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夜道
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「もう皆、寝てるよね…?」
コソコソ。扉を静かに開けたイーヴァは、キョロキョロ周りを確認し、そのまま外に向かった。
「にゃ~!」
「お、いたいた!お腹空いたよね。今日も持ってきたよ!」
昔偶然、通りがけに見かけた黒猫。食べるものがないらしく、痩せ細っていた。今では少し、太ってきた気がする。
「…なんで、お前はご飯がないんだい?」
純粋な疑問。この街に生きる存在は皆、毎日恵みを貰っているはずなのに。それは、動物も例外では無い。
初めて“飢え”という概念を知ったイーヴァにとって、酷く衝撃的だった。
「にゃー!」
「もう良いの?」
食べやすいようにちぎった、パンの切れ端。見れば三粒ほどを綺麗に平らげ、残り半分は口をつけず残していた。
すりぃっと足に額を擦り付け、そのままイーヴァを見上げながらウロウロと回りをグルグルし始める。
「ふふ、私はもう自分の分は食べたから大丈夫なのに。」
「にゃー!」
いつもこうだ。目の前でイーヴァが食べないと不安になる。訴える視線は止まない。
「ありがとう。お前は優しいねぇ!」
「にゃ!」
口の中に残りを放り込むと、黒猫は満足したのか毛繕いを始める。
「…その子、君が世話してたんだ。」
「えっ!?」
驚いて振り返ると、猫と似た黒いセミロングヘアに、茶色い目をした女の子が立っていた。
左の目には青バラを模しているのだろうか?派手ながらも可愛い眼帯をつけ、水色を基調としたクラシカルロリータを着ている。
(何その服…初めて見た。)
ロリータファッションを知らないイーヴァは、その派手さと可愛さ、心が踊るヒラヒラの装飾に釘付けとなった。
「いいなぁ…。」
ボソリ。服を見つめながら呟いた一言に、少女は眉を上げる。
「…見る目あるじゃん。」
ぶっきらぼうに、照れを隠しながら一言。ハッと我に返ったイーヴァは、慌てて言い訳を並べ始めた。
「あわわ…!こ、この事は誰にも言わないで!寝る時間なのは分かってるんだけど、この子にご飯あげるためなの…!」
「にゃおん?」
あたふたし始めたイーヴァを、不思議そうに見上げる黒猫。
「はぁ…。それを言ったらボクの方こそ、誰にも言わないで貰えると助かるんだけど?」
「え、あ…確かに?そういえばそうじゃない!!」
「今気づいたのか…。」
「…えへ。そういえば、あなたはどうしてここに?」
無理矢理にでも話を逸らす。少女もそれを察知していたが、そこは大人の対応を見せた。
「その子、ボクの友達なんだ。」
「え、そうなの!?一年くらい前に、すごく痩せ細ってるのを見かけて…それからずっとご飯あげに来てたけど、初めて会ったよね?」
そんな派手な服を身にまとっているなら、すれ違っただけでも印象に残るだろう。しかし、イーヴァの記憶に少女の姿はなかった。
「だろうね。いつもなら違う時間に来るんだけど、今日はたまたま早く来ちゃったんだ。」
「そうなんだ…。でも、あまり夜更かししちゃダメだよ!徳が減っちゃうからね!」
「……そうだね。」
先程から無表情な少女は、ひと際“無”になりながら一言返す。イーヴァはそれを不思議に思ったが、深くは聞かなかった。
「あ!そういえば名乗ってなかったね。私はイーヴァ!あなたは?違う棟の子だよね?」
この第三層に住む子供達は、いくつかの棟に割り振られ、そこで日々学んだり生活をしている。イーヴァは青いレンガで出来た棟…通称ブルーの所属だ。ちょうど、彼女の瞳と同じ色。
「…ボクはアム。今まで会ったことないから、そうだろうね。」
「アムちゃんか!ねぇ、この子繋がりでせっかく出会ったわけだし、たまにこうやって会わない?」
キラキラ笑顔で提案するイーヴァの足元をグルグルする黒猫。何か期待を込めた目でアムの方をチラチラ見ている。
「良いけど…。」
