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早馬
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「中々、上手く行かんな……」
毛利輝元は本陣にて各地の戦況を耳にしていた。
「伊達政宗が出てきたのは、我等の目を引き付けるため。その間に大垣城と犬山城を確実に抑え、中山道から戻って来る軍と、大阪からの連絡線を途絶えさせる事が狙いだったか……」
「されど、大垣は抑えましたぞ」
長宗我部盛親が口を開く。
「犬山は抑えきれておりませぬが、大垣を抑さえたことにより、大阪からの援軍は見込めまする。伊達の目論見を見事防ぎましたな」
「うむ、そうだな。」
「殿!」
すると、伝令が駆け込んでくる。
かなり慌てた様子であった。
「如何した!?」
「大阪より知らせが!」
伝令は文を差し出す。
輝元はそれを受け取り、中身を確認した。
「なんと……」
「毛利殿、文には何と?」
毛利輝元は文を盛親に渡し、話す。
「大阪が、強襲されるという噂が流れており、大阪からこれ以上の援軍は送れぬと」
「……今の徳川方にそのような余力があるとは思えませぬが……」
輝元は頷く。
「うむ、ハッタリだろう。恐らく、秀忠では無く、伊達の仕業だ」
「ですな……豊久殿が捕らえた、片倉小十郎とやらが口を割れば真意はわかるのですが……」
豊久が捕らえた片倉小十郎景綱は頑なに口を割らなかった。
「仕方が無い。我等だけで伊達を抑えなければならぬ。少々手が足らぬが……何とか、犬山だけでも取り返さなくてはな」
「ですな、大垣を抑えたとはいえ、手を開ける訳には参りませぬ。我等長宗我部勢も犬山へ向かうとしまする」
輝元は頷く。
「犬山さえ抑えれば、三郎殿達がこちらへ来る障害を取り除ける。犬山だけは、なんとしても抑えなければ」
「と、殿!」
すると、また伝令が駆け込んでくる。
こちらもまた、慌てた様子であった。
「今度は何事だ!?」
「そ、それが……」
「我等本隊も犬山へ向かうぞ」
「ここはどうするのですか?」
政宗は親戚であり、重臣である伊達成実の問いに答える。
「清須は捨てて行く!」
「それは、何故ですかな?」
成実は慌てる様子は無く、政宗もそれに答える。
「敵は手が足りぬと焦り、兵を犬山へ向けるだろう。そうなっては犬山が保たん。我ら本隊が、かき集めた兵糧と共に犬山へ入り、守りを固める! ここ清須には東海道より秀忠の本軍が到着するであろうしな!」
「成る程……大垣城の大量の兵糧を犬山へ運べなくなった今、兵と兵糧を一所に集め、守りを固めるということですか」
政宗は頷く。
「うむ。犬山をいかに守り通せるかがこの大戦の要となるであろう。儂が直接守りに入る」
「良き策ですな」
「で、伝令!」
すると、伝令が入ってくる。
ボロボロで、傷だらけであった。
「どうした!? 何があった!?」
「い、犬山が……」
伝令は息を整えつつ喋る。
「犬山が……落ちてございます!」
「な……何があったというのだ!? まだまだそう簡単には落ちぬ筈だ!」
その報告に流石の政宗も慌てる。
「わ、分かりませぬ……ですが、織田、毛利、徳川に真田、立花、福島などの旗印の大軍が突如として現れ、最上殿は犬山城を捨て、こちらへ向かっておりまする!」
「な……織田……だと……」
戦況は一変する。
三郎の策が、政宗の策を大きく狂わせた。
毛利輝元は本陣にて各地の戦況を耳にしていた。
「伊達政宗が出てきたのは、我等の目を引き付けるため。その間に大垣城と犬山城を確実に抑え、中山道から戻って来る軍と、大阪からの連絡線を途絶えさせる事が狙いだったか……」
「されど、大垣は抑えましたぞ」
長宗我部盛親が口を開く。
「犬山は抑えきれておりませぬが、大垣を抑さえたことにより、大阪からの援軍は見込めまする。伊達の目論見を見事防ぎましたな」
「うむ、そうだな。」
「殿!」
すると、伝令が駆け込んでくる。
かなり慌てた様子であった。
「如何した!?」
「大阪より知らせが!」
伝令は文を差し出す。
輝元はそれを受け取り、中身を確認した。
「なんと……」
「毛利殿、文には何と?」
毛利輝元は文を盛親に渡し、話す。
「大阪が、強襲されるという噂が流れており、大阪からこれ以上の援軍は送れぬと」
「……今の徳川方にそのような余力があるとは思えませぬが……」
輝元は頷く。
「うむ、ハッタリだろう。恐らく、秀忠では無く、伊達の仕業だ」
「ですな……豊久殿が捕らえた、片倉小十郎とやらが口を割れば真意はわかるのですが……」
豊久が捕らえた片倉小十郎景綱は頑なに口を割らなかった。
「仕方が無い。我等だけで伊達を抑えなければならぬ。少々手が足らぬが……何とか、犬山だけでも取り返さなくてはな」
「ですな、大垣を抑えたとはいえ、手を開ける訳には参りませぬ。我等長宗我部勢も犬山へ向かうとしまする」
輝元は頷く。
「犬山さえ抑えれば、三郎殿達がこちらへ来る障害を取り除ける。犬山だけは、なんとしても抑えなければ」
「と、殿!」
すると、また伝令が駆け込んでくる。
こちらもまた、慌てた様子であった。
「今度は何事だ!?」
「そ、それが……」
「我等本隊も犬山へ向かうぞ」
「ここはどうするのですか?」
政宗は親戚であり、重臣である伊達成実の問いに答える。
「清須は捨てて行く!」
「それは、何故ですかな?」
成実は慌てる様子は無く、政宗もそれに答える。
「敵は手が足りぬと焦り、兵を犬山へ向けるだろう。そうなっては犬山が保たん。我ら本隊が、かき集めた兵糧と共に犬山へ入り、守りを固める! ここ清須には東海道より秀忠の本軍が到着するであろうしな!」
「成る程……大垣城の大量の兵糧を犬山へ運べなくなった今、兵と兵糧を一所に集め、守りを固めるということですか」
政宗は頷く。
「うむ。犬山をいかに守り通せるかがこの大戦の要となるであろう。儂が直接守りに入る」
「良き策ですな」
「で、伝令!」
すると、伝令が入ってくる。
ボロボロで、傷だらけであった。
「どうした!? 何があった!?」
「い、犬山が……」
伝令は息を整えつつ喋る。
「犬山が……落ちてございます!」
「な……何があったというのだ!? まだまだそう簡単には落ちぬ筈だ!」
その報告に流石の政宗も慌てる。
「わ、分かりませぬ……ですが、織田、毛利、徳川に真田、立花、福島などの旗印の大軍が突如として現れ、最上殿は犬山城を捨て、こちらへ向かっておりまする!」
「な……織田……だと……」
戦況は一変する。
三郎の策が、政宗の策を大きく狂わせた。
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