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精神の隷属(マインド・ディミネーション)
第5話:【新興宗教の教祖】―現人神の化けの皮を剥ぐ、禁断の信託― 【前編】
第5話:【新興宗教の教祖】―現人神の化けの皮を剥ぐ、禁断の信託―
【前編:高層ビルの聖域と、神の貸借対照表】
港区の一等地にそびえ立つ、ガラス張りの超高層ビル。
看板こそ出していないが、ここが信者数三百万を誇る巨大宗教法人の心臓部だ。
最新鋭のセキュリティを抜けた最上階。都会の喧騒から隔離されたそのフロアに、彼女はいた。
二代目教祖。
二十代後半という若さで亡き父の跡を継ぎ、三百万の信者の頂点に立った女だ。
メディアではその美貌とカリスマ性が持て囃され、政財界の重鎮たちも彼女の「託宣」を求めてこのビルを訪れる。
だが、僕は知っている。彼女が今、この豪華な玉座で何を恐れているかを。
「……お待たせしました、代表。我が社の戦略監査室の者です」
応接室の重厚な扉を開くと、白銀の法衣を纏った教祖が、静かに僕を見据えた。
その瞳はすべてを見透かすかのように冷徹に澄んでいるが、僕の前ではその仮面も無意味だ。
「……商社の方が、私にどのようなご用件でしょう。これ以上の寄付は、神の教えに背くことになりますよ」
「寄付? いえ、今日は『返済』の話をしに来たのですよ、教祖」
僕は彼女の目の前に、一通の極秘融資リストを突きつけた。
「……先代が強行した、全国的な布教拠点の拡大。その不動産取得に充てられた莫大な資金。……その出資元を辿れば、最終的には我が商社のペーパーカンパニーに行き着く。つまり、この『聖域』の家主は僕たちだ」
彼女の白い指先が、微かに震える。
「……それは、正規の手続きを踏んだ融資のはずです。滞りなくお返ししています」
「ええ、表面上はね。ですが、あなたが海外の巡礼と称して送金している多額の資金……。あれは還流(キックバック)ですよね? 教団の非課税特権を利用した、政界の大物への裏金工作だ」
僕は彼女の顔を覗き込み、冷たく囁いた。
「……国税は、僕たちがこの情報を流すのを待っている。これが表に出れば、教団は解散、あなたは教祖から、ただの詐欺師に転落だ。……あなたが熱心に信奉している与党幹事長も、真っ先にあなたを切り捨てるでしょうね」
彼女の瞳が、現実的な恐怖に染まっていく。
「……何を、望んでいるの……っ」
「商談ですよ。……あなたは今後も『教祖』でいなさい。ただし、僕の飼い犬としてだ。……まずは、その重たい法衣を脱ぎなさい。……三百万人の信仰を集めるその肉体が、どれほどの価値を持っているか、僕が直々に『査定』してあげる」
僕は彼女の肩に手を置き、逃げ場のない高層階의密室で、ゆっくりとその法衣に指をかけた。
今、三百万人の頂点に立つ教祖が、現実的な「カネと利権」の鎖によって、無残に引きずり下ろされようとしていた。
【前編:高層ビルの聖域と、神の貸借対照表】
港区の一等地にそびえ立つ、ガラス張りの超高層ビル。
看板こそ出していないが、ここが信者数三百万を誇る巨大宗教法人の心臓部だ。
最新鋭のセキュリティを抜けた最上階。都会の喧騒から隔離されたそのフロアに、彼女はいた。
二代目教祖。
二十代後半という若さで亡き父の跡を継ぎ、三百万の信者の頂点に立った女だ。
メディアではその美貌とカリスマ性が持て囃され、政財界の重鎮たちも彼女の「託宣」を求めてこのビルを訪れる。
だが、僕は知っている。彼女が今、この豪華な玉座で何を恐れているかを。
「……お待たせしました、代表。我が社の戦略監査室の者です」
応接室の重厚な扉を開くと、白銀の法衣を纏った教祖が、静かに僕を見据えた。
その瞳はすべてを見透かすかのように冷徹に澄んでいるが、僕の前ではその仮面も無意味だ。
「……商社の方が、私にどのようなご用件でしょう。これ以上の寄付は、神の教えに背くことになりますよ」
「寄付? いえ、今日は『返済』の話をしに来たのですよ、教祖」
僕は彼女の目の前に、一通の極秘融資リストを突きつけた。
「……先代が強行した、全国的な布教拠点の拡大。その不動産取得に充てられた莫大な資金。……その出資元を辿れば、最終的には我が商社のペーパーカンパニーに行き着く。つまり、この『聖域』の家主は僕たちだ」
彼女の白い指先が、微かに震える。
「……それは、正規の手続きを踏んだ融資のはずです。滞りなくお返ししています」
「ええ、表面上はね。ですが、あなたが海外の巡礼と称して送金している多額の資金……。あれは還流(キックバック)ですよね? 教団の非課税特権を利用した、政界の大物への裏金工作だ」
僕は彼女の顔を覗き込み、冷たく囁いた。
「……国税は、僕たちがこの情報を流すのを待っている。これが表に出れば、教団は解散、あなたは教祖から、ただの詐欺師に転落だ。……あなたが熱心に信奉している与党幹事長も、真っ先にあなたを切り捨てるでしょうね」
彼女の瞳が、現実的な恐怖に染まっていく。
「……何を、望んでいるの……っ」
「商談ですよ。……あなたは今後も『教祖』でいなさい。ただし、僕の飼い犬としてだ。……まずは、その重たい法衣を脱ぎなさい。……三百万人の信仰を集めるその肉体が、どれほどの価値を持っているか、僕が直々に『査定』してあげる」
僕は彼女の肩に手を置き、逃げ場のない高層階의密室で、ゆっくりとその法衣に指をかけた。
今、三百万人の頂点に立つ教祖が、現実的な「カネと利権」の鎖によって、無残に引きずり下ろされようとしていた。
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