97 / 182
尾張の伊達
しおりを挟む
「……」
伊達政宗率いる欧州連合軍は尾張、清洲城に入った。
しかし、そこから動くことはしなかった。
東海道に居る豊臣方に向けて兵を進めることはしなかったのだ。
「伊達様! 今こそ好機! 東海道の豊臣方の後背をつくのです!」
「左近殿……」
島左近は伊達政宗に意見する。
しかし、政宗はまともに対応しない。
「今、容易に軍を動かすわけにはいかぬ。九鬼水軍のせいで決して少なくはない被害が出た。尾張で地盤を整えねば」
「……確かに、里見の水軍の力を借りてなければ、我々は更に酷い損害を被っていたでしょうな……」
伊達政宗率いる欧州連合軍は里見家の水軍の力を借りて尾張を強襲した。
しかし、誤算があった。
九鬼水軍が伊達軍の襲来を察知し、伊勢湾において海戦が勃発。
欧州連合軍は辛くも勝利したが、被害は少なく無く、荷駄船が集中的に襲われ、兵糧が特に不安であった。
「現在、制圧した城からは兵糧をかき集めてはいるが、ここを治めていた福島正則が出陣しており、あまり無い。東海道に向けて兵を進めるとなると……少々心許ない」
「……まぁ、たしかにここにいるだけで東海道の戦に大きな影響は出るでしょうが……」
伊達政宗は島左近を見る。
「……お主の目的は、織田三郎を始末することであろう?」
「……」
「たった一人に注目しすぎて、大局が見えておらんのでは無いか?」
島左近は答えない。
「岐阜には西から大軍が続々と集まってきている。今東海道に兵を向ければ我々は後背をつかれる事になる。そうなればこの戦は負けだ」
「……たしかに、仰る通りにございます」
島左近は頭を下げる。
「最も肝要なのは豊臣を滅ぼすこと。大阪さえ抑えれば織田も手が出せませぬ。ここは兵が集まるのを待つべきですな」
その島左近の言葉に政宗も頷く。
「うむ。儂の予想では他の戦場では徳川方は負けているだろう」
「は、某も同じ事を考えておりました。単純な兵力差、味方した勢力の差で負けている以上、その結果は仕方がありませぬ。東海道は確実に勝てると踏んでおりましたが」
しかし、島左近は笑う。
「恐らくですが、中山道は確実に負けるでしょうな。相手は真田。毛利に織田が加わっている以上、勝てませぬ」
「……そこで、結城秀康を失うことで徳川の結束を取り戻そうという算段か」
島左近は頷く。
「は。これで徳川は秀忠様を正当なる後継者と認めるでしょう。さすれば、徳川の結束は固くなり、信康様に靡くものも居なくなりまする」
「……しかし、我々奥州連合軍の数は五万程。岐阜にいる敵の数も五万はいるぞ。そこはどうする?」
島左近は立ち上がり、日本地図を広げる。
「水軍は壊滅的な被害を受けましたが、まだ動けまする。大きく迂回し、大阪の町を燃やしまする。もしくは大阪に敵が上陸するという噂を流し、岐阜の敵の数を減らしまする」
「なる程な……味方を増やすではなく敵を減らす、か」
島左近は頷く。
「それでも数の上では我らの方が少ない。どうにか兵を集めたいところ。上杉や江戸本国から兵を何とか集めたいですな」
「そこは秀忠殿のお力を信じるのみ、か」
伊達政宗は立ち上がる。
「しかし、ここでじっとしてるのも俺らしくは無い、な」
政宗はそのまま進んでいき、岐阜の方を見る。
「少し、暴れてやるか。伊達の戦を見せてやろう」
伊達政宗率いる欧州連合軍は尾張、清洲城に入った。
しかし、そこから動くことはしなかった。
東海道に居る豊臣方に向けて兵を進めることはしなかったのだ。
「伊達様! 今こそ好機! 東海道の豊臣方の後背をつくのです!」
「左近殿……」
島左近は伊達政宗に意見する。
しかし、政宗はまともに対応しない。
「今、容易に軍を動かすわけにはいかぬ。九鬼水軍のせいで決して少なくはない被害が出た。尾張で地盤を整えねば」
「……確かに、里見の水軍の力を借りてなければ、我々は更に酷い損害を被っていたでしょうな……」
伊達政宗率いる欧州連合軍は里見家の水軍の力を借りて尾張を強襲した。
しかし、誤算があった。
九鬼水軍が伊達軍の襲来を察知し、伊勢湾において海戦が勃発。
欧州連合軍は辛くも勝利したが、被害は少なく無く、荷駄船が集中的に襲われ、兵糧が特に不安であった。
「現在、制圧した城からは兵糧をかき集めてはいるが、ここを治めていた福島正則が出陣しており、あまり無い。東海道に向けて兵を進めるとなると……少々心許ない」
「……まぁ、たしかにここにいるだけで東海道の戦に大きな影響は出るでしょうが……」
伊達政宗は島左近を見る。
「……お主の目的は、織田三郎を始末することであろう?」
「……」
「たった一人に注目しすぎて、大局が見えておらんのでは無いか?」
島左近は答えない。
「岐阜には西から大軍が続々と集まってきている。今東海道に兵を向ければ我々は後背をつかれる事になる。そうなればこの戦は負けだ」
「……たしかに、仰る通りにございます」
島左近は頭を下げる。
「最も肝要なのは豊臣を滅ぼすこと。大阪さえ抑えれば織田も手が出せませぬ。ここは兵が集まるのを待つべきですな」
その島左近の言葉に政宗も頷く。
「うむ。儂の予想では他の戦場では徳川方は負けているだろう」
「は、某も同じ事を考えておりました。単純な兵力差、味方した勢力の差で負けている以上、その結果は仕方がありませぬ。東海道は確実に勝てると踏んでおりましたが」
しかし、島左近は笑う。
「恐らくですが、中山道は確実に負けるでしょうな。相手は真田。毛利に織田が加わっている以上、勝てませぬ」
「……そこで、結城秀康を失うことで徳川の結束を取り戻そうという算段か」
島左近は頷く。
「は。これで徳川は秀忠様を正当なる後継者と認めるでしょう。さすれば、徳川の結束は固くなり、信康様に靡くものも居なくなりまする」
「……しかし、我々奥州連合軍の数は五万程。岐阜にいる敵の数も五万はいるぞ。そこはどうする?」
島左近は立ち上がり、日本地図を広げる。
「水軍は壊滅的な被害を受けましたが、まだ動けまする。大きく迂回し、大阪の町を燃やしまする。もしくは大阪に敵が上陸するという噂を流し、岐阜の敵の数を減らしまする」
「なる程な……味方を増やすではなく敵を減らす、か」
島左近は頷く。
「それでも数の上では我らの方が少ない。どうにか兵を集めたいところ。上杉や江戸本国から兵を何とか集めたいですな」
「そこは秀忠殿のお力を信じるのみ、か」
伊達政宗は立ち上がる。
「しかし、ここでじっとしてるのも俺らしくは無い、な」
政宗はそのまま進んでいき、岐阜の方を見る。
「少し、暴れてやるか。伊達の戦を見せてやろう」
2
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる