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復讐

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「怯むな!進め!」
 
 敵の殆どを殲滅したにも関わらず敵の反撃は続いている。
 外は友軍のお陰で制圧出来たが、中に居た奴等が未だに抵抗を続けている。
 が、時間の問題だろう。
 
「隊長!第一目標制圧完了!」
「良くやったマイク!早速やってくれ!」
 
 第一目標。
 それはティムのいる部屋ではない。
 俺は外から指示を出しているに過ぎないが、それでも中の騒ぎが聞こえてくる。
 刑務所の中が、ものすごく騒がしくなった。
 
「全囚人の開放、終了しました!」
「よし!第二目標へ向け前進!俺も行く!」
 
 そう、第一目標は囚人を管理しているコントロールルームであった。
 この刑務所は全ての牢を一斉に開放することが可能で、この刑務所を混乱に陥れるには十分な仕掛けである。
 これらもあいつの創設した諜報班の活動のお陰で知ることが出来た。
 ティムがいること、今回の友軍、その他諸々の準備は彼らがいなければ出来なかった。
 
「隊長!敵の抵抗激しく、進めません!」
「……問題無い。囚人達を盾にしろ。」
 
 非情かもしれないが、後ろから脅せばいかに凶悪な犯罪者と言えども逃げるしか無いだろう。
 その逃げ道を第二目標、ティムのいる監視所のような部屋へと誘導してやれば良い。
 こんな状況、いくらあのアイでも想定はしていない筈だ。
 だが、逆に言えば学習されてしまった以上、同じような手はもう使えないということだ。
 今後の戦いは頭をフルで使わなければな。
 自分も室内へ突入する。
 場は騒然としており、逃げてくる囚人もちらほらと現れた。
 
「撃て。」
「はっ!」
 
 マイクに逃げてきた囚人を射殺するように命ずる。
 
「ひ、ひぃ!」
 
 マイクは容赦無く引き金を引いた。
 それをみた他の囚人は別の逃げ道を探すべく引き返して行った。
 
「……これで良いのてしょうか?」
「良いんだ。今は俺は、復讐のために全力を尽くす。それだけだ。」
 
 すると、一人の兵が向こうから歩いてきた。
 
「お、お疲れ様です!」
「ん?おお。」
 
 相手が敬礼してきたのて返す。
 兵はそのまま走り去っていこうとする。
 か、違和感を覚え振り返る。
 
「貴様……。何者だ?」
「……。」
 
 鉄帽を深く被り、マスクをし、顔を見えなくしている。
 そもそもまだ作戦は完了していない。
 武器も持たず、何故ここを出ようとしているのか。
 
「隊長。第二目標制圧完了間近。ですが、奴の姿は無いそうです。」
 
 想定よりも遥かに早い。
 そして、危うく一本取られるところであった。
 その兵の近くまで行き、鉄帽とマスクを取って見せる。
 抵抗は無かった。
 すると、鉄帽の下にあった顔は俺たちの仇、ティムの素顔であった。
 
「……馬鹿め。」
「ま、待ってく……。」
 
 言葉を待たず、躊躇せずに引き金を引いた。
 何発も。
 怒りに任せ、撃ち続ける。
 気が付けば、弾は無くなっていた。
 
「隊長……。」
「ん?すまんな。お前の分を残してやれなかった。」
 
 まだ刑務所内は抵抗を続けているようで、銃撃の音が聞こえてくる。
 コイツは部下を見捨てて一人で逃げ出してきたのか。
 正真正銘のクズだな。
 
「相手にティムの死を伝えろ。武器を捨て、投稿する者の命は取らんと伝えろ。」
「は。」
 
 あっけなく、復讐は終わってしまった。
 だが、本当の目的はここからだ。
 柏木の最後の依頼を果たす時が来た。
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