歴史オタクの軍略無双〜外れスキルと国を追放された俺はスキルと歴史知識を駆使して復讐する〜

大図書館

「ほぉ……ここが……」
　
　目の前には数え切れないほどの大量の本が棚に並んでいた。
　一番上のとかどうやって取るのだろうか……。
　脚立でも相当の高さの物が必要になる……。
　これじゃあ高所恐怖症の人は取りに行けないな。
　
「どう？　我が国自慢の大図書館は。どの国にも負けてないと思うわよ」
「……そうだな。よくもまぁここまで集めたもんだ」
　
　この時代、活版印刷の技術は確立していない。
　つまり、全てが手書きだ。
　いくらか複製物も混ざっているだろうが、資料的価値には然程変わりはない。
　それにしてもこの量は凄い。
　歴史を探る上で非常に貴重なものとなるだろう。
　しかし、今回の目的は歴史ではない。
　……非常に興味はあるが。
　
「さて、スキル……というかエルフの書物はこっちの方よ」
　
　そして別室に案内される。
　別室は流石に規模の小さい物だろう、そう思っていた俺が馬鹿だった。
　扉を開けた途端、俺の考えは裏切られた。
　規模、さらにデカくなっている。
　
「……」
「ふふ……凄いでしょう。私も初めてきた時は驚いたわ。この世界の何処にもここに勝る所はないわね」
「あぁ……流石にこれは凄いな」
　
　それ程にエルフは古代から文字を活用し記録していたと言うことだろう。
　これは期待出来るかもしれない。
　
「なぁカレン、少し個人的にも……」
「おい。ここでは静かにしろ。王女であろうとも同様だ。特別扱いは無しだ」
　
　すると、入ってすぐ横にあった机で何やら調べ物をしていた男に話しかけられる。
　いかにも学者といったような風貌だ。
　目の前の大量の本に目が行っていて気付かなかった。
　
「ごめんごめん。でもアラン？　初対面の人にそれは失礼じゃない？」
「……ふん」
　
　アランと呼ばれた男は不機嫌そうにすぐさま調べ物に戻った。
　
「……彼は？」
「ここでエルフの古文書の解読をしている、私の幼なじみのアランよ。勿論エルフの古文書だけでなく、ここ全ての書物を監督しているわ」
「へぇ……」
「おい、何度も言わせるな。うるさいぞ」
　
　再度注意される。
　どうやらかなり神経質なようだ。
　
「ごめん。で、お願いしていた情報は纏めてくれたの？」
「まだだ。あんなに急に言われて対応できるわけが無いだろう。もう数日寄越せ」
「そう……分かったわ。じゃ、私はアランが準備出来るまで佐切に街を案内してるわね」
　
　カレンは俺の腕を掴み、その場を後にしようとする。
　胸が当たってるが……。
　
「……おい待て」
「……どうしました？」
「……その女に変な気を起こすなよ？　そいつはそんなだが、この国の女王だ。何かあれば首が飛ぶからな」
　
　アランはジェスチャーしながら忠告してくる。
　そう言えば王女ではなく女王か。
　その若さゆえに忘れていた。
　そして……何となくわかったぞ。
　
「ご忠告どうも。肝に銘じるよ」
「……」
　
　アランはこちらを睨み続けていた。
　そして、アランから聞こえない程の距離になった頃にカレンに問いかける。
　
「……そろそろ離すしてもらえないか？」
「あ、ごめんごめん」
「……お前も大変だな。互いに思いを打ち明ければ良いのに」
「……互いに立場が邪魔してね……それで無くても向こうが奥手だし、少しでも積極的になって貰うために……ごめんね？　利用したみたいになって」
　
　やはりそういう事か。
　俺と仲が良いアピールをしてアランの危機感を煽ろうと言うのだ。
　
「いいや。出来ることなら協力するよ」
「ありがとう！　それじゃ、予定通り街を案内するわね！」
　
　……心労が絶えない、な。