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カルチャーショック
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「本来ならば、明日、勇者の方々には仲間が与えられる。だが、佐切殿には与えられないでしょう」
「まぁ、それくらいは予測できました。問題はありません。それよりも今後、俺の処遇はどうなるんでしょうか」
騎士団詰所への道中、二人は軽く話をしていた。
「恐らくですが、完全に放置かと。この世界には奴隷制もあり、スキルを持たない者や弱いスキルを持つ者は奴隷に落ちることもあります。『念話』ならば他にも使い手を知っております。奴隷落ちは無いかと」
「成る程。同一のスキルは存在する……つまり、あの場で皆が全く別のスキルを与えられたのは偶然か」
ジョバンニは頷く。
「ええ。しかし、この世界の歴史であれだけの大人数が一度にスキルを与えられ、誰一人として被らないと言うのは初めてですな……と。つきましたぞ」
城を出て少し歩いた所に詰所はあった。
しかし、その詰所は決して立派な物とは言えず、その境遇がうかがいしれた。
「……訓練所とか併設してる物だと思ってましたが……本当に寝る所だけなんですね?」
「ええ。我々は寄せ集めの騎士団で数は多いのですが、その練度はたかが知れています。その分、王都各所に詰所を設け、治安の維持に貢献しているのです」
「それで訓練所を作る金もなくなったと……」
「えぇ……訓練所は近衛騎士団の訓練所を使わせてもらっていますが、貴族からの視線は痛いものですな」
話し終わると軽く咳払いをし、ジョバンニは詰所の中へと案内する。
「さ。今日は皆任務で出かけており、誰もいません。存分にお寛ぎ下され。ここは我が騎士団でも最初の詰所で歴史ある建物にもなっておりますが、まずはお料理でも。すぐに出ますので」
「……そうですね。では、お言葉に甘えて」
並べられた料理を前に、佐切は目を疑う。
「こ、これは……」
「どうでしょう。備蓄しているものの中でもそれなりに高級な物を選んだのですが……」
佐切の頭の中に浮かんでいた感想はただ一つである。
(……不味そうだな)
突然だが、佐切の父は変わっていた。
自衛隊上がりの父は小さい頃から佐切に対して様々な教育を施していた。
それはまるで軍人を育て上げるかのようであった。
過去その一環なのか、小さい頃だが佐切は父にイギリスへ連れられ、イギリス料理を食べたことがあった。
そこで、佐切は父に『最高に不味い物を食えば飯に文句をつけなくなる』と言われ、ありとあらゆる不味い飯を食わされた。
そのお陰で好き嫌いは全く言わなくなった。
イギリス料理以外は。
(……この見た目……どれもイギリス料理を思い出させる見た目だな……)
どれも魚料理のようで、所々違えど、やはりイギリス料理を連想させた。
とは言え、佐切も小さい頃の記憶なのでイギリス料理をはっきりと覚えている訳では無く、似ているものには拒否反応を示してしまうようになっていた。
「……」
「どうなされた? まさか……お気に召さなかったか? それとも、何処か具合が悪いのですかな?」
ジョバンニが本気で心配してくる。
「……い、いえ……何でも……ありません……よ?」
佐切は恐る恐るナイフとフォークを持ち、魚の頭が飛び出ているパイに手を付ける。
(味をしっかりと覚えている訳では無いが……イギリス料理は魚の下処理が酷い……あの臭みは……俺には無理だった……だが!)
佐切はフォークに刺さっている魚の頭が飛び出たパイを見る。
(ここは異世界! 全てが同じという保証は無い! それに、食文化も知り尽くす事は今後の戦略にも役立てるかもしれない! よし! 覚悟を決めろ!)
