歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

中村幸男

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異世界転移

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「……孫子曰く」
 
 男は弓をの狙いを定め、矢をつがえる。
 
「放てぇ!」
 
 どこからともなく放たれた号令で、無数の矢が放たれる。
 矢の雨が、山の下に広がる無数の軍勢に襲いかかる。
 
「彼を知り己を知れば」
「『シールド』!」
 
 矢が軍勢に当たるかと思えた直前、それらは光の壁によって阻まれる。
 先頭に立つ男が空に出を掲げていた。
 
「どうよ! これが俺のスキル『シールド』の力だ!」
 
 先頭に立つ男がガッツポーズをする。
 矢は全て、一枚の光の板に刺さったかのように空中に停止している。
 その光景を、茂みから密かに見ていた男がいた。
 その男はつがえた矢を先頭の男に向ける。
 
「百戦、危うからず」
 
 そして、矢を放つ。

「危ない!」
「え?」

 隣にいた男は矢の存在に気付き、忠告をする。
 充分にスキルで守れる距離であった筈なのに、男はスキルを使用しなかった。
 矢は何にも阻まれることはなく、真っ直ぐ先頭の男の喉を貫いた。

「かはっ……」

 男によって阻まれていた、空中で停止した矢は一斉に降り注いだ。
 勢いを失った矢とは言え、突如として降り注ぐ矢によって山下に広がる軍にもある程度の被害が出ていた。
 
「や、やった!」

 矢を放った男の側に潜んでいた小さな角の生えた女性が声を上げる。
 
「今だ! この一瞬の隙を逃すな!」
「あ……か、かかれぇ!」
 
 女性の一声で茂みに潜んでいた無数の軍勢が姿を現し、敵に一斉に襲いかかる。
 その軍勢は背後にも潜んでおり、半ば包囲する形になっていた。
 
「やった……やったぞ……」
 
 矢を放った男は拳を握りしめ、薄っすらと涙を流す。
 
「これからだ……スキルの優劣なんざ、俺が覆してやる……」
 
 これは、とある歴史オタクが異世界乱世を統一する物語である。
 
 
 
 歴史好き。
 一定の人気を誇るジャンルではあるが、中々コアなジャンルである。
 実際、このクラスでも人気は無かった。
 
「えー、織田信長は家臣である明智光秀に……」
 
 このクラスでは、今現在歴史の授業が行われていた。
 しかし、教師の話を聞く者は誰もいない。
 皆、口々に雑談を繰り広げ、ガヤガヤとしていた。
 
「……」
 
 そんな光景を見ながらも、教師は何もしない。
 黙々と黒板に文字を書いていく。
 そして、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴った。
 
「じゃ、授業を終わります」
 
 教師がそう言うと、そのまま教室を去る。
 教師が教室を出たその瞬間、突如として教室が光り始める。
 
「は!?」
「な、何これ!?」
 
 突然の出来事に皆慌て始める。
 しかし次の瞬間、その騒ぎは静まる。
 
「だ、大丈夫で……」
 
 教師が異常を察し、教室に戻る。
 しかし、そこには誰もいなかった。
 
「一体……何が……」
 
 その後、クラス一つが突如として消えた事件は瞬く間に世間に知られ、ネット上では様々な推測が行われた。
 その中に、『異世界にでも行ったんじゃ笑』というコメントがついていた。
 誰もそれを本気にしてはいなかったがそれが本当だと誰も知ることは無い。
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