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新たな地にて
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最近の俺には悩みがある。
もちろんベッドに繋がれていることは当たり前だが、段々自分が何者なのかわからなくなってきた。
自分がアルフレッドの記憶をもつ山中盛幸なのか、山中盛幸の記憶をもつアルフレッドなのか。
段々と人格が曖昧になってきている気がする。
いや、恐らくしばらくすれば山中盛幸の人格はなくなり、記憶のみが残るのだろう。
まあ、そんなことはどうでもいい。
まずはこの状況を何とかせねば。
……とてつもなくトイレに行きたいのだ。
この歳でお漏らしとかしたら舌を噛みきって死のう。
「あのー!レインさーん!?」
するとすぐさまドアが開きレインが出てくる。
「どうしたの?アル?」
「いや、あのトイレに行きたいんですけど……。」
するとレインは近くの棚においてあった泌尿瓶を持ち、近寄ってくる。
「わかったわ。おとなしくしててね。」
「ちょっと!?流石にそれは勘弁を!」
しかしレインは止まる気配が無い。
ズボンに手をかけようとしている。
そして少し笑みを浮かべている。
ならば……。
「それ以上やったら嫌いになるぞ!」
「っ!」
レインの手が止まる。
冷静になったようだ。
流石にすこし顔を赤らめている。
「それは駄目ね。わかったわ。不本意だけど縄をほどくわ。トイレまで案内するからついてきて。」
そういうとレインは縄をほどいてくれた。
そのまま言われるがままにレインについて行き、用を足す。
「で、レイン。話をさせてもらうぞ。」
「……縄をほどかせるための演技だったのね。」
演技では無かったのだが、そういうことにしておこう。
レインの顔が怖い。
「今、王国はどうなっている?」
「……わかったわ。話すわ。」
腕を組み、不満を露にする。
昔はこんな子じゃ無かったのに一体何がそうさせたのだろうか。
そしてレインは王国で何があったか話してくれた。
俺が漂流している間に王国では事態が急変していた。
王がいなくなり、実質的な指導者の立場にいたアラン叔父上が突如として降伏を宣言。
王国は余力を残しながら帝国に組みすることとなった。
エルドニア貴族連合は旧王国領をそのまま有し、帝国への服従を誓った。
アラン叔父上は処刑されることになり、この前の帝都での騒ぎのせいもあり、叔父上は捕縛からわずか1日で公開処刑となった。
つまり、王国は事実上滅んだのである。
「そうか……。」
「あら、意外と反応薄いのね。」
自分でも少し驚いている。
まぁ、大体予想はついていたことだからかもしれないが想定よりも大分早かったが。
「こうしてはいられない。今すぐにでも王国へ行かなくては。」
俺は立ち上がり荷物をまとめに部屋に戻ろうとする。
「行ってどうするの。今王国は帝国の領土と同じ。行っても捕まって殺されるだけよ。」
「それでも、母上を蘇らせることはできる。王国の再興も大事かもしれないが、今は母上が先だ。止めても無駄だぞ。脱出用の小舟で無理矢理にでも行かせてもらうからな。」
そう言うとレインは暫くの沈黙の後、動き出す。
「全員帆を張れ!最速で城まで戻る!」
船員達から気合のこもった返事が聞こえてくる。
つまりは仲間達との合流を許可してくれたということだろう。
「……いいのか?」
「大変不本意だけどね。まぁ、どちらにせよまずは父上に顔を出してからにしなさい。父上もあなたのことを心配してたから。」
やはりレインは優しい。
少し、いやかなり束縛が強くなっている気もするが。
「やっぱりレインはいい女だな。」
「えっ!?」
レインがこちらを振り向く。
突然の発言に驚きを隠せない様子である。
「ん?何か変なこと言ったか?」
「……昔っからそういうところあるよね。アルって。」
声が小さくてよく聞こえなかった。
「何だって?」
「何でもない!」
そのまま何処かへ行ってしまった。
全く女心はよくわからない。
もちろんベッドに繋がれていることは当たり前だが、段々自分が何者なのかわからなくなってきた。
自分がアルフレッドの記憶をもつ山中盛幸なのか、山中盛幸の記憶をもつアルフレッドなのか。
段々と人格が曖昧になってきている気がする。
いや、恐らくしばらくすれば山中盛幸の人格はなくなり、記憶のみが残るのだろう。
まあ、そんなことはどうでもいい。
まずはこの状況を何とかせねば。
……とてつもなくトイレに行きたいのだ。
この歳でお漏らしとかしたら舌を噛みきって死のう。
「あのー!レインさーん!?」
するとすぐさまドアが開きレインが出てくる。
「どうしたの?アル?」
「いや、あのトイレに行きたいんですけど……。」
するとレインは近くの棚においてあった泌尿瓶を持ち、近寄ってくる。
「わかったわ。おとなしくしててね。」
「ちょっと!?流石にそれは勘弁を!」
しかしレインは止まる気配が無い。
ズボンに手をかけようとしている。
そして少し笑みを浮かべている。
ならば……。
「それ以上やったら嫌いになるぞ!」
「っ!」
レインの手が止まる。
冷静になったようだ。
流石にすこし顔を赤らめている。
「それは駄目ね。わかったわ。不本意だけど縄をほどくわ。トイレまで案内するからついてきて。」
そういうとレインは縄をほどいてくれた。
そのまま言われるがままにレインについて行き、用を足す。
「で、レイン。話をさせてもらうぞ。」
「……縄をほどかせるための演技だったのね。」
演技では無かったのだが、そういうことにしておこう。
レインの顔が怖い。
「今、王国はどうなっている?」
「……わかったわ。話すわ。」
腕を組み、不満を露にする。
昔はこんな子じゃ無かったのに一体何がそうさせたのだろうか。
そしてレインは王国で何があったか話してくれた。
俺が漂流している間に王国では事態が急変していた。
王がいなくなり、実質的な指導者の立場にいたアラン叔父上が突如として降伏を宣言。
王国は余力を残しながら帝国に組みすることとなった。
エルドニア貴族連合は旧王国領をそのまま有し、帝国への服従を誓った。
アラン叔父上は処刑されることになり、この前の帝都での騒ぎのせいもあり、叔父上は捕縛からわずか1日で公開処刑となった。
つまり、王国は事実上滅んだのである。
「そうか……。」
「あら、意外と反応薄いのね。」
自分でも少し驚いている。
まぁ、大体予想はついていたことだからかもしれないが想定よりも大分早かったが。
「こうしてはいられない。今すぐにでも王国へ行かなくては。」
俺は立ち上がり荷物をまとめに部屋に戻ろうとする。
「行ってどうするの。今王国は帝国の領土と同じ。行っても捕まって殺されるだけよ。」
「それでも、母上を蘇らせることはできる。王国の再興も大事かもしれないが、今は母上が先だ。止めても無駄だぞ。脱出用の小舟で無理矢理にでも行かせてもらうからな。」
そう言うとレインは暫くの沈黙の後、動き出す。
「全員帆を張れ!最速で城まで戻る!」
船員達から気合のこもった返事が聞こえてくる。
つまりは仲間達との合流を許可してくれたということだろう。
「……いいのか?」
「大変不本意だけどね。まぁ、どちらにせよまずは父上に顔を出してからにしなさい。父上もあなたのことを心配してたから。」
やはりレインは優しい。
少し、いやかなり束縛が強くなっている気もするが。
「やっぱりレインはいい女だな。」
「えっ!?」
レインがこちらを振り向く。
突然の発言に驚きを隠せない様子である。
「ん?何か変なこと言ったか?」
「……昔っからそういうところあるよね。アルって。」
声が小さくてよく聞こえなかった。
「何だって?」
「何でもない!」
そのまま何処かへ行ってしまった。
全く女心はよくわからない。
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