生唾を飲み込み、口を開く。
ゆっくりと、フォークを口へと運ぶ。
「……」
その様子をジョバンニが心配そうに見ている。
意を決して、佐切はそれを食べた。
「……」
「……ど、どうですかな?」
佐切は良く咀嚼し、それを飲み込んだ。
「……美味い!」
「お、おお! それは良かった! ささ、まだまだありますぞ!」
佐切の口から出た言葉は決して嘘ではなく、本心からの言葉であった。
(……何事も挑戦だな……)
佐切は、また一つ成長するのであった。
「まぁ、それくらいは予測できました。問題はありません。それよりも今後、俺の処遇はどうなるんでしょうか」
騎士団詰所への道中、二人は軽く話をしていた。
「恐らくですが、完全に放置かと。この世界には奴隷制もあり、スキルを持たない者や弱いスキルを持つ者は奴隷に落ちることもあります。『念話』ならば他にも使い手を知っております。奴隷落ちは無いかと」
「成る程。同一のスキルは存在する……つまり、あの場で皆が全く別のスキルを与えられたのは偶然か」
ジョバンニは頷く。
「ええ。しかし、この世界の歴史であれだけの大人数が一度にスキルを与えられ、誰一人として被らないと言うのは初めてですな……と。つきましたぞ」
城を出て少し歩いた所に詰所はあった。
しかし、その詰所は決して立派な物とは言えず、その境遇がうかがいしれた。
「……訓練所とか併設してる物だと思ってましたが……本当に寝る所だけなんですね?」
「ええ。我々は寄せ集めの騎士団で数は多いのですが、その練度はたかが知れています。その分、王都各所に詰所を設け、治安の維持に貢献しているのです」
「それで訓練所を作る金もなくなったと……」
「えぇ……訓練所は近衛騎士団の訓練所を使わせてもらっていますが、貴族からの視線は痛いものですな」
話し終わると軽く咳払いをし、ジョバンニは詰所の中へと案内する。
「さ。今日は皆任務で出かけており、誰もいません。存分にお寛ぎ下され。ここは我が騎士団でも最初の詰所で歴史ある建物にもなっておりますが、まずはお料理でも。すぐに出ますので」
「……そうですね。では、お言葉に甘えて」
並べられた料理を前に、佐切は目を疑う。
「こ、これは……」
「どうでしょう。備蓄しているものの中でもそれなりに高級な物を選んだのですが……」
佐切の頭の中に浮かんでいた感想はただ一つである。
(……不味そうだな)
突然だが、佐切の父は変わっていた。
自衛隊上がりの父は小さい頃から佐切に対して様々な教育を施していた。
それはまるで軍人を育て上げるかのようであった。
過去その一環なのか、小さい頃だが佐切は父にイギリスへ連れられ、イギリス料理を食べたことがあった。
そこで、佐切は父に『最高に不味い物を食えば飯に文句をつけなくなる』と言われ、ありとあらゆる不味い飯を食わされた。
そのお陰で好き嫌いは全く言わなくなった。
イギリス料理以外は。
(……この見た目……どれもイギリス料理を思い出させる見た目だな……)
どれも魚料理のようで、所々違えど、やはりイギリス料理を連想させた。
とは言え、佐切も小さい頃の記憶なのでイギリス料理をはっきりと覚えている訳では無く、似ているものには拒否反応を示してしまうようになっていた。
「……」
「どうなされた? まさか……お気に召さなかったか? それとも、何処か具合が悪いのですかな?」
ジョバンニが本気で心配してくる。
「……い、いえ……何でも……ありません……よ?」
佐切は恐る恐るナイフとフォークを持ち、魚の頭が飛び出ているパイに手を付ける。
(味をしっかりと覚えている訳では無いが……イギリス料理は魚の下処理が酷い……あの臭みは……俺には無理だった……だが!)
佐切はフォークに刺さっている魚の頭が飛び出たパイを見る。
(ここは異世界! 全てが同じという保証は無い! それに、食文化も知り尽くす事は今後の戦略にも役立てるかもしれない! よし! 覚悟を決めろ!)
生唾を飲み込み、口を開く。
ゆっくりと、フォークを口へと運ぶ。
「……」
その様子をジョバンニが心配そうに見ている。
意を決して、佐切はそれを食べた。
「……」
「……ど、どうですかな?」
佐切は良く咀嚼し、それを飲み込んだ。
「……美味い!」
「お、おお! それは良かった! ささ、まだまだありますぞ!」
佐切の口から出た言葉は決して嘘ではなく、本心からの言葉であった。
(……何事も挑戦だな……)
佐切は、また一つ成長するのであった。
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