【祝!完結!】第六天魔王、織田信長、再臨す 〜関ヶ原から始める織田家再興物語〜 

中村幸男

文字の大きさ
156 / 182

景勝一行 大阪入り

しおりを挟む
 越後を脱した景勝一行は大阪にたどり着いていた。
 そこで、第二次本能寺の変と大阪の変を知る。
 更に、秀信達と既に和睦していることも耳にした。
 
「何ということだ……遅かったのか……」
「景勝様。どうも、そう簡単な話では無いようですぞ」
 
 前田慶次がそう言う。
 慶次の視線の先では堤が作られていた。
 それらを作っているのは伊達によって集められた浪人衆である。
 
「どういう事だ……何故堤を……」
「殿。近隣の者に話を聞いて参りました」
 
 すると、直江景綱が戻って来る。
 
「どうやら、和睦の条件として、大阪の地のために働けと、そう提示されたようにございまする」
「成る程……それで堤をつくっているのか」
 
 景勝は暫く考える。
 
「……見よ、あそこで働く者達の顔を」
 
 景勝のその言葉に、二人は堤を作っている者達の方へと視線を向ける。
 
「皆、不満そうな顔をしている。……思う所はそれぞれであろう。ここを最後の散り場所としようと思っていた者……織田に一矢報いてやろうと思っていた者……それらが全て果たされず、このような仕事をさせられているのだからな」
 
 景勝の言う通り、それらの者は不満そうな顔をしながら仕事をしていた。
 見たところ、作業も捗っていないようであった。
 
「失礼……もしや、上杉殿ですかな?」
 
 すると、景勝に話しかける男が現れる。
 
「お主は……」
「は。最上家親……最上義光の次男にございまする」
 
 その名乗りを聞き、景勝は驚く。
 
「おお……義光殿の……お父上は関ヶ原で立派な戦をしたと聞く……そう言えば家親殿は一度目の関ヶ原で秀忠殿の陣に居たとか……その後どうなされていたのだ?」

 景勝の問いに答える。

「は。何とか国に帰ろうとしたのですが、中々上手く行かず、京に潜伏していた所、父が関ヶ原まで来ていると知り、手勢を率いて助けに駆けつけようとしたのですが間に合わず、途方に暮れている所にこの騒動。仇討ち……とは言いませぬが、既に兄と所領も押さえられているでしょうし、ここを最上再興の一歩目としようとしていた所にございまする」
「成る程……しかし、戦は終わったようだが……」
 
 すると、家親はあたりを気にしながら景勝に耳打ちする。
 
「伊達様は、まだ諦めてはおりませぬ。戦は終わってはおらぬのです。あそこで働いている者達……皆が戦がしたいから不満そうな顔をしている訳では無いのです……」
「……ほう」
「詳しくは大阪城にいる政宗様からお聞きくだされ」
 
 家親は頭を下げるとその場を後にする。
 
「慶次……景綱……まだ、やれる事はありそうだぞ」
「は。どこまでもお供いたしまする」
「俺も、直江殿と同じ想いにございます」
 
 かくして、景勝一行は大阪入りをする。
 果たしてどこまでが、三郎の策なのか。
 それを知るものは、ごく僅かである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ダンジョントランスポーター ~ 現代に現れたダンジョンに潜ったらレベル999の天使に憑依されて運び屋になってしまった

海道一人
ファンタジー
二十年前、地球の各地に突然異世界とつながるダンジョンが出現した。 ダンジョンから持って出られるのは無機物のみだったが、それらは地球上には存在しない人類の科学や技術を数世代進ませるほどのものばかりだった。 そして現在、一獲千金を求めた探索者が世界中でダンジョンに潜るようになっていて、彼らは自らを冒険者と呼称していた。 主人公、天城 翔琉《あまぎ かける》はよんどころない事情からお金を稼ぐためにダンジョンに潜ることを決意する。 ダンジョン探索を続ける中で翔琉は羽の生えた不思議な生き物に出会い、憑依されてしまう。 それはダンジョンの最深部九九九層からやってきたという天使で、憑依された事で翔は新たなジョブ《運び屋》を手に入れる。 ダンジョンで最強の力を持つ天使に憑依された翔琉は様々な事件に巻き込まれていくのだった。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...