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第13話「伯爵の、いつもと違う顔」
第13話「伯爵の、いつもと違う顔」
五月になった。
北の春は短いとダリウスが言った通り、四月の終わりから急に緑が濃くなって、城の中も外も、冬とは別の場所のように変わっていた。集落の領民たちが畑仕事を始めた。騎士団の新入りたちは訓練に入った。薬師の候補者から返事が来た。
忙しかったが、忙しさの種類が変わっていた。冬は問題を潰すための忙しさだった。今は、次を作るための忙しさだ。
朝の報告が、少し変わっていた。
以前は私が話して、ダリウスが聞いて、短く判断を返す、という形だった。今は途中でダリウスが自分から質問してくることが増えた。薬師の件はどう進んでいるか、集落の畑仕事の状況はどうか、新入りの騎士たちはどう見えているか。聞き方が変わった、というより、聞きたいことが増えた、という感じだった。
*
問題が起きたのは、五月の半ばだった。
薬師の候補者が一人、辺境への赴任を断ってきた。理由は「辺境は遠すぎる」だった。もう一人の候補者はまだ返事がなかった。
私は朝の報告でそれを伝えた。
「候補をもう一人探します。王都の医師会に当たってみます」
「伝手はあるか」
「実家の父が知り合いを持っているかもしれません。手紙を出してみます」
「わかった」
ダリウスは少し間を置いた。
「実家に手紙は出しているか」
「月に一度、報告を兼ねて出しています」
「返事は来るか」
「父からは来ます。母は字が苦手なので、父の手紙に一行添えてきます」
ダリウスは何かを考えるような顔をした。
「会いたいと思うか」
私は少し考えた。
「会えれば嬉しいですが、今はここでやることがあるので」
「王都に行く機会があれば、寄れる」
「王都に行く予定がありますか」
「夏に一度、報告のために行く。同行するか」
私は少し驚いた。ダリウスから同行を誘ってきたのは、初めてだった。
「一緒に行っていいんですか」
「伯爵夫人が王都に出ることは、おかしくない」
「それは、実務上の」
「そうだ」
「……また使いましたね」
「……使った」
「わかりました。行きます」
「父親には、顔を見せてやれ」
それだけ言って、ダリウスは次の書類を開いた。
私はノートに書きながら、少し温かい気持ちになった。それが何かは、わかっていた。でも、まだ言葉にするつもりはなかった。
*
午後、執務室で薬師の件を進めていたら、廊下が騒がしくなった。
ミレイが顔を出した。
「奥様、訓練場で少し揉めているみたいで」
「揉め事ですか」
「新入りの騎士の一人が、古参の騎士と言い合いをしていると」
私は立ち上がった。
「グレンさんは」
「今外出中で、カイルさんが困っているみたいです」
訓練場に行くと、人が輪を作っていた。中心に二人。古参の騎士と、新入りの騎士。新入りの方はヴィクターだった。
カイルが私を見て、安堵した顔をした。
「奥様、止めようとしたんですが」
「何があったんですか」
「訓練の指示の件で、意見が食い違ったみたいで」
私は輪の中心に進んだ。二人が私に気づいた。
「何がありましたか」
古参の騎士が答えた。
「新入りが訓練の指示に従わなかった件です。奥様には関係ない話ですので」
「伯爵不在の城で揉め事があれば、私に関係があります」
古参の騎士は少し黙った。
ヴィクターがこちらを見ていた。気まずそうな顔をしていた。
「話を聞きます。一人ずつ、順番に」
古参の騎士から話を聞いた。指示の内容の話だった。ヴィクターが王都式のやり方を主張して、辺境式のやり方と食い違った、ということだった。
ヴィクターからも話を聞いた。王都ではこうやっていた、という話だった。
「レインズ騎士」
「はい」
「ここは辺境です。王都とは地形も気候も違います。辺境式のやり方には、辺境の理由があります」
「それはわかりますが」
「わかるなら、まず従ってください。理由を理解してから意見を言うのが筋です」
ヴィクターは黙った。
「王都でのやり方が優れている部分もあるかもしれません。でもそれはここに慣れてから提案することです」
「……わかりました」
古参の騎士に向いた。
「貴方も、最初から頭ごなしにではなく、理由を説明してあげてください」
