上 下
33 / 36

窮地

しおりを挟む
「弾が切れたら敵の武器を使え!銃剣は必ずつけろ!」
 
 敵の死体から武器を取り、銃剣を着け攻撃しつつ前進する。
 弾が無くなったらすぐに捨てる。
 これを繰り返しつつ前進する。
 が、奥に行けば行くほど敵の反撃は厳しくなる。
 
「怯むな!攻撃の手を緩めるな!突っ込め!」
 
 援護射撃を受けつつ銃剣突撃を繰り返す。
 これで殆どの敵は排除できている。
 たまに廊下に重機関銃が設置されていることもあるが、それも銃剣突撃で突破する。
 援護射撃があれば多少の被害を受けつつも突破することは可能だ。
 それに、重機関銃があるということは敵は迂回することを想定しているのだろう。
 ならば、突破してしまえば想定外の行動という事になる。
 敵の対応は遅れるだろう。
 
「隊長!制圧完了!敵は居ません!」
「よし!武器を奪って進め!」
 
 順調だ。
 もう司令室の扉が見えてきた。
 隊員達は突入準備を始める。
 敵の足音は聞こえる。
 敵が来る前に確保しなければ。
 
「突入準備良し!」
「突入!」
 
 準備が完了したことを確認して突入を指示する。
 
「ちっ!」
 
 司令室の中には目標の陸軍参謀総長とオペレーターらしき者が数名いた。
 戦闘員は出払っているのか誰も居ない。
 陸軍参謀総長は拳銃を取り出そうとするが、全員から銃をむけられ無駄な抵抗だと悟り拳銃をしまった。
 
「これで我々の勝利だな。」
 
 司令室のモニターを見る。
 そこにはここの地図が描かれれており、赤色の点と青色の点があり、司令室に赤色の点が集まっていた。
 つまり、俺達敵側は赤色で表示されているということか。
 そして、それとともにエラーと大きく表示されている。
 
「くそっ!何故だ!貴様等と戦うとコイツはよくエラーを起こす!何をした!?」
「そいつは俺達が使ってたんだ。弱点は把握している。」
 
 どういう行動をすればエラーを起こすのか、それは柏木からヒントを得ていた。
 俺は陸軍参謀総長に近づき銃を突きつける。
 
「さぁ、AIを寄越せ。無駄な抵抗はするなよ。」
「……残念だったな。」
「何?」
 
 陸軍参謀総長は端末を操作する。
 
「おい!動くな!」
「まぁ待て。これを見ろ。」
 
 すると、モニターの表示が変わる。
 地球のアメリカ上空の図だ。
 人工衛星が描かれれており、ハワイ上空辺りから点線が地上まで続いている。
 そして、その終着点は、ここだ。
 
「これは……。」
「貴様等がこの無謀な作戦をしている間も前線では戦闘が続いていた。敵の攻勢は予測済みでそのことごとくは返り討ちにあった。敵は壊滅したよ。」
 
 つまり、友軍は、ロシアやイギリスとフランスの軍は壊滅した?
 
「そして、ロシアが独断でとある作戦を実行した。」
「まさか……人工衛星を落とすのか!?ここに!?」
「そうだ。」
 
 確かにアメリカの首脳部は西海岸に集中している。
 ここで一気に排除すれば勝てる。
 だが、俺達が作戦を進めているのは知っている筈だ。
 それに、核シェルターが人工衛星の落下だけで駄目になるとは思えない。
 ……いや、国民の継戦意識を無くすことが狙いなのか。
 
「これが判明したのはつい先程だ。戦闘の混乱で観測が遅れた。そして、お前達は出入り口を破壊したお陰で我々は逃げられない。空調も死んでいるしな。ここで俺を殺そうが殺さまいが結果は変わらん。残念だったな。お前らの努力は無駄だった。」
 
 陸軍参謀総長は機械からUSBを取り出す。
 
「ほら、これが欲しかったんだろ?だが、パスワードが分からんぞ。」
「パスワード?」
 
 陸軍参謀総長はやけに落ち着いている。
 もう諦めているのだろう。
 
「あぁ。それを打ち込まなければ新たに学習させることも破壊することも出来ない。まぁ、破壊は物理的には出来るがな。」
 
 USBを受け取る。
 ここで破壊するのは簡単だ。
 ……だがまだだ。
 アイにはやるべきことが残っている。
 最後に一働きしてもらおう。
しおりを挟む

処理中です...