反逆の銃口と、侵食の茨

遠月 詩葉

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考えてみればおかしな話だ。なぜ追放なのだろう。
人を****私のことは悪魔と呼び、銃を撃ってきたのに。
聞いたことがある。罪のない者を不必要に殺めたら、魂が穢れていくのだと。
下界に足を踏み出した瞬間、等しく黒を身にまとった罪人となる。だから楽園に住む人間は、ここから出ることは出来ない。

(だから…生かしたまま外に捨てる…?)

自分のように、****という大罪を犯さない限り、その場で始末出来ないから。
ノイズ混じりの思考が駆け巡ったあと、半テンポ遅れて「あれ?」と違和感を覚えた。

(私、何をしたんだっけ。)

わかっているはずなのに、思い出せない。そんな疑問を、また雑音が食む。

(…何を考えてたんだっけ?)

彼女の様子に気づかない男は、さらに続けた。

「罪とかなんだとかこじつけてるが。それはつまり、向こうにとって都合が悪いことに理由付けしてるだけだ。
力がないから、イエスマンじゃなくなったから、自分の頭で考えるようになったから。…従順な人形が欲しいだけの奴にゃ、そりゃ邪魔な存在だろうよ。」

フンッと鼻を鳴らす。都合が悪いから、テキトーな理由で追放された。憎むには十分すぎる動機。

「そう、なんだ…。」

何となく晴れない心を抱えながら、楽園の歪さに吐き気を覚える。
ずっと先の層にいる、まだ見ぬ両親も白に染まり切っているのだろう。
寂しさと悲しさ、そして少しの安堵。そんな姿を一生目にすることはないのだ。
会えなくてもいい。辛い現実に直面するより、夢は綺麗な夢のままで終わらせた方が幸せなこともある。
見た目14歳の少女は、たった一日でひと回りほども成長していた。

「さあ、次は第一層だ。ここがある意味、一番の難関。しっかりついて来いよ。」
「は、はい!」

第一層は、生まれたての赤子から10歳程度までの子供が住む場所。世話係の大人たちが、最も在住している。

「イーヴァ!?」

通り抜けた直後、早速見つかってしまった。彼女の、育ての親とも言える女性に。

「あ…。」

カチャリ。男が後ろで、銃を構えた音がする。力を持たないと言っていたのに、なぜ顕現できるのか。
そんな疑念もそこそこに、イーヴァは緊張で唾を飲み込む。

「なんでここに…順当に昇格してると聞いていたのに…。それに、後ろの男は誰!?真っ黒いローブ…おぞましい!」

ピシ…。どこか、とても近いところで。何かが壊れかけている。

「まさか、あなたが手引きしたの!?そんな…折角ここまで徳を積めたのに…!もうすぐ昇格できるはずだったのに!どうしてくれるのよ!!?」

本当の母のように、ずっと優しく寄り添ってくれていた女性の本性。
今にも掴みかかってきそうな、般若の形相。

(やめて…これ以上は…やめてよ…。)

「優秀なあなたをに育て切ったのに!どうしてよ!!せっかくの高得点が取り消されちゃうじゃない!」

ああ、そうか。ようやく腑に落ちた。
彼女も、先生たちも。皆、見ているものは同じだったのだ。
ピシ、ピシ…ヒビはより深く、再起不能なところまで到達しかけている。

「せめてここで巻き返さなきゃ…とんだ貧乏くじを引いたわ…。」

アムが使っているものよりも、ひと際大きく殺傷力の高そうな銃をこちらに向ける。
パリンッ!その瞬間、何かが、粉々になった。

「おい、逃げろ!」

ずっと感謝してきた、優しい人。
そんな恩人と同じ姿をしている、敵。

(やっつけなくちゃ…。)

「死ねぇ!」

バンッ!カツッ…。
勢いよく飛び出した弾丸が、地面をバウンドし、転がる。

「え…。」

自分と、ローブの男までもを360度囲み、護る盾。
いとも簡単に、殺意を跳ねのける強靭な障壁。

「…やっつけなくちゃ。」

カチャ。パシュッ…。

こもった、少し可愛い音を響かせる。イーヴァの手に握られた、小さい拳銃。

「か…ハ…ッ!」

胸に小さい穴を開け、敵は崩れ落ち…そのまま、ピクリとも動かなくなった。

「なんの騒ぎ…んなあ!?」

しかし、先ほどの女性が発した声に引き寄せられた虫が、群がり始める。

「これはまずいぞ…!」

男は自分の人生を諦めかけた。少女の豹変ぶりに驚くばかりで、人間の知恵と技術の結晶は全く日の目を見ていない。

「やっつけなくちゃ…!」

光が見えない淀んだ瞳で、虫たちにまた銃口を向けたーー。
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