他の方のために……!」
「見よ、カシアン! 自分の命が救われるというのに、他者を優先するこの謙虚さ! これぞ真の聖女ではないか!」
国王は感動に目を潤ませ、カシアンもまた、深い感銘を受けたようにエルナを見つめた。
「エルナ……。お前はどこまで……。分かった。陛下、その聖遺物、ありがたく頂戴する。これでエルナが助かるなら、私は一生陛下に忠誠を誓おう」
(あああ……話がどんどん最悪の方向に進んでいくわ!)
* * *
国王が満足げに去った後。
エルナは、カシアンの腕の中でぐったりとしていた。
「エルナ、喜べ。聖遺物が届けば、もう死を恐れる必要はない。お前は私のそばで、永遠に贅沢を享受できるのだ」
カシアンは、エルナの額に優しく口づけを落とした。その瞳には、もはや「契約相手」への興味ではなく、狂気にも似た深い愛と救済への願いが宿っている。
(どうしよう。聖遺物が届く前に、本当に『死んだふり』をして消えるしかない……。でも、今の公爵邸は騎士団に包囲されてるし、カシアン様は私のトイレまでついてこようとするし、物理的に逃げ道がない!)
あらすじにある「逃げ回る日常」は、今や「国家ぐるみの監視」へと進化していた。
エルナは、差し出された最高級のメロン(王室からの見舞い品)を口にしながら、冷や汗が止まらなかった。
「……あの、カシアン様。聖遺物を使う前に、一度、一人で静かにお祈りをしたいのですけれど……」
「駄目だ。お前が祈っている間に魂が天へ昇ってしまったらどうする。祈るなら、私の腕の中でしろ。お前の祈りは、私が直接、神にねじ込んでやる」
(神様も迷惑だわ、そんなの!)
エルナの「死ぬ死ぬ詐欺」は、ついに引き返せない一線を越えてしまった。
聖女として崇められ、王家に守られ、執着公爵に抱きしめられる毎日。
健康になればなるほど死罪に近づき、愛されれば愛されるほど自由が遠のく。
「……ふふ、ふふふ……」
「エルナ? どうした、突然笑い出して。やはり発熱が……」
「いえ、あまりに幸せすぎて、気が変になりそうですわ」
(本音:もう笑うしかないわ、この状況!)
エルナは、カシアンの広い胸に顔を埋めた。
本当の病気よりも恐ろしい「溺愛」という名の不治の病に侵されているのは、果たして自分なのか、それともこの公爵様なのか。
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