107 / 182
早馬
しおりを挟む
「中々、上手く行かんな……」
毛利輝元は本陣にて各地の戦況を耳にしていた。
「伊達政宗が出てきたのは、我等の目を引き付けるため。その間に大垣城と犬山城を確実に抑え、中山道から戻って来る軍と、大阪からの連絡線を途絶えさせる事が狙いだったか……」
「されど、大垣は抑えましたぞ」
長宗我部盛親が口を開く。
「犬山は抑えきれておりませぬが、大垣を抑さえたことにより、大阪からの援軍は見込めまする。伊達の目論見を見事防ぎましたな」
「うむ、そうだな。」
「殿!」
すると、伝令が駆け込んでくる。
かなり慌てた様子であった。
「如何した!?」
「大阪より知らせが!」
伝令は文を差し出す。
輝元はそれを受け取り、中身を確認した。
「なんと……」
「毛利殿、文には何と?」
毛利輝元は文を盛親に渡し、話す。
「大阪が、強襲されるという噂が流れており、大阪からこれ以上の援軍は送れぬと」
「……今の徳川方にそのような余力があるとは思えませぬが……」
輝元は頷く。
「うむ、ハッタリだろう。恐らく、秀忠では無く、伊達の仕業だ」
「ですな……豊久殿が捕らえた、片倉小十郎とやらが口を割れば真意はわかるのですが……」
豊久が捕らえた片倉小十郎景綱は頑なに口を割らなかった。
「仕方が無い。我等だけで伊達を抑えなければならぬ。少々手が足らぬが……何とか、犬山だけでも取り返さなくてはな」
「ですな、大垣を抑えたとはいえ、手を開ける訳には参りませぬ。我等長宗我部勢も犬山へ向かうとしまする」
輝元は頷く。
「犬山さえ抑えれば、三郎殿達がこちらへ来る障害を取り除ける。犬山だけは、なんとしても抑えなければ」
「と、殿!」
すると、また伝令が駆け込んでくる。
こちらもまた、慌てた様子であった。
「今度は何事だ!?」
「そ、それが……」
「我等本隊も犬山へ向かうぞ」
「ここはどうするのですか?」
政宗は親戚であり、重臣である伊達成実の問いに答える。
「清須は捨てて行く!」
「それは、何故ですかな?」
成実は慌てる様子は無く、政宗もそれに答える。
「敵は手が足りぬと焦り、兵を犬山へ向けるだろう。そうなっては犬山が保たん。我ら本隊が、かき集めた兵糧と共に犬山へ入り、守りを固める! ここ清須には東海道より秀忠の本軍が到着するであろうしな!」
「成る程……大垣城の大量の兵糧を犬山へ運べなくなった今、兵と兵糧を一所に集め、守りを固めるということですか」
政宗は頷く。
「うむ。犬山をいかに守り通せるかがこの大戦の要となるであろう。儂が直接守りに入る」
「良き策ですな」
「で、伝令!」
すると、伝令が入ってくる。
ボロボロで、傷だらけであった。
「どうした!? 何があった!?」
「い、犬山が……」
伝令は息を整えつつ喋る。
「犬山が……落ちてございます!」
「な……何があったというのだ!? まだまだそう簡単には落ちぬ筈だ!」
その報告に流石の政宗も慌てる。
「わ、分かりませぬ……ですが、織田、毛利、徳川に真田、立花、福島などの旗印の大軍が突如として現れ、最上殿は犬山城を捨て、こちらへ向かっておりまする!」
「な……織田……だと……」
戦況は一変する。
三郎の策が、政宗の策を大きく狂わせた。
毛利輝元は本陣にて各地の戦況を耳にしていた。
「伊達政宗が出てきたのは、我等の目を引き付けるため。その間に大垣城と犬山城を確実に抑え、中山道から戻って来る軍と、大阪からの連絡線を途絶えさせる事が狙いだったか……」
「されど、大垣は抑えましたぞ」
長宗我部盛親が口を開く。
「犬山は抑えきれておりませぬが、大垣を抑さえたことにより、大阪からの援軍は見込めまする。伊達の目論見を見事防ぎましたな」
「うむ、そうだな。」
「殿!」
すると、伝令が駆け込んでくる。
かなり慌てた様子であった。
「如何した!?」
「大阪より知らせが!」
伝令は文を差し出す。
輝元はそれを受け取り、中身を確認した。
「なんと……」
「毛利殿、文には何と?」
毛利輝元は文を盛親に渡し、話す。
「大阪が、強襲されるという噂が流れており、大阪からこれ以上の援軍は送れぬと」
「……今の徳川方にそのような余力があるとは思えませぬが……」
輝元は頷く。
「うむ、ハッタリだろう。恐らく、秀忠では無く、伊達の仕業だ」
「ですな……豊久殿が捕らえた、片倉小十郎とやらが口を割れば真意はわかるのですが……」
豊久が捕らえた片倉小十郎景綱は頑なに口を割らなかった。
「仕方が無い。我等だけで伊達を抑えなければならぬ。少々手が足らぬが……何とか、犬山だけでも取り返さなくてはな」
「ですな、大垣を抑えたとはいえ、手を開ける訳には参りませぬ。我等長宗我部勢も犬山へ向かうとしまする」
輝元は頷く。
「犬山さえ抑えれば、三郎殿達がこちらへ来る障害を取り除ける。犬山だけは、なんとしても抑えなければ」
「と、殿!」
すると、また伝令が駆け込んでくる。
こちらもまた、慌てた様子であった。
「今度は何事だ!?」
「そ、それが……」
「我等本隊も犬山へ向かうぞ」
「ここはどうするのですか?」
政宗は親戚であり、重臣である伊達成実の問いに答える。
「清須は捨てて行く!」
「それは、何故ですかな?」
成実は慌てる様子は無く、政宗もそれに答える。
「敵は手が足りぬと焦り、兵を犬山へ向けるだろう。そうなっては犬山が保たん。我ら本隊が、かき集めた兵糧と共に犬山へ入り、守りを固める! ここ清須には東海道より秀忠の本軍が到着するであろうしな!」
「成る程……大垣城の大量の兵糧を犬山へ運べなくなった今、兵と兵糧を一所に集め、守りを固めるということですか」
政宗は頷く。
「うむ。犬山をいかに守り通せるかがこの大戦の要となるであろう。儂が直接守りに入る」
「良き策ですな」
「で、伝令!」
すると、伝令が入ってくる。
ボロボロで、傷だらけであった。
「どうした!? 何があった!?」
「い、犬山が……」
伝令は息を整えつつ喋る。
「犬山が……落ちてございます!」
「な……何があったというのだ!? まだまだそう簡単には落ちぬ筈だ!」
その報告に流石の政宗も慌てる。
「わ、分かりませぬ……ですが、織田、毛利、徳川に真田、立花、福島などの旗印の大軍が突如として現れ、最上殿は犬山城を捨て、こちらへ向かっておりまする!」
「な……織田……だと……」
戦況は一変する。
三郎の策が、政宗の策を大きく狂わせた。
4
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった
海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。
ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。
そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。
主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。
ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。
それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。
ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる