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傭兵

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 アメリカは多くの民間軍事会社を雇っている。
 基本的に全ての基地に傭兵が駐留していた。
 その思惑に、職を失ったことによる民間軍事会社のテロを阻止するためというのがあったが、それ以外にも軍縮による軍事力の低下を補うためというのがあった。
 その民間軍事会社が、全てアメリカの敵となった。
 
「我々は、アメリカの武力による平和を許すわけには行かない!」
 
 今は声明を出している。
 テレビ、ラジオ、ネット。
 あらゆる手段を講じて情報を発している。
 
「全ての国はアメリカの戦略型AIによる監視を恐れている。アメリカ国民でさえ、危険思想を持つものは排除されている!」
 
 これを出したことで俺達に協力してくれるものが増えることを期待している。
 
「それが、皆が臨んだ平和なのか!?……否!それでは真の平和は訪れない!国同士の遺恨は残り、隣国の思想、主義は違う。気が付けば隣人が消えている。そんな状態の平和が長く続くだろうか!?」
 
 俺達の目的はアイの破壊。
 正直、国云々とかはどうでも良い。
 
「アメリカの暴挙は職を失った我々のようなテロを誘発した。後先考えないアメリカの行動によって、我々は明日の食う飯さえ困る奴等が出てきている!これが本当に平和な世界なのか!?」
 
 とにかく、正当性と仲間が得られればそれで良い。
 
「この戦いは正義の戦いだ!我々と思いを同じくするものは集え!」

 少し、間を置く。
 
「……多くの者は我々が負けるのだと思っているだろう。だが、我々は勝った。」

 俺はカメラを向けている者に目配せする。
 すると、カメラは向きを変えた。
 そこには縛られ、椅子に座らされている人物が居た。
 
「アメリカ合衆国大統領は我等が手中にある!」
 
 
 
「大統領が?」
「はい。」
 
 アンドルーズ空軍基地の完全制圧後、俺はマイクから報告を受けていた。
 大統領を捕縛したという報告だ。
 
「どうやら、敵が退却していたのは大統領を逃すためのようです。」
「……成る程な。この一連の事件で航空機で脱出しようとしたが、諜報班の妨害工作によって逃げられず、航空機の発進準備の途中で運悪く攻められ、逃げる前に捕まったという訳か。」
 
 これは予期せぬ出来事だが、良い。
 アメリカ上層部の危機感がより高まっただろう。
 これなら国連の治安維持部隊の派遣がより期待できる。
 
「よし、確保しておけ。扱いは丁重にな。」
「はっ!」
 
 さて、既に我々の被害は甚大だ。
 アメリカ各所で蜂起はしているが、そのせいもあって各個撃破されてもいる。
 まぁ、そのお陰か敵の援軍の展開も中々に遅く、助かってはいるが、このままでは無視するわけにも行かなくなってしまう。
 そろそろ、援軍が欲しいところだが……。
 劣勢な我々に協力してくれる勢力はいるのだろうか。
 バックに多数の国家がついているとは言え、日和れば普通に攻撃してくる可能性もある。
 ……待てよ。
 大統領、使えるな。
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