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槍半蔵と三郎

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 渡辺守綱。
 徳川十六神将の一人に数えられ、その先祖は源頼光四天王の一人、渡辺綱とされる。
 服部正成が鬼半蔵と呼ばれたのに対し、槍半蔵と言われた猛将である。
 
「今こちらに降ればお咎め無し。徳川家重臣としての立場をお約束しますぞ」
「只の織田家の三男がそれ程の権力を持っているとは思えぬな! はぁっ!」
 
 守綱は槍を繰り出す。
 三郎は刀でそれを受け流す。
 そして、距離を詰める。
 三郎は刀で喉を狙い、突く。
 
「はぁっ!」
「くっ! 中々やるな!」
 
 守綱は三郎の刀を躱し、距離を取る。
 
「幸いにも、周りには邪魔をする者がおりませぬ故、一騎討ちを楽しみましょうぞ」
「……面白い」
 
 三郎は甲冑の大袖を手盾代わりに前進する。
 そして、守綱の槍が飛んでくる。
 
「……はぁっ!」
 
 三郎はすんでの所で躱し、槍を掴む。
 そして、距離を詰め、刀を繰り出す。
 
「ちっ!」
 
 守綱は槍を手放し、距離を取る。
 そして、刀を抜く。
 
「この渡辺守綱、槍だけでは無いぞ!」
「無論に御座います。油断は決してしませぬ」
 
 三郎は槍を捨てる。
 互いに距離を詰めず、間合いを確かめる。
 
「はぁっ!」
 
 三郎が先に仕掛ける。

「ふんっ!」
 
 三郎の刀は弾かれた。
 そして刀を振り下ろした守綱はそのまま下段の構えになる。
 三郎は一気に飛びかかる。
 
「ぬぅっ!」
 
 組み伏せられた守綱は刀を動かせなかった。
 その隙をついて三郎は小刀を取り出す。
 そして、それを首に突きつける。
 
「さぁ! 降伏なされよ! 貴方ほどのお方を死なせたくは無い!」
「……変わっておるな。手柄とすれば良いものを……」
 
 すると、二人の戦場に兵士がなだれ込んでくる。
 それと共に信康も現れる。
 
「三郎殿! ……守綱殿」
「……信康様」
 
 すると、信康は三郎の肩に手を置く。
 
「三郎殿」
「……分かり申した」
 
 三郎は守綱から離れる。
 すると、守綱はゆっくりと立ち上がる。
 周りの兵は構えるが、信康が手を挙げる。
 
「良い。やめろ」
「信康様」
 
 守綱は信康に膝をつき、頭を下げた。
 
「信康様。お久しゅうございます」
「うむ。久しぶりだな」
 
 守綱はそのまま続ける。
 
「もし……もしお赦し頂けるのならば、もう一度信康様と共に戦いとうございます。天海殿を逃がし、殿の兵を傷つけた某をお赦し頂けるでしょうか」
「当たり前だ」
 
 信康は守綱の肩に手を置く。
 
「槍半蔵。期待しておるぞ」
「ははっ!」
「と、殿!」
 
 すると、伝令が駆け込んでくる。
 
「どうした!?」
「お、尾張が……」
 
 伝令は息を整えつつ言う。
 
「尾張が、伊達の手に落ちたとの事です!」
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