悪魔の誓い

遠月 詩葉

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騒動の中心にいたのは、まだ二十代と見える青年と、中年くらいのおばさんだった。

「どっちが先にぶつかってきたのかなんてどうでも良いんだよ!とっとと土下座でもして謝りやがれ!」
「なんで私が謝んなきゃなんないんだい!土下座するってんならそっちだろうが!」

なるほど、どうやら男性が女性にぶつかった事から喧嘩に発展したらしい。しかし、いくらなんでも過激すぎではないか…?

「その顔を風船みたいに血みどろに膨らませたくねえならここで退いたほうが身のためだぜ?」
「あんたこそ、この包丁で捌かれたいようだねえ?」

なんでそうなった!?流石にこれはおかしい。横に並ぶ二人もそれに気づいたようで、慌てて止めに入る。

「ちょ、ちょ!落ち着いてください!何もそこまですることないでしょう!?」
「なんだてめぇは!お前からぶっ殺されてぇのか!」
「邪魔だよ!とっとと失せな!」
「わっ!?」

一瞬視界が白く染まり、次いで咳き込んだ。二人に勢いよく突き飛ばされたと分かったのは数度深呼吸した後だった。

「メノウ!」
「お姉ちゃん!?」

顔を上げると、慌てた様子で駆けてくるセインとディラン君、そして少し離れた場所で尚も言い争っている二名の姿が視界に入る。どうやら道の真ん中から端まで一気に吹き飛んだらしい。
…いくら同時に突き飛ばされたからと言って、普通ここまでパワーが出るものだろうか。やっぱり何かがおかしい。

「大丈夫ですか!?」
「あいつら…!」
「大丈夫だから…落ち着いて…ケホッ!…ディラン君、あの二人を一度落ち着かせたいから、頼める?」
「お姉ちゃん…分かった。…「ショックウェーブ」!」

彼が唱えた魔法が二人を中心に円形に広がり、そのまま微弱な電流を…微弱…?

「「アバババババベボオ!?」」
「ディラン君!?ストップストップ!麻痺させるだけだからもうそのくらいで!」
「チッ!」

…舌打ちした?したよね絶対!意外とこの子腹黒だったりするのかな…。ともかく、予想よりかなりキツイ電流を流された二人はそのまま地面に這いつくばり気絶した。後は道の端に避けておくくらいしか出来ることはない。

「…とりあえず、シャーネさんから言われた通り、この街に建てられてる自衛隊の仮拠点まで行こう。」
「そうですね。」

鞄に入ったシャーネさんからの手紙を届けるためにも、私達は先を急いだ。
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