​『支配者の美学―女たちの「誠意」を査定する男―』

まさき

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​基盤の解体(ファウンデーション・リセット)

​第1話:落日の「氷の女王」―営業エースが晒した純白の誠意―(後編)

​第1話:落日の「氷の女王」―営業エースが晒した純白の誠意―(後編)

​駅前の喧騒から少し離れた、完全個室が売りの居酒屋。
薄暗い照明が、隠れ家のような淫靡さを演出している。僕は予約していた一番奥の席で、琥珀色のウイスキーをゆっくりと転がしていた。
​約束の19時を5分ほど過ぎた頃、引き戸が控えめに開いた。
「……お待たせいたしました」
現れた彼女は、昼間の隙のない姿とは少し違っていた。
黒のスーツはそのままだが、髪が心なしか乱れ、化粧も直した跡がある。何より、あの「氷の女王」と呼ばれた鋭い眼光はどこにもなく、怯えた仔鹿のような瞳で僕を伺っている。
​「座りなよ。仕事の後の一杯は格別だろう?」
僕はあえてビジネスライクな笑顔で、対面の席を指差した。
彼女は言葉少なに腰を下ろすと、運ばれてきたビールに口をつけた。震える手でジョッキを握る彼女の指先には、昼間のあの、スカートの裾を握りしめていた感覚がまだ残っているに違いない。
​「……それで、商談の続き、でしたよね。……私、これ以上何をすれば、納得していただけるんですか?」
酒の力を借りてか、彼女が単刀直入に切り出してきた。自暴自棄に近い、投げやりな声。
「焦らなくていい。査定はまだ始まったばかりだ」
僕はグラスを置き、彼女の目を真っ直ぐに見つめた。
「君は、自分がまだ『選べる立場』にいると思っているようだけど、それは大きな間違いだよ。君の会社の数字、そして君自身の首……。それらを繋ぎ止めておける唯一の糸を握っているのは、僕だ」
​彼女の顔から、さらに血の気が引いていく。
「……わかっています。だから、ここに来ました。……何でも、します。あなたが望むことなら……」
「そうか。じゃあ、まずはその『高級な武装』を一つ、解いてもらおうか」
​僕は彼女が腕に巻いている、分不相応なブランド時計を指差した。
「それを、今すぐここで外して。僕に差し出しなさい。それが君の虚栄心の象徴なら、まずはそれを僕に預けることが、本当の意味での『誠意』の第一歩だ」
彼女は一瞬、自分の手首を愛おしむように押さえたが、やがて諦めたようにベルトを外した。
カチリ、と硬質な音がして、数百万はするであろう時計がテーブルに置かれる。
​「いいよ。……さて、次は体の方だ」
僕は立ち上がり、彼女の隣に移動した。狭い個室に、僕の威圧感が充満する。
「昼間は『白』を見せてくれたね。……でも、夜はそれだけじゃ足りない。君がどれだけ僕の支配を受け入れる覚悟があるのか、その『深さ』を見せてもらいたいんだ」
​僕は彼女の耳元で囁く。
「この個室、鍵はかからないけれど、人は来ない。……今からそのスーツを脱いで、昼間に見せた『白』だけになりなよ。そこで正座して、僕が飲み終えるまで、その姿を晒し続けるんだ」
​「……っ、そんな……ここで……」
彼女の肩が激しく上下する。外からは他の客の笑い声が聞こえてくる境界線一つ向こう側で、彼女は震える手つきでボタンを外し、ついに床に黒い上着が落ちた。
​しかし、僕の査定はそれだけでは終わらない。
「……下着姿を晒しただけで、ノルマ達成だとでも思ったのかい?」
「……え……?」
「君の『誠意』は、そんなに安いものだったのかな。この状況、この格好……。ここがどこか、忘れていないか?」
​僕は彼女の背後に回り込み、真っ白なレースの縁を指先でなぞった。
「……っ、ぁ……! お、お願いします……それだけは……」
「お願いする相手が違うだろう。……さあ、自分から僕の指を、そこへ導いて」
​彼女は唇を噛み締め、溢れそうになる涙を堪えながら、震える手で僕の手を自分の股の間へと導いた。
ストッキング越しではない、生身の熱。
昼間、会議室で遠目から眺めていた「白」の中に、僕の指がゆっくりと侵入していく。
​「ひっ……ぁ、くっ……!」
指先が触れた瞬間、彼女の体が弓なりに反った。
「へぇ……。氷の女王なんて言われていても、中身はこんなに熱くて、素直じゃないか。……ほら、ここがこんなに濡れている。これが君の、本当の『誠意』の正体か?」
​「ち、がっ……それは、屈辱で……っ、ぁあ!」
僕が指を深く沈めると、彼女はもはや言葉にならぬ声を漏らし、僕の腕にしがみついた。かつて商談相手を冷徹にあしらっていた彼女が、今や僕の指先一つで、快楽と羞恥の泥沼に引きずり込まれている。
​「……君がどれだけ否定しても、体は僕の査定を『合格』だと告げているよ」
僕は指を抜き、その濡れた光沢を彼女の目の前に突きつけた。
彼女は顔を真っ赤に染め、力なく畳に突っ伏した。
​「……今日はここまでにしておこう。この後の予定をキャンセルしてまで、君を壊すのは僕の趣味じゃない。……でも、次はもっと広い場所で、もっと深い査定をさせてもらうよ。わかったね?」
​「……はい……ご主人様……」
​その言葉は、彼女が自らの意志で口にした、完全な敗北の宣言だった。
僕は満足げに頷き、彼女の時計をポケットに仕舞うと、一度も振り返ることなく個室を後にした。
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