7 / 10
第7話
しおりを挟む
翌朝の朝九時。電車は東京駅を出発して下田に向かった。
どこかの団体や家族連れで車内は込み合っている。シネマ同好会のメンバーもその中にいた。総員七名、気心の知れた女ばかりの旅である。同好会には男子学生も若干いるが華やいだ女たちの熱気にたじろぐのか途中から殆どが幽霊部員になってしまう。
今朝は集合時間に遅れるものも七名全員滞りなく出発したのだった。陽気に笑いざわめく女たちにまじって、浮かぬ顔をした芙美子もいた。奈美恵のことが気になって頭から離れない。昨夜はあの後、電話が長引きそうだったので、忍び足でトイレに行き、また同じようにして二階の自分の部屋に戻ったのだった。奈美恵がちひろから別れ話を持ち掛けられていることは確かである。だが彼女は執拗に拒んでいた。
朝、府も子が出かける時も自分の部屋にこもりきりだった。ドアの隙間から声をかけても、奈美恵はウーンと面倒臭そうにつぶやいたきり、布団の中から出てこない。遅刻しそうだったので芙美子は仕方なく家を出た。
「どうしたの、具合いでも悪いの。」
隣に座っている仲間の誰かの声で、芙美子は目をあけた。
「ごめんなさい、睡眠不足なの。着くまで少し眠っていいかしら。」
そう答えて、また両目を伏せる。すぐに眠ってしまい、しばらくして目が覚めたあとも狸寝入りをしていた。
「ねえ、中川君と芙美子さん、やっぱり別れちゃったのかな。」
詮索好きな仲間の、ひそひそ声が聞こえてこる。中川というのは、芙美子がこっぴどくふった中川孝雄のことだ。
「だって中川君、最近他の女の子とよく一緒にいるじゃない。ほらポニーテールのジーンズはいてる子。」
知ってる知ってると、他の仲間が口を揃えて答える。その女子学生を芙美子もよく見知っていた。孝雄との交際がまだ順調だった頃、彼自身漏らしていた。
「変な女だよなあ、しょっちゅう俺の方ジロジロ見てさ。ストーカーじゃねえのか、気味わりぃな。」
口では悪しざまに言いながら、彼はあまり気にしてないようだった。女にもてるから付きまとわれるのに免疫があるのだ。それが女に対して傲慢にばる由縁でもあった。二人の噂はほんの束の間、芙美子を不快にさせたが、すぐにどうでもよくなった。
お母さん大丈夫かしら。尋常でなかった母の様子を思い出し、芙美子はひどく不安だった。彼女の携帯に電話してみようか、と思ったが、今はやはりやめた。ちひろからのコールを何より待っているだろうから。
どこかの団体や家族連れで車内は込み合っている。シネマ同好会のメンバーもその中にいた。総員七名、気心の知れた女ばかりの旅である。同好会には男子学生も若干いるが華やいだ女たちの熱気にたじろぐのか途中から殆どが幽霊部員になってしまう。
今朝は集合時間に遅れるものも七名全員滞りなく出発したのだった。陽気に笑いざわめく女たちにまじって、浮かぬ顔をした芙美子もいた。奈美恵のことが気になって頭から離れない。昨夜はあの後、電話が長引きそうだったので、忍び足でトイレに行き、また同じようにして二階の自分の部屋に戻ったのだった。奈美恵がちひろから別れ話を持ち掛けられていることは確かである。だが彼女は執拗に拒んでいた。
朝、府も子が出かける時も自分の部屋にこもりきりだった。ドアの隙間から声をかけても、奈美恵はウーンと面倒臭そうにつぶやいたきり、布団の中から出てこない。遅刻しそうだったので芙美子は仕方なく家を出た。
「どうしたの、具合いでも悪いの。」
隣に座っている仲間の誰かの声で、芙美子は目をあけた。
「ごめんなさい、睡眠不足なの。着くまで少し眠っていいかしら。」
そう答えて、また両目を伏せる。すぐに眠ってしまい、しばらくして目が覚めたあとも狸寝入りをしていた。
「ねえ、中川君と芙美子さん、やっぱり別れちゃったのかな。」
詮索好きな仲間の、ひそひそ声が聞こえてこる。中川というのは、芙美子がこっぴどくふった中川孝雄のことだ。
「だって中川君、最近他の女の子とよく一緒にいるじゃない。ほらポニーテールのジーンズはいてる子。」
知ってる知ってると、他の仲間が口を揃えて答える。その女子学生を芙美子もよく見知っていた。孝雄との交際がまだ順調だった頃、彼自身漏らしていた。
「変な女だよなあ、しょっちゅう俺の方ジロジロ見てさ。ストーカーじゃねえのか、気味わりぃな。」
口では悪しざまに言いながら、彼はあまり気にしてないようだった。女にもてるから付きまとわれるのに免疫があるのだ。それが女に対して傲慢にばる由縁でもあった。二人の噂はほんの束の間、芙美子を不快にさせたが、すぐにどうでもよくなった。
お母さん大丈夫かしら。尋常でなかった母の様子を思い出し、芙美子はひどく不安だった。彼女の携帯に電話してみようか、と思ったが、今はやはりやめた。ちひろからのコールを何より待っているだろうから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ガーランド大陸魔物記 人類が手放した大陸の調査記録
#Daki-Makura
ファンタジー
※タイトルを変更しました。
人類が植物に敗北した大陸〝ガーランド大陸〟
200年が経ち、再び大陸に入植するためにガーランド大陸の生態系。特に魔物の調査が行われることになった。
これは調査隊として派遣されたモウナイ王国ファートン子爵家三男 アンネスト•ファートンが記した魔物に関する記録である。
※昔に他サイトで掲載した物語に登場するものもあります。設定なども使用。
※設定はゆるゆるです。ゆるくお読みください。
※誤字脱字失礼します。
※一部AIを使用。(AI校正、誤字検索、添削等)
※その都度、修正させてもらっています。ご迷惑をおかけしますがよろしくお願いします。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる