【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

文字の大きさ
42 / 182

岐阜にて

しおりを挟む
「うむ、そのように致せ。」
「は。」
 
 岐阜城に戻った秀信は自ら差配し、所領の復興に努めた。
 その差配は素晴らしく、領民達は感謝していた。
 
「しかし、殿。真に三郎様に向こうを任せてもよろしかったのですか?せめて、儂か木造をつけたほうが……。」
「あのお方を誰だと思っておる?我等の心配など無用だ。」
「は。そうでしたな。」
 
 百々の言葉に秀信は答えた。
 秀信は三郎を信頼して重要とも言える西の局面を任せたのだった。
 東は秀則に任せ、経験を積ませる。
 織田家の今後の事を考えての事だった。
 
「さて、百々。秀則はどうしてる?」
「は。秀頼様は真田殿らと共に上田に入ったようです。到着した頃には徳川方は既に引いておったとか。」
「……そうか。」
 
 すると、百々は何かを思い出す。
 
「そういえば、東海道を進んだ軍は秀忠を逃したそうですな……。既に江戸に入ったとか。」
「……その事なのだが、百々。」
 
 秀信は百々に近寄るように言う。
 そして、百々も不思議そうに近寄る。
 
「秀忠が海路から無事に逃げられたのは大垣に兵がいなかったかららしい。」
「……では、秀則様が岐阜を取り返そうとしなければ……。」
 
 秀則は頷く。
 
「そして、岐阜へ行くように進言したのは、杉江勘兵衛と松田重太夫らしい。」
「三成殿のご家臣であった……。あ、諸大名の元に島左近が訪れたという噂もありまする。真の反逆者は織田と小早川だと説いて回ってるそうで。」
 
 秀信と百々はしばらく考えた。
 
「百々。大垣衆を使って杉江勘兵衛と松田重太夫を調べさせよ。事と次第よっては……。」
「……は!」
 
 百々はすぐさまその場を後にした。
 
「秀忠の逃走が、島左近の策ならば、どうにかせねばな。」
 
 恐らく、徳川家は家督争いが起きる。
 が、島左近はそれを利用して徳川の結束を固めようとしている。
 危険はあるが、敗走した諸将は江戸に集っているというし、徳川が一つになれば危険度は高いと判断した。
 
「三郎に文を出して見るか……。三郎ならば、何かできるかもしれん。」
 
 そう考えた秀信は筆を走らせる。
 すると、客人が現れる。
 
「殿!お客人にございます。」
「誰だ?」
 
 木造長政が入ってくる。
 
「は。福島正則様にございます。」
「……そうか、立花殿とは共に行かなかったか。お通しせよ。」
「は。」
 
 すると、福島正則がはいってくる。
 
「これはこれは福島様。良くぞおいで下さった。此度は何用で?」
「秀信殿。色々とお話はお聞きしておりますぞ。織田家の一門で集まり、織田家をもり立てているとか。」
 
 関ヶ原で共に戦った織田信吉、長次兄弟はその後秀信の元に付き、共に美濃の再興に務めている。
 
「ええ、その通りに御座います。」
「それでですな。このお方達をご紹介したいと思いまして。」
 
 すると、福島正則の後ろから二人の男が現れる。
 
「おお、叔父上!」
「久しぶりですな。」
「秀信様もお元気そうで。」
 
 現れたのは信吉や長次と同じく信長の息子である信貞と信高であった。
 二人共西軍として戦っていたのである。
 
「尾張を案内していた所、織田家一門が頑張っているという話を聞きましてな。」
「なるほど、それで。」
 
 二人は頷いた。
 
「もしよろしければ我等も秀信殿と共に働きたい。どうじゃ?」
「無論、無理にとは言わぬが、信貞兄上と共に織田家のために力を尽くしたいのだ。」
 
 その申し出に、秀信は頷く。
 
「勿論にございます!是非とも、お力をおかし下さい!」
 
 かつて天下に名を轟かせた織田家。
 豊臣によって織田家は力を失ったが、今ここに、集結しつつあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...