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旗揚げ
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「兄貴……。」
「どうした?かかってこい!お前が俺を討ち取らなければ戦は終わらんぞ!」
ルーゼンと戦えるような者は皆、各方面で戦っているのでそちらに行くことはできない。
そしてあまりにも時間がかかると兵力で劣っているこちらが負けるのは必然だろう。
しかし、ローゼンは動かない。
「……つまらんな。その程度か。」
「ローゼン殿!」
雑兵を蹴散らしながら声をかける。
しかし殺せとは言えなかった。
流石に実の兄弟を殺せとは言えない。
「……わかってる。」
ローゼンが何やら一人で呟いている。
「あぁ、わかってるさ。俺がやらなきゃ全滅だってことも、兄貴は裏切り者だってことも。……そして俺の忠誠はフレン様にある。」
その様子をみてその後何を言うのかわかったのかルーゼンは笑みを浮かべる。
「俺は馬鹿で兄貴みたいにややこしく考えるのは苦手だからよ。俺はやらなくちゃならんことをただひたすらにやり通すのみだ!」
ローゼンは思い切り振りかぶり、ルーゼンに斬りかかる。
ルーゼンは難なく受け流す。
「……ありがとうございます。ローゼン殿。」
向こうには聞こえていないだろうが感謝を述べておく。
「それでいいんだ!弟よ!」
「殺しはしない!投降してくれ!もう一度共に戦おう!」
鍔迫り合いになる。
「……ローゼン。」
すると何やらルーゼンがローゼンへと耳打ちをしている。
「何!?最初からそのつもりで……。」
「あぁ。」
すると二人は距離を取り、武器を収めた。
「全軍聞け!もはやこの戦い勝ち目は無くなった!」
ルーゼンが指をさす。
その方向には部隊が少数だが展開しているのが見えた。
「おお!間に合った!」
「ということはあれはジョナサンが連れてきた部隊!?」
ジョナサンの方を見ると頷いていた。
「もう少し時間はかかると思っておりましたが、なんとか間に合ったようです!」
「これ以上戦を続けてもいたずらに兵を失うのみだ!この場は撤退し、きたる決戦のために今は備えるのだ!全軍撤退!」
ルーゼンは撤退の号令を飛ばす。
その手際は見事なものであった。
「セラ殿!追撃を!」
ジゲンが追撃するように言ってくる。
が、それは難しいだろう。
それにローゼンとルーゼンのやり取りもある。
おそらく何かあるのだろう。
「いえ、我々も疲弊しています。これ以上追撃してもあまり意味はないでしょう。ひとまずこの場は勝てただけでも良しとしましょう。」
ジゲンは少し納得してない様子だったが、従ってくれるようだ。
そうこうしているうちに敵は撤退を始めた。
こちらも全軍撤収する。
そして全軍を一箇所に集めさせた。
「さぁ、ジゲン殿。勝鬨を。」
「わ、私がやるのか!?」
恐らくこの様子は全く考えていなかったのだろう。
「はい。この戦の総大将はジゲン殿です。王族の末裔であるあなたがいることを知っているのは各勢力でもリーダークラスの者しか知りません。今この場であなたが声を上げることで東の国の王族は途絶えてないと宣言するのです。そうすれば各勢力もこちらに靡くでしょう。」
「し、しかしこの戦の指揮を取っていたのはセラ殿でしょう!?ここはセラ殿が……。」
恥ずかしがっているのかなかなかやろうとしない。
少し腹が立って来たので、少し脅すことにする。
私はジゲンの両肩に手を置き(握力マックスで)笑顔で諭す。
「ジゲン殿?さぁ勝鬨を。」
「わ、わかった。わかったから手を離してくれ。い、痛い。すごく痛い!笑顔もなんか怖い!爺!助けてくれ!爺!?」
ヤン殿は近くにいるが身向きもしない。
まぁ、この状況を理解しているからだろう。
そして、私はすこし嫌がらせとして、手を離さない。
「す、すみませんでした!今すぐやります!」
流石にそろそろやめておこう。
私は手を離した。
「分かればよろしい。」
「ほ、本当に女子なのか?まるで握力はゴリラ並……。」
「何か?」
笑顔で顔を向ける。
もう特に何もするつもりもないが、女性に対してその発言をしたことを後悔はさせておこうと思う。
「い、いえ!なんでもありません!」
「皆のもの!聞け!私は東の国の王族が末裔!ジゲン・ワンである!逆賊マトウは王家を滅ぼしたつもりだっただろうが、私はまだ生きている!そしてマトウ家がこの東の国にもたらしたものは何だ!?平穏か!?いいや!奴がもたらしたものは混沌だ!奴等がクーデターを起こさなければこの東の国は平穏そのものであっただろう!皆が常日頃食べる物に苦しむことも!隣の勢力といつ戦になるか怯える日々も訪れなかった!」
先の戦に参陣した兵達がジゲンの、言葉に耳を傾ける。
初めてとは思えない演説である。
見事なものだ。
「私は私の家族を、友人を、そして民を苦しめた奴らを決して許しはしない!私はここに東の国の再興を、宣言する!」
刀を抜き放ち、空へ掲げる。
兵達からは歓声が上がる。
正直今回は様々な不安要素があったが、ジョナサンやローゼンのお陰でなんとかなった。
ヤン殿やジゲンにも感謝しなくてはならない。
まぁ、ジゲンには後でお説教が待っているのだが。
怒ってはいない。
うん、怒ってはいないよ?
まあ、それはともかくあとはローゼンのことだ。
あれ以来様子に変化は無いものの、あの時一体何を話していたのか、それは知っておくべきだろう。
まあ、何はともあれ初戦を制することが出来て良かった。
「どうした?かかってこい!お前が俺を討ち取らなければ戦は終わらんぞ!」
ルーゼンと戦えるような者は皆、各方面で戦っているのでそちらに行くことはできない。
そしてあまりにも時間がかかると兵力で劣っているこちらが負けるのは必然だろう。
しかし、ローゼンは動かない。
「……つまらんな。その程度か。」
「ローゼン殿!」
雑兵を蹴散らしながら声をかける。
しかし殺せとは言えなかった。
流石に実の兄弟を殺せとは言えない。
「……わかってる。」
ローゼンが何やら一人で呟いている。
「あぁ、わかってるさ。俺がやらなきゃ全滅だってことも、兄貴は裏切り者だってことも。……そして俺の忠誠はフレン様にある。」
その様子をみてその後何を言うのかわかったのかルーゼンは笑みを浮かべる。
「俺は馬鹿で兄貴みたいにややこしく考えるのは苦手だからよ。俺はやらなくちゃならんことをただひたすらにやり通すのみだ!」
ローゼンは思い切り振りかぶり、ルーゼンに斬りかかる。
ルーゼンは難なく受け流す。
「……ありがとうございます。ローゼン殿。」
向こうには聞こえていないだろうが感謝を述べておく。
「それでいいんだ!弟よ!」
「殺しはしない!投降してくれ!もう一度共に戦おう!」
鍔迫り合いになる。
「……ローゼン。」
すると何やらルーゼンがローゼンへと耳打ちをしている。
「何!?最初からそのつもりで……。」
「あぁ。」
すると二人は距離を取り、武器を収めた。
「全軍聞け!もはやこの戦い勝ち目は無くなった!」
ルーゼンが指をさす。
その方向には部隊が少数だが展開しているのが見えた。
「おお!間に合った!」
「ということはあれはジョナサンが連れてきた部隊!?」
ジョナサンの方を見ると頷いていた。
「もう少し時間はかかると思っておりましたが、なんとか間に合ったようです!」
「これ以上戦を続けてもいたずらに兵を失うのみだ!この場は撤退し、きたる決戦のために今は備えるのだ!全軍撤退!」
ルーゼンは撤退の号令を飛ばす。
その手際は見事なものであった。
「セラ殿!追撃を!」
ジゲンが追撃するように言ってくる。
が、それは難しいだろう。
それにローゼンとルーゼンのやり取りもある。
おそらく何かあるのだろう。
「いえ、我々も疲弊しています。これ以上追撃してもあまり意味はないでしょう。ひとまずこの場は勝てただけでも良しとしましょう。」
ジゲンは少し納得してない様子だったが、従ってくれるようだ。
そうこうしているうちに敵は撤退を始めた。
こちらも全軍撤収する。
そして全軍を一箇所に集めさせた。
「さぁ、ジゲン殿。勝鬨を。」
「わ、私がやるのか!?」
恐らくこの様子は全く考えていなかったのだろう。
「はい。この戦の総大将はジゲン殿です。王族の末裔であるあなたがいることを知っているのは各勢力でもリーダークラスの者しか知りません。今この場であなたが声を上げることで東の国の王族は途絶えてないと宣言するのです。そうすれば各勢力もこちらに靡くでしょう。」
「し、しかしこの戦の指揮を取っていたのはセラ殿でしょう!?ここはセラ殿が……。」
恥ずかしがっているのかなかなかやろうとしない。
少し腹が立って来たので、少し脅すことにする。
私はジゲンの両肩に手を置き(握力マックスで)笑顔で諭す。
「ジゲン殿?さぁ勝鬨を。」
「わ、わかった。わかったから手を離してくれ。い、痛い。すごく痛い!笑顔もなんか怖い!爺!助けてくれ!爺!?」
ヤン殿は近くにいるが身向きもしない。
まぁ、この状況を理解しているからだろう。
そして、私はすこし嫌がらせとして、手を離さない。
「す、すみませんでした!今すぐやります!」
流石にそろそろやめておこう。
私は手を離した。
「分かればよろしい。」
「ほ、本当に女子なのか?まるで握力はゴリラ並……。」
「何か?」
笑顔で顔を向ける。
もう特に何もするつもりもないが、女性に対してその発言をしたことを後悔はさせておこうと思う。
「い、いえ!なんでもありません!」
「皆のもの!聞け!私は東の国の王族が末裔!ジゲン・ワンである!逆賊マトウは王家を滅ぼしたつもりだっただろうが、私はまだ生きている!そしてマトウ家がこの東の国にもたらしたものは何だ!?平穏か!?いいや!奴がもたらしたものは混沌だ!奴等がクーデターを起こさなければこの東の国は平穏そのものであっただろう!皆が常日頃食べる物に苦しむことも!隣の勢力といつ戦になるか怯える日々も訪れなかった!」
先の戦に参陣した兵達がジゲンの、言葉に耳を傾ける。
初めてとは思えない演説である。
見事なものだ。
「私は私の家族を、友人を、そして民を苦しめた奴らを決して許しはしない!私はここに東の国の再興を、宣言する!」
刀を抜き放ち、空へ掲げる。
兵達からは歓声が上がる。
正直今回は様々な不安要素があったが、ジョナサンやローゼンのお陰でなんとかなった。
ヤン殿やジゲンにも感謝しなくてはならない。
まぁ、ジゲンには後でお説教が待っているのだが。
怒ってはいない。
うん、怒ってはいないよ?
まあ、それはともかくあとはローゼンのことだ。
あれ以来様子に変化は無いものの、あの時一体何を話していたのか、それは知っておくべきだろう。
まあ、何はともあれ初戦を制することが出来て良かった。
応援ありがとうございます!
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