王国再興物語 〜無理ゲーオタクの異世界太平記〜

中村幸男

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最終決戦その2

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「くっ!卑怯な!」
「黙れ!裏切り者の弟が!」
 またそれだ。
 我が兄、ルーゼンは決して不義があって裏切った訳ではない。
 むしろ、勝てる見込みのある方に俺を残しておいてくれたのだ。
「黙れ!貴様に兄貴の何が分かる!」
 オルフェンの言う裏切り者とは即座に降伏したことに関してかも知れないがそんなことはどうでもいい。
 どちらにせよ身内をバカにされたのだ。
 許すわけには行かない。
「はっ!あのような腰抜け、一目見ただけでもすべて分かるわ!」
 しかし、やはりオルフェンは強い。
 この俺が押しきれずにいる。
 竜に乗っておらずともこれほどの武力である。
 先程から互いに攻めきれていない。
「ちっ!」
 相手の攻撃を受け流しつつ反撃の機会を伺う。
「おい!お前はセラ殿を自分の物にしたいんだろう!傷ついているがそれでいいのか!?」
「ふっ!手足がなくとも人は生きていける!殺しはしないと約束されているんでな!」
 こいつはどこまで行っても屑のようだ。
 会話からほんの少しでも油断するような事があれば良かったのだが、そんなことも無い。
 やはり、かなりの手練れだ。
 しかし、卑怯だし危険な賭けにもなるが勝機は見出だせた。
「ならば、これはどうだ?」
 俺は持っていた斧をセラ殿に向かって投げた。
 セラ殿にはあらかじめ話は通していたのだ。
 先程バレないようにアイコンタクトで連携を取っていた。
 オルフェンに勝つための策である。
 セラ殿ならばあのような状態でもかわしてくれるだろう。
「何っ!?」
 当たれば即死だろう。
 そして、この位置ならばオルフェンは庇いに行くしかない。
「くそっ!」
 オルフェンがセラの前へと出る。
 オルフェンは剣で弾こうとしたが、剣が折れオルフェンの左肩に斧が刺さった。
「ぐあっ!」
「……腕、切り落とせると思ったんだがな。」
 だが、これで奴は左腕が使えなくなっただろう。
 予備の斧を取り出し、構える。
「さあ、続きと行こうか!」
「……くそっ!このクズめ!」
 斧を抜き、斬りかかってきた。
 だが、先程に比べ明らかに遅い。
「はあっ!」
「遅い!」
 相手の剣を弾き、オルフェンの左肩を殴る。
「があっ!」
 オルフェンは左肩を押さえ、苦しむ。
 その隙に剣を持っていた右腕を切り落とした。
 オルフェンら悲鳴をあげようとしたが、顔面をつかみ、その口を押さえた。
「人ってよ。痛かったら泣き叫ぶよな。それって一種のストレスの発散だと思うんだよ。泣き叫ぶことで痛みを緩和しようとしてるんじゃないかな。だから、泣きわめけないって辛いだろ?」
 オルフェンの顔は酷い物である。
 これまでこれほどまでの恥辱を味わった事が無いことも原因なのだろう。
「戦意は喪失したようだが、お前を生かしておけばセラ殿の身に危険が及ぶからな。」
 オルフェンは必死にやめてくれと目で訴えている。
 だが、恐らく生かしておいてもセラ殿とアルフレッド様の邪魔をするだけだろう。
「駄目だ。」
 そのまま首をはねた。
 体は地に落ち、力なく崩れ落ちる。
 オルフェンの顔は最後まで酷いものだった。
「戦士なら戦士らしく潔く死を受け入れればかっこ良かったのにな。お前は最初から間違えていたんだよ。」
 セラ殿に惚れていなければ。
 いや、惚れていたとしても全うに生きていれば歴史に名を残す英雄となっていたかもしれない。
 それがどこで道を間違えたのか、まだまだ伸び代があったというのにもったいない男だった。