「やった!これからよろしくね!」
「にゃ~!」
黒猫が嬉しそうに鳴いた。
コソコソ。扉を静かに開けたイーヴァは、キョロキョロ周りを確認し、そのまま外に向かった。
「にゃ~!」
「お、いたいた!お腹空いたよね。今日も持ってきたよ!」
昔偶然、通りがけに見かけた黒猫。食べるものがないらしく、痩せ細っていた。今では少し、太ってきた気がする。
「…なんで、お前はご飯がないんだい?」
純粋な疑問。この街に生きる存在は皆、毎日恵みを貰っているはずなのに。それは、動物も例外では無い。
初めて“飢え”という概念を知ったイーヴァにとって、酷く衝撃的だった。
「にゃー!」
「もう良いの?」
食べやすいようにちぎった、パンの切れ端。見れば三粒ほどを綺麗に平らげ、残り半分は口をつけず残していた。
すりぃっと足に額を擦り付け、そのままイーヴァを見上げながらウロウロと回りをグルグルし始める。
「ふふ、私はもう自分の分は食べたから大丈夫なのに。」
「にゃー!」
いつもこうだ。目の前でイーヴァが食べないと不安になる。訴える視線は止まない。
「ありがとう。お前は優しいねぇ!」
「にゃ!」
口の中に残りを放り込むと、黒猫は満足したのか毛繕いを始める。
「…その子、君が世話してたんだ。」
「えっ!?」
驚いて振り返ると、猫と似た黒いセミロングヘアに、茶色い目をした女の子が立っていた。
左の目には青バラを模しているのだろうか?派手ながらも可愛い眼帯をつけ、水色を基調としたクラシカルロリータを着ている。
(何その服…初めて見た。)
ロリータファッションを知らないイーヴァは、その派手さと可愛さ、心が踊るヒラヒラの装飾に釘付けとなった。
「いいなぁ…。」
ボソリ。服を見つめながら呟いた一言に、少女は眉を上げる。
「…見る目あるじゃん。」
ぶっきらぼうに、照れを隠しながら一言。ハッと我に返ったイーヴァは、慌てて言い訳を並べ始めた。
「あわわ…!こ、この事は誰にも言わないで!寝る時間なのは分かってるんだけど、この子にご飯あげるためなの…!」
「にゃおん?」
あたふたし始めたイーヴァを、不思議そうに見上げる黒猫。
「はぁ…。それを言ったらボクの方こそ、誰にも言わないで貰えると助かるんだけど?」
「え、あ…確かに?そういえばそうじゃない!!」
「今気づいたのか…。」
「…えへ。そういえば、あなたはどうしてここに?」
無理矢理にでも話を逸らす。少女もそれを察知していたが、そこは大人の対応を見せた。
「その子、ボクの友達なんだ。」
「え、そうなの!?一年くらい前に、すごく痩せ細ってるのを見かけて…それからずっとご飯あげに来てたけど、初めて会ったよね?」
そんな派手な服を身にまとっているなら、すれ違っただけでも印象に残るだろう。しかし、イーヴァの記憶に少女の姿はなかった。
「だろうね。いつもなら違う時間に来るんだけど、今日はたまたま早く来ちゃったんだ。」
「そうなんだ…。でも、あまり夜更かししちゃダメだよ!徳が減っちゃうからね!」
「……そうだね。」
先程から無表情な少女は、ひと際“無”になりながら一言返す。イーヴァはそれを不思議に思ったが、深くは聞かなかった。
「あ!そういえば名乗ってなかったね。私はイーヴァ!あなたは?違う棟の子だよね?」
この第三層に住む子供達は、いくつかの棟に割り振られ、そこで日々学んだり生活をしている。イーヴァは青いレンガで出来た棟…通称ブルーの所属だ。ちょうど、彼女の瞳と同じ色。
「…ボクはアム。今まで会ったことないから、そうだろうね。」
「アムちゃんか!ねぇ、この子繋がりでせっかく出会ったわけだし、たまにこうやって会わない?」
キラキラ笑顔で提案するイーヴァの足元をグルグルする黒猫。何か期待を込めた目でアムの方をチラチラ見ている。
「良いけど…。」
「やった!これからよろしくね!」
「にゃ~!」
黒猫が嬉しそうに鳴いた。
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