「……はい」
「以上です」
輪が解けた。私はカイルと一緒に執務室に戻った。
*
夕方、ダリウスが戻ってきた。
報告の場で、訓練場の件を伝えた。ダリウスは黙って聞いた。
「レインズが絡んでいたか」
「はい。王都式にこだわった件です。悪意はないと思いますが、まだ慣れていないのでしょう」
「お前が収めたのか」
「その場にいたので」
ダリウスは少し間を置いた。
「グレンに話しておく」
「お願いします。あと、ヴィクターには少し目を向けておいた方がいいかもしれません。浮いていると問題が大きくなる前に」
「ヴィクター、と呼ぶのか」
私は少し驚いた。
「昔からの呼び方が出てしまいました。レインズ騎士と呼ぶべきでしたね」
「……どちらでもいい」
ダリウスの声が少し低かった。低いというより、平坦だった。感情が抜けた声だった。
「ダリウス様」
「何だ」
「気になりましたか」
「何が」
「私がヴィクターと呼んだことが」
長い沈黙があった。
ダリウスは書類に視線を落としていた。
「……気になった」
今度は私が黙る番だった。
ダリウスが正直に言うのは、今でも珍しかった。でも珍しくなくなってきている、とも思った。
「ごめんなさい」
「謝ることではない」
「でも、気にさせてしまったので」
「俺の問題だ」
私はしばらく考えた。
「これからはレインズ騎士と呼びます」
「……それは」
「ダリウス様が気になるなら、そうします」
ダリウスはこちらを見た。何か言いたそうな顔をして、やめた。それからまた書類に視線を戻した。
「……好きにしろ」
いつもの言葉だったが、今日は少し違う重さがあった。
*
夜、部屋に戻ってから、私はノートを開いた。
薬師の件、王都同行の件、訓練場の揉め事の件。書くことはいつも通りあった。
でも今日は、書くより先に少し窓の外を見た。
ダリウスが気になったと言った。自分から言った。
この半年で、この人はずいぶん正直になった。それとも、最初からこういう人で、少しずつ見せてくれるようになっただけなのかもしれない。
どちらでも、同じことかもしれない。
私は窓を閉めて、ノートに向かった。
書くべきことが、今日は少し多かった。
第13話 了
五月になった。
北の春は短いとダリウスが言った通り、四月の終わりから急に緑が濃くなって、城の中も外も、冬とは別の場所のように変わっていた。集落の領民たちが畑仕事を始めた。騎士団の新入りたちは訓練に入った。薬師の候補者から返事が来た。
忙しかったが、忙しさの種類が変わっていた。冬は問題を潰すための忙しさだった。今は、次を作るための忙しさだ。
朝の報告が、少し変わっていた。
以前は私が話して、ダリウスが聞いて、短く判断を返す、という形だった。今は途中でダリウスが自分から質問してくることが増えた。薬師の件はどう進んでいるか、集落の畑仕事の状況はどうか、新入りの騎士たちはどう見えているか。聞き方が変わった、というより、聞きたいことが増えた、という感じだった。
*
問題が起きたのは、五月の半ばだった。
薬師の候補者が一人、辺境への赴任を断ってきた。理由は「辺境は遠すぎる」だった。もう一人の候補者はまだ返事がなかった。
私は朝の報告でそれを伝えた。
「候補をもう一人探します。王都の医師会に当たってみます」
「伝手はあるか」
「実家の父が知り合いを持っているかもしれません。手紙を出してみます」
「わかった」
ダリウスは少し間を置いた。
「実家に手紙は出しているか」
「月に一度、報告を兼ねて出しています」
「返事は来るか」
「父からは来ます。母は字が苦手なので、父の手紙に一行添えてきます」
ダリウスは何かを考えるような顔をした。
「会いたいと思うか」
私は少し考えた。
「会えれば嬉しいですが、今はここでやることがあるので」
「王都に行く機会があれば、寄れる」
「王都に行く予定がありますか」
「夏に一度、報告のために行く。同行するか」
私は少し驚いた。ダリウスから同行を誘ってきたのは、初めてだった。
「一緒に行っていいんですか」
「伯爵夫人が王都に出ることは、おかしくない」
「それは、実務上の」
「そうだ」
「……また使いましたね」
「……使った」
「わかりました。行きます」
「父親には、顔を見せてやれ」
それだけ言って、ダリウスは次の書類を開いた。
