【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

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光秀と三郎

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「負けたか……」
 
 天海は一人戦場を逃げ出した。
 混戦の最中、たった一人で逃げ出したのだった。
 
「さて、これからどうしたものか……」
「天海!」
 
 しかし、天海を追う男が一人。
 天海の後ろから現れる。
 
「織田三郎……」
「天海……いや、明智光秀!」
 
 三郎は単身で天海を追っていた。
 
「……もし仮に儂が明智光秀だったとして、祖父の仇を取るのか?」
「……いいや、祖父ではない」
 
 三郎は刀を抜き、天海へと向ける。
 
「俺の……俺自身の仇を取る」
「俺の……? まさか、いやそんな訳は……」
 
 天海は少し狼狽えた後、三郎を見る。
 
「ま……まさか、あなた様は……」
「……主の事が分からぬか……だから負けるのだ、キンカン頭」
「……くっ!」
 
 天海は急ぎ、馬を返す。
 そして、一気に走らせる。
 
「逃さぬ!」
 
 三郎も馬を走らせる。
 しかし、天海は徐々に差を詰められていく。
 
「な……何故だ……」
「お主は一人逃げるためにその馬を必死に走らせたのだろう! もう限界が来たのだ!」
 
 三郎は距離を詰めた所で刀を投げた。
 それが馬の足に当たる。
 すると、天海の馬が転び、天海は投げ出される。
 そして、三郎が近づく。
 
「……逃げるとは情けない……俺はこんな男に殺されたのか……」
「……くっ!」
 
 天海はすかさず刀を抜く。
 が、三郎はもう一本の刀を抜き、叩き落される。
 
「そう簡単に死なせはせん……」
「……」
「光秀、何故俺を殺した?」
 
 しかし、天海は答えない。 
 
「……いや、そんな事は今となっては些細な事か」
 
 三郎は刀を天海の首に当てる。
 
「……殺すのか?」
「まだ殺さぬ。お主は捕えて、皆の意見で処遇を決める。まぁ、全ての黒幕とも言えるお主は、それはそれは酷い死に方をするであろうがな……」
 
 しかし、天海は顔色を変えない。
 そのことに、三郎は怒りを覚えた。
 
「……そうだ、光秀よ」
「……なんですかな?」
「武士として、傷一つ無く捕らえられるのは恥であろう」
 
 三郎は刀を振りかざし、そのまま躊躇うこと無く振り下ろす。
 
「ぐっ!」
 
 天海は腕に傷を負う。
 天海はたまらず、傷を押さえる。
 
「それだけでは足りぬか……ならば……顔にも傷をつけてやろう」
「三郎!」
 
 すると、三郎と天海の下に秀則達の軍が現れる。
 
「……それは」
「天海だ。そして、その正体は……明智光秀だ」
 
 その三郎の言葉に秀則は驚く。
 
「な!? 天海が、光秀だと!?」
「あぁ。こいつは捕えて皆の意見で処遇を決める」
 
 三郎は刀をしまう。
 
「秀則。俺がこいつをどうしたいかは、充分に理解してるだろ。この後、岐阜にて裁定を始める。それに合わせてこいつの処遇がそうなるように、諸将にそれとなく根回しをしておけ」
「……私に出来るでしょうか……」
 
 すると、三郎は秀則の肩に手を置く。
 
「真田の元で鍛えられたお主ならば出来るだろう。任せたぞ」
「……任せてくれ! 可能な限り、やれる事はやってみせよう!」
 
 三郎は天海を見る。
 
「お主の命運は尽きたな。覚悟せよ」
「……もはや逃げは致しませぬ。覚悟は、決めました」
 
 かくして関ヶ原は豊臣方の大勝に終わった。
 豊臣の世が守られることとなったのであった。
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