「さあ、どっからでも来てみなよ。動いた瞬間に弾丸をぶちこむからさ。」
「……。」
 ランに銃口を向けられたまま、時間だけが過ぎていく。
 話によればこいつの弱点は銃だ。
 一体どう言うことか分からないが、あのリンの死体や様々な情報から推測はついている。
 原理は知らないが、こいつの頭の中には再生能力を向上させる何かがあるらしい。
 リンの死体は頭部がなかった。
 レノン王が倒したときも首ははねなかったらしい。
 だから、頭に銃弾をぶちこめばこいつは再起不能になるという予想だ。
 懐には銃がある。
 単発なので、ここぞという時にしか使えない。
 しかも俺は銃の扱いには不馴れだ。
 そして、今は一歩でも動けば撃ち込まれる。
 どうしようも出来ない。
 が、行くしかない。
 体を横にし、頭の位置を低くする。
「動くなって言ったよねぇ!」
 発砲音が響く。
 俺がこの態勢をとったのは心臓と頭を守るためだ。
 ランが先程から俺の頭に狙いを定めていたことは分かった。
 だから、頭をずらしたのだ。
 そして、ランが放った弾は俺の左の太ももに当たった。
「ぐっ!」
 弾は抜けた。
 だが、力が入らない。
 たまらず膝をついてしまう。
 恐らく、頭を狙うと見せかけ元々足を狙っていたんだろう。
「これで、もう動けないよね。なら、どれだけ俺が下手くそでも絶対に当てられる。」
 ランは近づいてきて俺の頭に銃を突きつける。
 今度こそ撃たれれば終わりだろう。
 だが、そう簡単には撃たせない。
「本当に、それでいいのか?」
「何?」
 ランは疑問を口にする。
「迂闊に俺に近づいて。」
「は?」
 まだ分かっていないらしい。
 ならば、教えてやるとしよう。
「お前の妹か?リンといったかな。あいつはどうやって死んだ?」
「っ!まさか!」
 ランはようやく気がついたのか、怯え始める。
「そうだ。俺も俺が死んだら、俺を中心にここら一帯が爆発するような規模の魔道具を仕込んできた。」
「そ、そんなハッタリ……。」
 銃口がブレブレである。
 だが、まだ早い。
「だと思うなら撃ってみろよ。頭を撃てば爆発するけどな。」
「……頭を撃てば?」
 するとランは銃口を頭からずらし、俺の心臓へと突きつけた。
「なら、こっちなら?」
「……はい、ご苦労さん。」
 そして、俺は体を少しだけ横にずらしながら立ち上がると同時に刀を振り上げランの左腕を切り落とした。
 勿論、ランは引き金を引いた。
 だが、それは心臓をすれすれだったと思うが、わずかに外れていた。
 肺に穴が空いたのか、血を吐き出す。
「かはっ!」
「ぐあっ!」
 互いにダメージを負った。
 だが、こちらはまだ動ける。
「まだまだ!」
「ひぃっ!」
 ランは情け無い声をあげつつバランスを崩す。
 頭を狙われていると思ったのか、本能的にかは分からないが、咄嗟に頭を守っているように見えた。
 だが、狙いは頭では無い。
 足だ。
 俺は剣を薙ぎ払い両足を切り落とす。
「ぎゃあああ!」
「……いかに……不死身であろうとも、痛みはあるんだろう?ならば、お前がこれまで……振り撒いて来た苦痛を……味あわせてやる。」
 喋るのが少し辛い。
 だが、意識が薄れてきている訳ではない。
 俺はランにまたがり、押さえつけ銃を持っていた右腕を切り落とした。
「や、やめろ!頼む!やめてくれ!」
「そういった奴をお前は殺してきたんだろ!」
 この状態で刀は扱いずらい。
 刀をしまい、短刀を抜く。
 そして、ランの体に刺しては抜き、刺しては抜きを繰り返す。
 その度にランが悲鳴をあげている。
「その不死の体を後悔するんだな!」
 銃でこいつを殺すのは容易い。
 だが、只では殺さない。
 こいつがやって来た事を後悔させながら、自ら死を懇願するまで続けてやろう。
 いや、懇願してきても続けてやるのも良いかもな。
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