私はノートに書きながら、少し温かい気持ちになった。それが何かは、わかっていた。でも、まだ言葉にするつもりはなかった。
*
午後、執務室で薬師の件を進めていたら、廊下が騒がしくなった。
ミレイが顔を出した。
「奥様、訓練場で少し揉めているみたいで」
「揉め事ですか」
「新入りの騎士の一人が、古参の騎士と言い合いをしていると」
私は立ち上がった。
「グレンさんは」
「今外出中で、カイルさんが困っているみたいです」
訓練場に行くと、人が輪を作っていた。中心に二人。古参の騎士と、新入りの騎士。新入りの方はヴィクターだった。
カイルが私を見て、安堵した顔をした。
「奥様、止めようとしたんですが」
「何があったんですか」
「訓練の指示の件で、意見が食い違ったみたいで」
私は輪の中心に進んだ。二人が私に気づいた。
「何がありましたか」
古参の騎士が答えた。
「新入りが訓練の指示に従わなかった件です。奥様には関係ない話ですので」
「伯爵不在の城で揉め事があれば、私に関係があります」
古参の騎士は少し黙った。
ヴィクターがこちらを見ていた。気まずそうな顔をしていた。
「話を聞きます。一人ずつ、順番に」
古参の騎士から話を聞いた。指示の内容の話だった。ヴィクターが王都式のやり方を主張して、辺境式のやり方と食い違った、ということだった。
ヴィクターからも話を聞いた。王都ではこうやっていた、という話だった。
「レインズ騎士」
「はい」
「ここは辺境です。王都とは地形も気候も違います。辺境式のやり方には、辺境の理由があります」
「それはわかりますが」
「わかるなら、まず従ってください。理由を理解してから意見を言うのが筋です」
ヴィクターは黙った。
「王都でのやり方が優れている部分もあるかもしれません。でもそれはここに慣れてから提案することです」
「……わかりました」
古参の騎士に向いた。
「貴方も、最初から頭ごなしにではなく、理由を説明してあげてください」
「……はい」
「以上です」
輪が解けた。私はカイルと一緒に執務室に戻った。
*
夕方、ダリウスが戻ってきた。
報告の場で、訓練場の件を伝えた。ダリウスは黙って聞いた。
「レインズが絡んでいたか」
「はい。王都式にこだわった件です。悪意はないと思いますが、まだ慣れていないのでしょう」
「お前が収めたのか」
「その場にいたので」
ダリウスは少し間を置いた。
「グレンに話しておく」
「お願いします。あと、ヴィクターには少し目を向けておいた方がいいかもしれません。浮いていると問題が大きくなる前に」
「ヴィクター、と呼ぶのか」
私は少し驚いた。
「昔からの呼び方が出てしまいました。レインズ騎士と呼ぶべきでしたね」
「……どちらでもいい」
ダリウスの声が少し低かった。低いというより、平坦だった。感情が抜けた声だった。
「ダリウス様」
「何だ」
「気になりましたか」
「何が」
「私がヴィクターと呼んだことが」
長い沈黙があった。
ダリウスは書類に視線を落としていた。
「……気になった」
今度は私が黙る番だった。
ダリウスが正直に言うのは、今でも珍しかった。でも珍しくなくなってきている、とも思った。
「ごめんなさい」
「謝ることではない」
「でも、気にさせてしまったので」
「俺の問題だ」
私はしばらく考えた。
「これからはレインズ騎士と呼びます」
「……それは」
「ダリウス様が気になるなら、そうします」
ダリウスはこちらを見た。何か言いたそうな顔をして、やめた。それからまた書類に視線を戻した。
「……好きにしろ」
いつもの言葉だったが、今日は少し違う重さがあった。
*
夜、部屋に戻ってから、私はノートを開いた。
薬師の件、王都同行の件、訓練場の揉め事の件。書くことはいつも通りあった。
でも今日は、書くより先に少し窓の外を見た。
ダリウスが気になったと言った。自分から言った。
この半年で、この人はずいぶん正直になった。それとも、最初からこういう人で、少しずつ見せてくれるようになっただけなのかもしれない。
どちらでも、同じことかもしれない。
私は窓を閉めて、ノートに向かった。
書くべきことが、今日は少し多かった。
第13話 了
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