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佐竹の家の為
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「呆気ないな……」
南部利直は城内に入り、ひれ伏す降伏した者達を見る。
「良くぞこ決心なさった。お主達の処遇は追々決めると致す。まずは兵糧を運び出したい。協力してくれるか?」
「勿論にございます」
大垣城の将の代表の者が頭を下げる。
「これよりは徳川方として力を尽くしとう存じます」
利直は頷く。
「うむ。頼んだぞ」
「は!」
利直は頷くと、その場をあとにする。
その後を佐竹義重ともう一人。
義重の嫡男、佐竹義宣であった。
「義宣。兵糧の差配は任せる。儂は利直殿と共に今後の策について話し合う。任せたぞ」
「は」
義宣は頭を下げる。
そして、二人はその場を後にする。
すると、大垣城の将が義宣に近づく。
「義宣様。某ともう一人が代表して兵糧の差配について担当致しまする」
すると、先程の大垣城の将ともう一人が頭を下げた。
「うむ。宜しく頼む」
その後、佐竹義宣と二人の将は個室にて話し合っていた。
「さて、早速……」
「その前に、一つよろしいか」
佐竹義宣は少し戸惑いつつも頷く。
「まず、某の名前は後藤又兵衛にござる」
「儂は斎藤徳元と申しまする」
その言葉を聞き、義宣は刀に手をかける。
「くっ! 謀ったな!」
「待たれよ! 我らに義宣様と敵対するつもりはありませぬ!」
「……儂と、と言うことは……」
徳元は頷く。
「あなたを、調略したいと考えておりまする」
「成る程……」
又兵衛は頷く。
「儂を調略するためだけに城の中に敵を引き込んだのか。自分達を死んだ事にして」
「いえ、それだけではありませぬが……」
又兵衛は義宣を見ながら言う。
「これ以上は言えませぬな」
「ならば、何故儂を調略しようとしているか聞こう」
徳元が口を開く。
「貴方様は関ヶ原の折、豊臣方に味方しようと動いていたと聞いておりまする。此度もあまり気乗りがしていないのではありませぬか?」
「……」
義宣は静かに話を聞く。
「もし、義宣様にその気があるのならば、ご協力して頂けませぬか。この戦、どう見ても豊臣方が有利。この戦で負けた者達は一体どうなるのやら……」
「……もし、お主等についたら勝てるのか?」
徳元は頷く。
「一つ申し上げるとすれば、義宣様がどうしようと、我々の勝ちは揺るぎませぬ」
「……」
「ただ、この戦による死者の数は双方共に増えまするな……義宣様がこちらに付いてくれれば、多くの人の命が救われ、佐竹の家とお父上の命は守られるでしょうな」
義宣はしばらく考える。
そして、頷き、決意する。
「分かった。石田殿へ恩を返すことも出来なかった今、石田殿の意思を継いで豊臣の為に働こう……石田殿を討った織田殿に味方するのではなく、豊臣に味方しよう。……で、どうすれば良いのだ」
「良くぞご決断なされた。この徳元、そして又兵衛殿、黒田長政殿が必ずや佐竹の家を守ってみせまする」
徳元は懐から文を取り出す。
「策はここに記されておりまする。決行は今夜」
義宣はその文を受け取り、中身を確認する。
「……ふむ、面白い」
「では、宜しく頼みましたぞ」
かくして、佐竹義宣の調略は成った。
南部利直は城内に入り、ひれ伏す降伏した者達を見る。
「良くぞこ決心なさった。お主達の処遇は追々決めると致す。まずは兵糧を運び出したい。協力してくれるか?」
「勿論にございます」
大垣城の将の代表の者が頭を下げる。
「これよりは徳川方として力を尽くしとう存じます」
利直は頷く。
「うむ。頼んだぞ」
「は!」
利直は頷くと、その場をあとにする。
その後を佐竹義重ともう一人。
義重の嫡男、佐竹義宣であった。
「義宣。兵糧の差配は任せる。儂は利直殿と共に今後の策について話し合う。任せたぞ」
「は」
義宣は頭を下げる。
そして、二人はその場を後にする。
すると、大垣城の将が義宣に近づく。
「義宣様。某ともう一人が代表して兵糧の差配について担当致しまする」
すると、先程の大垣城の将ともう一人が頭を下げた。
「うむ。宜しく頼む」
その後、佐竹義宣と二人の将は個室にて話し合っていた。
「さて、早速……」
「その前に、一つよろしいか」
佐竹義宣は少し戸惑いつつも頷く。
「まず、某の名前は後藤又兵衛にござる」
「儂は斎藤徳元と申しまする」
その言葉を聞き、義宣は刀に手をかける。
「くっ! 謀ったな!」
「待たれよ! 我らに義宣様と敵対するつもりはありませぬ!」
「……儂と、と言うことは……」
徳元は頷く。
「あなたを、調略したいと考えておりまする」
「成る程……」
又兵衛は頷く。
「儂を調略するためだけに城の中に敵を引き込んだのか。自分達を死んだ事にして」
「いえ、それだけではありませぬが……」
又兵衛は義宣を見ながら言う。
「これ以上は言えませぬな」
「ならば、何故儂を調略しようとしているか聞こう」
徳元が口を開く。
「貴方様は関ヶ原の折、豊臣方に味方しようと動いていたと聞いておりまする。此度もあまり気乗りがしていないのではありませぬか?」
「……」
義宣は静かに話を聞く。
「もし、義宣様にその気があるのならば、ご協力して頂けませぬか。この戦、どう見ても豊臣方が有利。この戦で負けた者達は一体どうなるのやら……」
「……もし、お主等についたら勝てるのか?」
徳元は頷く。
「一つ申し上げるとすれば、義宣様がどうしようと、我々の勝ちは揺るぎませぬ」
「……」
「ただ、この戦による死者の数は双方共に増えまするな……義宣様がこちらに付いてくれれば、多くの人の命が救われ、佐竹の家とお父上の命は守られるでしょうな」
義宣はしばらく考える。
そして、頷き、決意する。
「分かった。石田殿へ恩を返すことも出来なかった今、石田殿の意思を継いで豊臣の為に働こう……石田殿を討った織田殿に味方するのではなく、豊臣に味方しよう。……で、どうすれば良いのだ」
「良くぞご決断なされた。この徳元、そして又兵衛殿、黒田長政殿が必ずや佐竹の家を守ってみせまする」
徳元は懐から文を取り出す。
「策はここに記されておりまする。決行は今夜」
義宣はその文を受け取り、中身を確認する。
「……ふむ、面白い」
「では、宜しく頼みましたぞ」
かくして、佐竹義宣の調略は成った。
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