【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

文字の大きさ
85 / 182

前哨戦 開戦

しおりを挟む
「殿! 上杉勢、出陣との事!」
「うむ、数は?」
 
 北陸を進む秀信の下に駆け寄った伝令が言う。
 
「その数、三万!」
「対する我らは五万。数の上では勝っておりまする」
 
 前田利長の言葉に秀信は頷く。
 
「では、先鋒は丹羽殿、金森殿に任せたい。宜しいか?」
「無論にござる!この丹羽長重。織田殿の元で戦えて嬉しゅうござる!」
「この金森長近、老いぼれではありますが、必ずや武功を上げてみせましょう」
 
 この時金森長近は齢七十後半であった。
 が、関ヶ原でも活躍した武将だった。
 丹羽長重。
 この男も関が原において西軍に与し、浅井畷の戦いで大軍の前田勢を苦しめた。
 織田五大将の一人である丹羽長秀の息子ならば先鋒を任せられると秀信は考えた。
 
「しかし、油断はなりませぬぞ大軍が負ける事もありますからな」
「……左様。油断大敵ですぞ」
 
 前田利長は丹羽長重を見ながら言う。
 そして、長重もそれに答える。
 二人はかつての敵同士であったからだ。
 
「よして下され。今の敵は上杉。今はかつての、織田家の家臣団としての力を見せつけて下され」
「……ここに揃うは織田家の旧家臣達、ですからな。連携は取りやすいかもしれませぬな」
 
 そこで、蜂須賀家政が口を開く。
 
「儂も、息子の至鎮も呼んで下さり誠にありがとうございまする。」
「それでしたら、この生駒親正も。息子の一正と共に感謝申し上げまする。」
 
 秀信は頷く。
 
「いえ、来てくださり誠にありがたい。そこでなのですが、ここより先は念の為、後方にも注意しておきたい。お二人にはここに残り、海から敵が来ても良いように備えていて欲しいのです。」
 
 秀信達はまだ金沢に居た。
 もし金沢が奇襲を受け、陥落すれば逃げ道は無くなるからであった。
 
「は! かしこまりました!」
「ありがとうございまする。」
 
 秀信は立ち上がる。
 
「さぁ、上杉を蹴散らしましょうぞ!」
 
 
 
「動いたか」
 
 上田城。
 そこに居る真田昌幸の耳には徳川が動いたという報せが入っていた。
 
「徳川勢二万五千。対する我らは二万程。兵の数では負けているが……」
「秀則様!」
 
 秀則は数の差を考えて策を練っていた。
 すると、伝令が駆け込んでくる。
 
「織田信雄様、福島正則様の援軍、一万五千が間もなくご到着なされます!」
「おお! 父上が!」
 
 その報告に、秀雄は喜ぶ。
 すると、昌幸は頷いた。
 
「うむ、ならば……」
「ならば使いを出せ」
 
 昌幸の言葉を遮り、秀則が言う。
 
「敵が我等を素通り出来ぬよう、中山道の出口に陣取り、上田城に誘導する。ですな?」
「……お見事」
 
 有楽斎は頷く。
 
「秀則殿。お見事でござる。敵が信雄様の軍を攻撃すれば我々が敵の後背を突き、敵が上田を攻めれば信雄様が敵の後背を突く。数の差に惑わされずによくぞお気づきになられた」
 
 有楽斎の言葉に秀則は頷く。
 そして、秀雄も続く。
 
「そうなると敵は二手に分かれるしか無い。寝返る者が出ると踏んでいる上田には一万、父上の方へは一万五千と言った所か」
「流石ですな。上田を抑えるだけであればその数で事足りましょう。上田を抑える軍が崩壊する前に野戦にて信雄様の軍を倒す。そのように出るでしょうな」
 
 歴戦の猛者二人とその歴戦の猛者に戦の何たるかを学んだ信長の孫二人。
 中山道が、最も強敵であった。
 
 
 
「来るか、秀忠」
 
 信康の陣に入った三郎は虎助に人質を送り届けさせ、東海道より迫る秀忠の軍を倒す為の策を講じていた。
 
「我が方一万五千。敵は二万五千。圧倒的不利ですな」
「島津殿。そもそも我らは関ヶ原から率いていた兵が少なかった。それに信康殿を慕って集った兵と岐阜からの援軍でここまで来たのだ。充分だろう」
 
 立花宗茂は続ける。
 
「それに、敵が寝返る可能性がある。勝てる可能性は十分にありますぞ」
 
 立花宗茂のその言葉に信康は頷く。
 
「立花殿の申す通り。それに、三郎殿がおる限りそう簡単には負けぬ。そうであろう?」
 
 三郎は頷く。
 
「無論に御座います。」
 
 三郎は少し笑う。
 
「関ヶ原で尻尾を巻いて逃げ出した徳川秀忠など、簡単に蹴散らしてみせましょう。今度こそ、息の根を止めてみせまする」
 
 天下分け目の大戦の前哨戦が、始まる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...